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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
119-1.重んじるに値する言葉
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本屋へ立ち寄ったオリヴィエは所狭しと並ぶ本へと視線を移す。
ふと目に留まった本を手に取り、適当にページを捲ってはすぐに定位置へと戻す。
そんなことを繰り返している最中、オリヴィエは深々とため息を吐いた。
(本を買って来いって言ったって、あいつの好みもろくに知らないのに……)
彼の脳裏を過るのは悪戯っぽく笑うシャルロットの姿。
それを思い浮かべながら新しい本に手を伸ばし、表紙を捲って目を通し始めた。
そもそも、オリヴィエは勉学や読書が得意ではない。
細かな文字の羅列を眺めたり、小難しい言葉遣いを目の当たりにするとそこで集中力を削がれ、本題に入る前には文章の内容が頭に入らなくなってしまうのだ。
故に本選びという行為が自身には不向きな役割であることをオリヴィエは自覚している。
(適当に買えば済む話だが、ハズレばかり引けばあいつの思惑通り笑い者にされるだけだろうしな……)
予想通りだと揶揄うシャルロットの姿を想像したオリヴィエは再度息を吐く。
せめて無難なものをと悪足搔きのつもりで手当たり次第に本を漁ってみるものの、細かな文字に目が滑り、内容が頭に残らない。手元の本も同様である。
オリヴィエは内容が理解できないままに本を閉じ、棚へ戻そうと視線を上げる。
そこで視界の端に揺れる銀髪に気付き、動きを止めた。
「……今度こそ偶然とは言わせないが」
怪訝そうに眉を顰め、本棚の影から自身を見つめていた人物へ声を掛ける。
探し物の邪魔をしない様にとそこで息を潜めていたのはクリスティーナだ。
声を掛けられた彼女は大人しくオリヴィエとの距離を詰める。すると更に後ろに控えていたらしいリオとエリアスまでもが姿を見せた。
ぞろぞろと姿を見せる面々に、眼鏡の下から目頭を押さえつつオリヴィエは顔を顰める。
「何の用だ」
「魔導具店を回ろうと思っていた時に貴方の姿を見かけたの。昨晩のことについて、貴方と話す機会はあまりなかったと思って」
クリスティーナがオリヴィエの後を追ってやってきたのは彼が怪盗として暗躍していることについて、他の者の目が届かない場で話をしたいと思ったからだ。
四人がいる本屋はそこまで大きな規模の店ではないようで、今は他に客人も見られない。
更に店員も奥のカウンターに控える店主一人。その店主も、暇を潰すように本を広げて読書に勤しんでいた。
入口付近の本棚を見ているオリヴィエの存在自体には気付いているだろうが、そこでの会話までは聞き取れないだろう。
そう判断したからこそ、クリスティーナは彼との接触を図ったのだった。
ふと目に留まった本を手に取り、適当にページを捲ってはすぐに定位置へと戻す。
そんなことを繰り返している最中、オリヴィエは深々とため息を吐いた。
(本を買って来いって言ったって、あいつの好みもろくに知らないのに……)
彼の脳裏を過るのは悪戯っぽく笑うシャルロットの姿。
それを思い浮かべながら新しい本に手を伸ばし、表紙を捲って目を通し始めた。
そもそも、オリヴィエは勉学や読書が得意ではない。
細かな文字の羅列を眺めたり、小難しい言葉遣いを目の当たりにするとそこで集中力を削がれ、本題に入る前には文章の内容が頭に入らなくなってしまうのだ。
故に本選びという行為が自身には不向きな役割であることをオリヴィエは自覚している。
(適当に買えば済む話だが、ハズレばかり引けばあいつの思惑通り笑い者にされるだけだろうしな……)
予想通りだと揶揄うシャルロットの姿を想像したオリヴィエは再度息を吐く。
せめて無難なものをと悪足搔きのつもりで手当たり次第に本を漁ってみるものの、細かな文字に目が滑り、内容が頭に残らない。手元の本も同様である。
オリヴィエは内容が理解できないままに本を閉じ、棚へ戻そうと視線を上げる。
そこで視界の端に揺れる銀髪に気付き、動きを止めた。
「……今度こそ偶然とは言わせないが」
怪訝そうに眉を顰め、本棚の影から自身を見つめていた人物へ声を掛ける。
探し物の邪魔をしない様にとそこで息を潜めていたのはクリスティーナだ。
声を掛けられた彼女は大人しくオリヴィエとの距離を詰める。すると更に後ろに控えていたらしいリオとエリアスまでもが姿を見せた。
ぞろぞろと姿を見せる面々に、眼鏡の下から目頭を押さえつつオリヴィエは顔を顰める。
「何の用だ」
「魔導具店を回ろうと思っていた時に貴方の姿を見かけたの。昨晩のことについて、貴方と話す機会はあまりなかったと思って」
クリスティーナがオリヴィエの後を追ってやってきたのは彼が怪盗として暗躍していることについて、他の者の目が届かない場で話をしたいと思ったからだ。
四人がいる本屋はそこまで大きな規模の店ではないようで、今は他に客人も見られない。
更に店員も奥のカウンターに控える店主一人。その店主も、暇を潰すように本を広げて読書に勤しんでいた。
入口付近の本棚を見ているオリヴィエの存在自体には気付いているだろうが、そこでの会話までは聞き取れないだろう。
そう判断したからこそ、クリスティーナは彼との接触を図ったのだった。
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