392 / 579
第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
129-2.消えない闇
しおりを挟む
靄は僅かに黒みを帯びており、長い糸の様にどこかへ繋がるように漂っている。だがそれが向かう先は建物の方向であることしかわからず、明確な位置までは把握が出来ない。
ふとオリヴィエとの会話がクリスティーナの頭の中で呼び起こされる。
シャルロットが病持ちなのかと聞いた時の煮え切らない返答。
(……もしかして)
オリヴィエの発言、そして彼女に纏わりつく闇。そこから導かれる答え。
クリスティーナは眉を寄せる。
(彼女の不調の原因が単なる病ではなくこれにあるとするなら……)
クリスティーナは黒い靄を見つめる。
ゆらゆらと漂う闇。それ以上に大きなものをクリスティーナは打ち消したことがある。
医者で解決出来ない問題であったとしても、この闇が見える自分であれば何とか出来るのではないか。
そんな憶測がクリスティーナの中に芽生え始めていた。
クリスティーナは自身の周辺を軽く見回す。
エリアスはシャルロットへの応急処置をクリスティーナへ任せ、安心させる役割に回っている。
もうすぐ使用人が来ることを伝え、元気付けるような声掛けを続ける彼の言葉はクリスティーナにも届いていた。
今ならばシャルロットを除けば、クリスティーナの正体を知る者しか残されてはいない。
自身の力で解決できるものであるのかを試すには今が絶好の機会だろう。
そう結論付ける一方で、クリスティーナには躊躇う気持ちも存在した。
ここで聖女としての力を試せば自身の正体がバレてしまう可能性がある。もしそうなった場合、どう転ぶかはクリスティーナ自身にも推測は出来なかった。
「……ふたり、とも」
その時、掠れた声でシャルロットが言葉を発した。
口元を赤く濡らしながら、彼女は優しく笑いかける。
「たまに、あるの。……だから私はだいじょ、ぶ、だから」
「話さなくていい。オレ達の事は気にしなくていいから」
血を吐きながらもクリスティーナ達を気遣うシャルロットをエリアスが宥める。
だが制止の声を聞いても尚、シャルロットは声を絞り出した。
「ごめんね、しんぱい……かけて」
彼女の瞳がクリスティーナを見る。
優しくて、温かくもあり、不安定に揺れる瞳。
それを見たクリスティーナは歪みそうになる表情に力を籠めた。
ふとオリヴィエとの会話がクリスティーナの頭の中で呼び起こされる。
シャルロットが病持ちなのかと聞いた時の煮え切らない返答。
(……もしかして)
オリヴィエの発言、そして彼女に纏わりつく闇。そこから導かれる答え。
クリスティーナは眉を寄せる。
(彼女の不調の原因が単なる病ではなくこれにあるとするなら……)
クリスティーナは黒い靄を見つめる。
ゆらゆらと漂う闇。それ以上に大きなものをクリスティーナは打ち消したことがある。
医者で解決出来ない問題であったとしても、この闇が見える自分であれば何とか出来るのではないか。
そんな憶測がクリスティーナの中に芽生え始めていた。
クリスティーナは自身の周辺を軽く見回す。
エリアスはシャルロットへの応急処置をクリスティーナへ任せ、安心させる役割に回っている。
もうすぐ使用人が来ることを伝え、元気付けるような声掛けを続ける彼の言葉はクリスティーナにも届いていた。
今ならばシャルロットを除けば、クリスティーナの正体を知る者しか残されてはいない。
自身の力で解決できるものであるのかを試すには今が絶好の機会だろう。
そう結論付ける一方で、クリスティーナには躊躇う気持ちも存在した。
ここで聖女としての力を試せば自身の正体がバレてしまう可能性がある。もしそうなった場合、どう転ぶかはクリスティーナ自身にも推測は出来なかった。
「……ふたり、とも」
その時、掠れた声でシャルロットが言葉を発した。
口元を赤く濡らしながら、彼女は優しく笑いかける。
「たまに、あるの。……だから私はだいじょ、ぶ、だから」
「話さなくていい。オレ達の事は気にしなくていいから」
血を吐きながらもクリスティーナ達を気遣うシャルロットをエリアスが宥める。
だが制止の声を聞いても尚、シャルロットは声を絞り出した。
「ごめんね、しんぱい……かけて」
彼女の瞳がクリスティーナを見る。
優しくて、温かくもあり、不安定に揺れる瞳。
それを見たクリスティーナは歪みそうになる表情に力を籠めた。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
めんどくさがり屋の異世界転生〜自由に生きる〜
ゆずゆ
ファンタジー
※ 話の前半を間違えて消してしまいました
誠に申し訳ございません。
—————————————————
前世100歳にして幸せに生涯を遂げた女性がいた。
名前は山梨 花。
他人に話したことはなかったが、もし亡くなったら剣と魔法の世界に転生したいなと夢見ていた。もちろん前世の記憶持ちのままで。
動くがめんどくさい時は、魔法で移動したいなとか、
転移魔法とか使えたらもっと寝れるのに、
休みの前の日に時間止めたいなと考えていた。
それは物心ついた時から生涯を終えるまで。
このお話はめんどくさがり屋で夢見がちな女性が夢の異世界転生をして生きていくお話。
—————————————————
最後まで読んでくださりありがとうございました!!
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~
ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉
攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。
私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。
美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~!
【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避
【2章】王国発展・vs.ヒロイン
【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。
※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。
※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差)
イラストブログ https://tenseioujo.blogspot.com/
Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/
※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。
司書ですが、何か?
みつまめ つぼみ
ファンタジー
16歳の小さな司書ヴィルマが、王侯貴族が通う王立魔導学院付属図書館で仲間と一緒に仕事を頑張るお話です。
ほのぼの日常系と思わせつつ、ちょこちょこドラマティックなことも起こります。ロマンスはふんわり。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
聖女の姉ですが、宰相閣下は無能な妹より私がお好きなようですよ?
渡邊 香梨
ファンタジー
コミックシーモア電子コミック大賞2025ノミネート! 11/30まで投票宜しくお願いします……!m(_ _)m
――小説3巻&コミックス1巻大好評発売中!――【旧題:聖女の姉ですが、国外逃亡します!~妹のお守りをするくらいなら、腹黒宰相サマと駆け落ちします!~】
12.20/05.02 ファンタジー小説ランキング1位有難うございます!
双子の妹ばかりを優先させる家族から離れて大学へ進学、待望の一人暮らしを始めた女子大生・十河怜菜(そがわ れいな)は、ある日突然、異世界へと召喚された。
召喚させたのは、双子の妹である舞菜(まな)で、召喚された先は、乙女ゲーム「蘇芳戦記」の中の世界。
国同士を繋ぐ「転移扉」を守護する「聖女」として、舞菜は召喚されたものの、守護魔力はともかく、聖女として国内貴族や各国上層部と、社交が出来るようなスキルも知識もなく、また、それを会得するための努力をするつもりもなかったために、日本にいた頃の様に、自分の代理(スペア)として、怜菜を同じ世界へと召喚させたのだ。
妹のお守りは、もうごめん――。
全てにおいて妹優先だった生活から、ようやく抜け出せたのに、再び妹のお守りなどと、冗談じゃない。
「宰相閣下、私と駆け落ちしましょう」
内心で激怒していた怜菜は、日本同様に、ここでも、妹の軛(くびき)から逃れるための算段を立て始めた――。
※ R15(キスよりちょっとだけ先)が入る章には☆を入れました。
【近況ボードに書籍化についてや、参考資料等掲載中です。宜しければそちらもご参照下さいませ】
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる