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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
151-3.論理的な説得
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「お前の『直感』とやらがあればオレ達の難航している仕事も片すことの出来るきっかけが生まれるかもしれない。それ故にダメ元であったとしても一度うちへの勧誘をしたいという下心があった。これも事実だ」
「私という存在に利用価値を見出したのね」
「不快に思わせたならすまないな。だがそう捉えてくれて構わない」
好奇心が理由と貫かれるよりも納得の出来る理由だ。
使えるかもしれない駒として換算されていたと捉えれば気分は良くないが、好意のみで入れ込まれているなどという上っ面で出来た綺麗ごとを並べられるよりは随分とマシだ。
そう考えたクリスティーナは特に不服を述べることはしなかった。
「だが、オレの話を聞く価値はあるはずだ。そう思ったから嬢ちゃん達もここに来た。そうだろ?」
『危険な魔導具』とやらに関しても、オリオール邸で起きていることに関してもクリスティーナ達は詳細を知らない。
情報がないことには此度の件の解決に動くべきかどうか判断することすらできない。
「何も無理矢理うちへ引き込もうって訳じゃあない。話を聞いた後の判断は嬢ちゃん達自身ですればいいし、それに異論を唱えることもオレはしない。……だからまずは嬢ちゃん達と話す機会をくれないか?」
ディオンは意外にも、一切気を遣わない身嗜みや、やや荒っぽい口調には似つかわしくない誠実さを以てクリスティーナ達の説得を試みていた。
そして何より、彼の話は自己の利益を優先しているというよりも公平な話し合いを求めている様に感じられる。
「選択は何も今すぐに下さなければならないわけではないはずだ。先にこちらの話を聞いてからでも悪くはないだろう」
彼の主張は尤もだった。クリスティーナ達は元より詳細を聞くつもりでやって来たのだ。
シャルロットを救う為に動くのか、自身に降り掛かる危機の可能性や出来ることの少なさを鑑みて身を引くのか、その選択をするにもディオンからの話を聞くべきであるし、もし行動を起こすべきという結論に至った際には彼と協力関係を結ぶことで得られる利益もあるかもしれない。
全てはディオンの話を聞いてからでなければ決めることの出来ない話だ。
それはリオやエリアスもわかっているのだろう。警戒の色を滲ませながらも彼らは口を挟むことはしなかった。
「構わないわ。貴方の言う通り、私達は元より貴方の話を聞きに来たのだから」
クリスティーナはディオンを真っ直ぐに見つめ返すと頷いた。
「まずは貴方の話を聞かせて頂戴、ディオン・ベルナール」
「私という存在に利用価値を見出したのね」
「不快に思わせたならすまないな。だがそう捉えてくれて構わない」
好奇心が理由と貫かれるよりも納得の出来る理由だ。
使えるかもしれない駒として換算されていたと捉えれば気分は良くないが、好意のみで入れ込まれているなどという上っ面で出来た綺麗ごとを並べられるよりは随分とマシだ。
そう考えたクリスティーナは特に不服を述べることはしなかった。
「だが、オレの話を聞く価値はあるはずだ。そう思ったから嬢ちゃん達もここに来た。そうだろ?」
『危険な魔導具』とやらに関しても、オリオール邸で起きていることに関してもクリスティーナ達は詳細を知らない。
情報がないことには此度の件の解決に動くべきかどうか判断することすらできない。
「何も無理矢理うちへ引き込もうって訳じゃあない。話を聞いた後の判断は嬢ちゃん達自身ですればいいし、それに異論を唱えることもオレはしない。……だからまずは嬢ちゃん達と話す機会をくれないか?」
ディオンは意外にも、一切気を遣わない身嗜みや、やや荒っぽい口調には似つかわしくない誠実さを以てクリスティーナ達の説得を試みていた。
そして何より、彼の話は自己の利益を優先しているというよりも公平な話し合いを求めている様に感じられる。
「選択は何も今すぐに下さなければならないわけではないはずだ。先にこちらの話を聞いてからでも悪くはないだろう」
彼の主張は尤もだった。クリスティーナ達は元より詳細を聞くつもりでやって来たのだ。
シャルロットを救う為に動くのか、自身に降り掛かる危機の可能性や出来ることの少なさを鑑みて身を引くのか、その選択をするにもディオンからの話を聞くべきであるし、もし行動を起こすべきという結論に至った際には彼と協力関係を結ぶことで得られる利益もあるかもしれない。
全てはディオンの話を聞いてからでなければ決めることの出来ない話だ。
それはリオやエリアスもわかっているのだろう。警戒の色を滲ませながらも彼らは口を挟むことはしなかった。
「構わないわ。貴方の言う通り、私達は元より貴方の話を聞きに来たのだから」
クリスティーナはディオンを真っ直ぐに見つめ返すと頷いた。
「まずは貴方の話を聞かせて頂戴、ディオン・ベルナール」
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