418 / 579
第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
142-1.内通者
しおりを挟む
突如ジルベールの口から零された聞き覚えのある名。それにクリスティーナは眉根を寄せた。
「誤解なきよう先にお伝えさせていただきたいのですが、ディオン様はお三方と無理矢理接触を図ろうと試みている訳ではありません。あの方と繋がりのある私が皆さんとこうして顔を合わせることになったのも偶然に過ぎません」
「……それはどうかしら。私達がここへ来たのはそのディオンという男の元に属する者からの紹介だったわ」
あの胡散臭い男の関係者となれば容易に信用すべきではない。
そう判断したクリスティーナはジルベールの言葉に疑いを掛けるが、本人はそれに対し首を横に振った。
「オリヴィエ様のことを仰っているのですね。彼とは親しいわけではありませんから、これは私の憶測になってしまいますが……あの方はシャルロット様のことを大切に思ってくださっています。お三方をシャルロット様へご紹介したことに何か裏があったとは考え辛いかと」
「……お嬢様、この点に関してはジルベール様のお言葉を信じても良いのかもしれません」
使用人の前で堂々とオリヴィエの不法侵入について触れるシャルロット。そこからこの館の使用人間でもオリヴィエの勝手な出入りは黙認されているものであるとクリスティーナは推測していた。
そして現に、ジルベールはオリヴィエの名を出した。それは彼の存在を認知しているからに他ならない。
であるならば、オリヴィエやジルベールが結託することも難しくはないのではと思っての疑りであったのだが、それはリオによって否定された。
彼はクリスティーナの耳元で囁く。
「第一にオリヴィエ様は嘘が吐けない性格ですから、何か企みがあったのであれば何かしらの態度に出る事でしょう。第二に、彼と俺達はそれなりの接点があることから、敢えて第三者を使うなどという回りくどい手法を取るだけのメリットがありません」
「……本人が直接動いて説得なり工作なりすればよいという事ね」
「はい。……それに、彼は俺達をシャルロット様の元へ案内したものの、その後のことについては一切指示を出されませんでした。それどころか変に付き合い続ける必要はないと明言されていましたから……」
シャルロットと接触する機会を設けたのは間違いなくオリヴィエであったが、確かに彼が何かを促す様な発言はなかった。
今の様にジルベールを通じてディオンの名を聞かされるような展開を予測して動いていたと理由付けるにはあまりにも彼の能動的な行いが少なすぎると言えるだろう。
「誤解なきよう先にお伝えさせていただきたいのですが、ディオン様はお三方と無理矢理接触を図ろうと試みている訳ではありません。あの方と繋がりのある私が皆さんとこうして顔を合わせることになったのも偶然に過ぎません」
「……それはどうかしら。私達がここへ来たのはそのディオンという男の元に属する者からの紹介だったわ」
あの胡散臭い男の関係者となれば容易に信用すべきではない。
そう判断したクリスティーナはジルベールの言葉に疑いを掛けるが、本人はそれに対し首を横に振った。
「オリヴィエ様のことを仰っているのですね。彼とは親しいわけではありませんから、これは私の憶測になってしまいますが……あの方はシャルロット様のことを大切に思ってくださっています。お三方をシャルロット様へご紹介したことに何か裏があったとは考え辛いかと」
「……お嬢様、この点に関してはジルベール様のお言葉を信じても良いのかもしれません」
使用人の前で堂々とオリヴィエの不法侵入について触れるシャルロット。そこからこの館の使用人間でもオリヴィエの勝手な出入りは黙認されているものであるとクリスティーナは推測していた。
そして現に、ジルベールはオリヴィエの名を出した。それは彼の存在を認知しているからに他ならない。
であるならば、オリヴィエやジルベールが結託することも難しくはないのではと思っての疑りであったのだが、それはリオによって否定された。
彼はクリスティーナの耳元で囁く。
「第一にオリヴィエ様は嘘が吐けない性格ですから、何か企みがあったのであれば何かしらの態度に出る事でしょう。第二に、彼と俺達はそれなりの接点があることから、敢えて第三者を使うなどという回りくどい手法を取るだけのメリットがありません」
「……本人が直接動いて説得なり工作なりすればよいという事ね」
「はい。……それに、彼は俺達をシャルロット様の元へ案内したものの、その後のことについては一切指示を出されませんでした。それどころか変に付き合い続ける必要はないと明言されていましたから……」
シャルロットと接触する機会を設けたのは間違いなくオリヴィエであったが、確かに彼が何かを促す様な発言はなかった。
今の様にジルベールを通じてディオンの名を聞かされるような展開を予測して動いていたと理由付けるにはあまりにも彼の能動的な行いが少なすぎると言えるだろう。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
【完結】家庭菜園士の強野菜無双!俺の野菜は激強い、魔王も勇者もチート野菜で一捻り!
鏑木 うりこ
ファンタジー
幸田と向田はトラックにドン☆されて異世界転生した。
勇者チートハーレムモノのラノベが好きな幸田は勇者に、まったりスローライフモノのラノベが好きな向田には……「家庭菜園士」が女神様より授けられた!
「家庭菜園だけかよーー!」
元向田、現タトは叫ぶがまあ念願のスローライフは叶いそうである?
大変!第2回次世代ファンタジーカップのタグをつけたはずなのに、ついてないぞ……。あまりに衝撃すぎて倒れた……(;´Д`)もうだめだー
【完結】討伐対象の魔王が可愛い幼子だったので魔界に残ってお世話します!〜力を搾取され続けた聖女は幼子魔王を溺愛し、やがて溺愛される〜
水都 ミナト
ファンタジー
不本意ながら聖女を務めていたアリエッタは、国王の勅命を受けて勇者と共に魔界に乗り込んだ。
そして対面した討伐対象である魔王は――とても可愛い幼子だった。
え?あの可愛い少年を倒せとおっしゃる?
無理無理!私には無理!
人間界では常人離れした力を利用され、搾取され続けてきたアリエッタは、魔王討伐の暁には国を出ることを考えていた。
え?じゃあ魔界に残っても一緒じゃない?
可愛い魔王様のお世話をして毎日幸せな日々を送るなんて最高では?
というわけで、あっさり勇者一行を人間界に転移魔法で送り返し、厳重な結界を張ったアリエッタは、なんやかんやあって晴れて魔王ルイスの教育係を拝命する。
魔界を統べる王たるべく日々勉学に励み、幼いながらに威厳を保とうと頑張るルイスを愛でに愛でつつ、彼の家臣らと共にのんびり平和な魔界ライフを満喫するアリエッタ。
だがしかし、魔王は魔界の王。
人間とは比べ物にならない早さで成長し、成人を迎えるルイス。
徐々に少年から男の人へと成長するルイスに戸惑い、翻弄されつつも側で支え続けるアリエッタ。
確かな信頼関係を築きながらも変わりゆく二人の関係。
あれ、いつの間にか溺愛していたルイスから、溺愛され始めている…?
ちょっと待って!この溺愛は想定外なのですが…!
ぐんぐん成長するルイスに翻弄されたり、諦めの悪い勇者がアリエッタを取り戻すべく魔界に乗り込もうとしてきたり、アリエッタのウキウキ魔界生活は前途多難!
◇ほのぼの魔界生活となっております。
◇創造神:作者によるファンタジー作品です。
◇アリエッタの頭の中は割とうるさいです。一緒に騒いでください。
◇小説家になろう様でも公開中
◇第16回ファンタジー小説大賞で32位でした!ありがとうございました!
25歳のオタク女子は、異世界でスローライフを送りたい
こばやん2号
ファンタジー
とある会社に勤める25歳のOL重御寺姫(じゅうおんじひめ)は、漫画やアニメが大好きなオタク女子である。
社員旅行の最中謎の光を発見した姫は、気付けば異世界に来てしまっていた。
頭の中で妄想していたことが現実に起こってしまったことに最初は戸惑う姫だったが、自身の知識と持ち前の性格でなんとか異世界を生きていこうと奮闘する。
オタク女子による異世界生活が今ここに始まる。
※この小説は【アルファポリス】及び【小説家になろう】の同時配信で投稿しています。
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
乙女ゲームに悪役転生な無自覚チートの異世界譚
水魔沙希
ファンタジー
モブに徹していた少年がなくなり、転生したら乙女ゲームの悪役になっていた。しかも、王族に生まれながらも、1歳の頃に誘拐され、王族に恨みを持つ少年に転生してしまったのだ!
そんな運命なんてクソくらえだ!前世ではモブに徹していたんだから、この悪役かなりの高いスペックを持っているから、それを活用して、なんとか生き残って、前世ではできなかった事をやってやるんだ!!
最近よくある乙女ゲームの悪役転生ものの話です。
だんだんチート(無自覚)になっていく主人公の冒険譚です(予定)です。
チートの成長率ってよく分からないです。
初めての投稿で、駄文ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
会話文が多いので、本当に状況がうまく伝えられずにすみません!!
あ、ちなみにこんな乙女ゲームないよ!!という感想はご遠慮ください。
あと、戦いの部分は得意ではございません。ご了承ください。
悪役令嬢ですが最強ですよ??
鈴の音
ファンタジー
乙女ゲームでありながら戦闘ゲームでもあるこの世界の悪役令嬢である私、前世の記憶があります。
で??ヒロインを怖がるかって?ありえないw
ここはゲームじゃないですからね!しかも、私ゲームと違って何故か魂がすごく特別らしく、全属性持ちの神と精霊の愛し子なのですよ。
だからなにかあっても死なないから怖くないのでしてよw
主人公最強系の話です。
苦手な方はバックで!
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる