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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
128-1.たった一人へ向けられる想い
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令嬢達が花を咲かせる恋愛話の殆どは相手の秘密を知った上で人間関係に於いて自分が優位にいるという優越感に浸りたいから、もしくは恋愛絡みの自慢か相談の機会を窺う為が理由であるとクリスティーナは推測していた。
知り合って間もないことを考えれば互いに人間関係の優劣を気にし合うような関係ではないし、相手の素直さを鑑みれば下心から来る自慢よりも純粋な相談がシャルロットの話題振りの本来の目的なのではないかとクリスティーナは結論付けた。
瞬きを繰り返すシャルロットを見ながらクリスティーナは更に続ける。
「学院では異性も多いでしょうし、それこそそう言った機会があったっておかしくはないでしょう」
「あー、確かに。誰かが突き合ったり別れたりって話は結構耳にしたかも」
シャルロットはクッキーを口へ運びながら微笑んだ。
自身の学院での生活を思い出してか、庭の景色へと視線を泳がせた彼女は少しの間の後に肩を竦めて呆れたように苦笑する。
「とは言っても私の周りの異性は生憎そういうのとは縁のない人達ばっかだったからなぁ。恋愛については疎いような人ばっかりだったよ」
「そう」
シャルロットが知人の名を列挙する度に細い指が折られていく。
学院での生活を思い出す彼女はどこか幸せそうにはにかんでいた。
「生徒会に入ってたんだけどね。ノアはすごくモテるけど魔法にしか目がないせいで本人からは色恋の気配なんて全くしなかったし、レミも頭が固いから融通が利かなくて勉強の妨げになることは避けてた。ジャンは悪ノリが多くて幼稚だし、オリヴィエはあまりにも鈍感だから……」
「……彼も生徒会に?」
「そう。意外でしょ」
「ええ、少し……」
咄嗟に言葉を濁すが、オリヴィエが生徒会に所属していたという事実はクリスティーナの中で大きな驚きを齎すべき話で合った。
オリヴィエの性格からして面倒な仕事は避けそうであるし、言動のきつさから敵が多そうな彼が学院の代表を務めるとなると批判は殺到しそうなものだ。
そんなクリスティーナの考えを悟ったシャルロットは品よく笑った。
「まあ、ノアが半ば無理矢理引っ張ってきたんだけど。でもね、オリヴィエってすごく字が綺麗なんだよ」
「初耳だわ」
「意外でしょ。だから嫌々ながら引き受けてくれた書記の仕事でも、彼が手掛けた書類はすごく読みやすかったんだ」
シャルロットはカップの取っ手に指を引っ掛けると自分の唇へゆっくり触れさせる。
静かに紅茶の味を楽しんだ後、小さな音を立ててカップを置くと彼女はテーブルに頬杖を突きながら長閑な庭の風景へとその瞳を向けた。
知り合って間もないことを考えれば互いに人間関係の優劣を気にし合うような関係ではないし、相手の素直さを鑑みれば下心から来る自慢よりも純粋な相談がシャルロットの話題振りの本来の目的なのではないかとクリスティーナは結論付けた。
瞬きを繰り返すシャルロットを見ながらクリスティーナは更に続ける。
「学院では異性も多いでしょうし、それこそそう言った機会があったっておかしくはないでしょう」
「あー、確かに。誰かが突き合ったり別れたりって話は結構耳にしたかも」
シャルロットはクッキーを口へ運びながら微笑んだ。
自身の学院での生活を思い出してか、庭の景色へと視線を泳がせた彼女は少しの間の後に肩を竦めて呆れたように苦笑する。
「とは言っても私の周りの異性は生憎そういうのとは縁のない人達ばっかだったからなぁ。恋愛については疎いような人ばっかりだったよ」
「そう」
シャルロットが知人の名を列挙する度に細い指が折られていく。
学院での生活を思い出す彼女はどこか幸せそうにはにかんでいた。
「生徒会に入ってたんだけどね。ノアはすごくモテるけど魔法にしか目がないせいで本人からは色恋の気配なんて全くしなかったし、レミも頭が固いから融通が利かなくて勉強の妨げになることは避けてた。ジャンは悪ノリが多くて幼稚だし、オリヴィエはあまりにも鈍感だから……」
「……彼も生徒会に?」
「そう。意外でしょ」
「ええ、少し……」
咄嗟に言葉を濁すが、オリヴィエが生徒会に所属していたという事実はクリスティーナの中で大きな驚きを齎すべき話で合った。
オリヴィエの性格からして面倒な仕事は避けそうであるし、言動のきつさから敵が多そうな彼が学院の代表を務めるとなると批判は殺到しそうなものだ。
そんなクリスティーナの考えを悟ったシャルロットは品よく笑った。
「まあ、ノアが半ば無理矢理引っ張ってきたんだけど。でもね、オリヴィエってすごく字が綺麗なんだよ」
「初耳だわ」
「意外でしょ。だから嫌々ながら引き受けてくれた書記の仕事でも、彼が手掛けた書類はすごく読みやすかったんだ」
シャルロットはカップの取っ手に指を引っ掛けると自分の唇へゆっくり触れさせる。
静かに紅茶の味を楽しんだ後、小さな音を立ててカップを置くと彼女はテーブルに頬杖を突きながら長閑な庭の風景へとその瞳を向けた。
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