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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
141-2.使用人部屋での対話
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暫くは玄関へ向かって真っ直ぐと進んでいた四人であったが、その途中、ふとジルベールが足を止めて振り返る。
「先程もお話させて頂いておりましたが、この後少々お時間を頂くことは可能でしょうか」
「ええ」
エリアスはジルベールの言葉に何の話かと目を丸くするが、主人がすぐに頷きを返したことを確認すると詳細を問うこともせず口を閉ざす。
クリスティーナとジルベールの間で既に交わされていた約束であることを悟り、付き従う者が敢えて詳細な説明を求めるような物でもないと判断したのだろう。こういう時の彼の振る舞い方は時間の浪費を嫌うクリスティーナにとってもありがたいものであった。
「ありがとうございます。では……そうですね。私が自由に使うことの出来る部屋は限られていますので、私の居室へ案内させていただいてもよろしいでしょうか。本来、お客様をご案内するような場所ではないのですが……」
「構わないわ」
ジルベールは再度礼を述べ、玄関とは異なる道順で三人を案内する。
そしてとある質素な戸の前で足を止めるとクリスティーナ達を中へ招き入れる。
シャルロットの寝室に比べて狭い空間。しかし必要な物が綺麗に整頓されているお陰で狭苦しさを覚えることはない。
「椅子が人数分なく、ご不便をおかけしてしまいますが……」
「必要ないわ」
貴族の居室であればソファやテーブルなどが並んでいてもおかしくはないが、ジルベールは使用人だ。
一人で過ごすことだけを考えられた部屋に四人分もの椅子がある訳もなく、椅子と呼べる物は質素な机に備え付けられた一つのみである。
ジルベールはその椅子に触れながら椅子が必要であるかを問う様にクリスティーナを見やるが、彼女は首を横に振って断った。
それには頷きが返され、四人は互いの顔色が窺えるように向かい合う形で立ったまま話をすることになる。
「……あ。必要があれば後々クリス様やリオに説明してもらうので、一先ずオレのことは気にせず話してください」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます」
真っ先に切り出したのはエリアスだった。
彼は時間の短縮と二度手間となる説明を避けるべく事前に断りを入れることで円滑な会話が成り立つ環境を整える。
それに頭を下げ、一つ息を吐いてからジルベールは早速本題に入った。
「クリス様とリオ様は恐らく、私が何故お二人の行動の意図を執拗にお伺いするのかと疑問に思われていることかと思います。……それに加え、お二人が入ろうとしていた部屋には特別な何かがあると仄めかせるような発言、お二人の動機に対する推測などを述べたことで警戒させてしまったかもしれません」
沈黙を貫くクリスティーナとリオを一瞥しつつ、彼は語り続ける。
「ですから誤解なきよう、先に私についてお話させていただく機会を頂きたかったのです。私はお二人のことを旦那様へ告げ口したり……敵対したい訳ではありません。そのことを知って頂きたい」
彼は深く濃い青色の瞳で真っ直ぐと三人を映した。
決して視線を逸らすことがない様にという意志の見える態度は自身の話すことを信じて貰うべく誠意を精一杯に見せている様であった。
「私が館を歩き回るクリス様方の動機に思い至ったのは……ディオン様からお三方のお話を伺っていたからなのです」
「先程もお話させて頂いておりましたが、この後少々お時間を頂くことは可能でしょうか」
「ええ」
エリアスはジルベールの言葉に何の話かと目を丸くするが、主人がすぐに頷きを返したことを確認すると詳細を問うこともせず口を閉ざす。
クリスティーナとジルベールの間で既に交わされていた約束であることを悟り、付き従う者が敢えて詳細な説明を求めるような物でもないと判断したのだろう。こういう時の彼の振る舞い方は時間の浪費を嫌うクリスティーナにとってもありがたいものであった。
「ありがとうございます。では……そうですね。私が自由に使うことの出来る部屋は限られていますので、私の居室へ案内させていただいてもよろしいでしょうか。本来、お客様をご案内するような場所ではないのですが……」
「構わないわ」
ジルベールは再度礼を述べ、玄関とは異なる道順で三人を案内する。
そしてとある質素な戸の前で足を止めるとクリスティーナ達を中へ招き入れる。
シャルロットの寝室に比べて狭い空間。しかし必要な物が綺麗に整頓されているお陰で狭苦しさを覚えることはない。
「椅子が人数分なく、ご不便をおかけしてしまいますが……」
「必要ないわ」
貴族の居室であればソファやテーブルなどが並んでいてもおかしくはないが、ジルベールは使用人だ。
一人で過ごすことだけを考えられた部屋に四人分もの椅子がある訳もなく、椅子と呼べる物は質素な机に備え付けられた一つのみである。
ジルベールはその椅子に触れながら椅子が必要であるかを問う様にクリスティーナを見やるが、彼女は首を横に振って断った。
それには頷きが返され、四人は互いの顔色が窺えるように向かい合う形で立ったまま話をすることになる。
「……あ。必要があれば後々クリス様やリオに説明してもらうので、一先ずオレのことは気にせず話してください」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えさせていただきます」
真っ先に切り出したのはエリアスだった。
彼は時間の短縮と二度手間となる説明を避けるべく事前に断りを入れることで円滑な会話が成り立つ環境を整える。
それに頭を下げ、一つ息を吐いてからジルベールは早速本題に入った。
「クリス様とリオ様は恐らく、私が何故お二人の行動の意図を執拗にお伺いするのかと疑問に思われていることかと思います。……それに加え、お二人が入ろうとしていた部屋には特別な何かがあると仄めかせるような発言、お二人の動機に対する推測などを述べたことで警戒させてしまったかもしれません」
沈黙を貫くクリスティーナとリオを一瞥しつつ、彼は語り続ける。
「ですから誤解なきよう、先に私についてお話させていただく機会を頂きたかったのです。私はお二人のことを旦那様へ告げ口したり……敵対したい訳ではありません。そのことを知って頂きたい」
彼は深く濃い青色の瞳で真っ直ぐと三人を映した。
決して視線を逸らすことがない様にという意志の見える態度は自身の話すことを信じて貰うべく誠意を精一杯に見せている様であった。
「私が館を歩き回るクリス様方の動機に思い至ったのは……ディオン様からお三方のお話を伺っていたからなのです」
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