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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
110-2.弱虫
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***
魔導具を見て回っていたクリスティーナ達はその最中に日が暮れ始めていることに気付き、次の店でこの日の探索に区切りを付けようと話し合う。
「薄々わかっていた事ではありますが、この調子だとあと一日もすれば店も回り切ってしまいそうですね」
「成果はなさそうだけどなぁ」
一つの魔導具店を三人で手分けして確認するだけでも十分な時間短縮になる上、店長の手が空いている場合は見て回るまでもなく目的の品の入荷を確認するだけで事が済んでしまう。
それ故に、数々の魔導具店が並ぶニュイを歩き回るのにも時間はそこまで要さない。元よりクリスティーナが寄り道をする性格ではないこともあり、一行は一つの街を踏破してしまうのもあっという間のことのように感じ始めていた。
店内へ足を踏み入れながら周囲を見回すリオとエリアスが言葉を交える。
すると来客の気配を察してか店の奥から初老の男が顔を覗かせた。
「何かお探しですかな」
恐らくはこの店の主だろう。声掛けに応じる形でリオが口を開く。
「物の耐久性を向上させる類の道具を探しているのですが、こちらにはありそうですか」
「ほぉ。少々珍しい物をお探しだね。残念だけどうちにはないよ」
「そうですか。ありがとうございます」
探す手間が省けたとクリスティーナ達三人は顔を見合わせる。
他に用件もないからとその場を颯爽と去ろうとする三人。そこへ男が声を掛ける。
「もし急ぎで探しているなら、オークションも覗いてみると良いかもしれないね」
「オークションですか」
三人の頭を過るのはオリヴィエから譲り受けた招待状と、領主が開催しているというきな臭いオークションについて。
足を止めた一行の視線は男へと集中する。
「ああ。この街は規模に差こそあれど結構な頻度で、様々な物品が競りに出されてる。貴族なんかの高貴な立場の方でしか参加できないものもあるが、参加者の身分を問わないものも結構ある。運が良ければそこでの巡りあわせも期待できるかもな」
(オークションは彼から聞かされていたもの以外にも存在するのね)
どうやら男の話すオークションはクリスティーナ達が聞かされているものとはまた別のもののようだ。
オリヴィエの姿を思い返しながら、クリスティーナは静かに男の言葉に耳を傾けた。
「参加条件が比較的優しいもので、詳しい日時や会場などがわかるものはありますか?」
「民間で開催されるオークションの会場はその大半があるホールを選んでいる。様々な組織がそこを交代で借りて行っているらしい。ホール付近の掲示板にスケジュールや詳細もあるはずだから気になるのであれば一度確認しに行ってみるといい」
確認しに行っても良いかと問うようにクリスティーナがリオやエリアスを見やれば、双方が頷いてみせる。
それを確認してからクリスティーナは男へ向き直る。
「どうもありがとう」
「いいや、構わないよ」
構わない、と口にする男。しかしその瞳には何かを期待するような下心を感じさせる。
その正体を探るクリスティーナであったが、その答えは案外あっさりと導き出される。
店を離れようとする客へわざわざ提示された詳しい情報。一見何のメリットもないように思える言動の意図。
クリスティーナは自身の傍に置かれていた品を一つ手に取ると男に差し出した。
「これを頂いてもいいかしら」
空色の瞳が真っ直ぐと男を見据える。
男はクリスティーナが差し出した品物と、彼女の真っ直ぐな視線を自身の視界に収める。
「まいどあり、お嬢さん」
そして満足そうに笑みを深めたのであった。
魔導具を見て回っていたクリスティーナ達はその最中に日が暮れ始めていることに気付き、次の店でこの日の探索に区切りを付けようと話し合う。
「薄々わかっていた事ではありますが、この調子だとあと一日もすれば店も回り切ってしまいそうですね」
「成果はなさそうだけどなぁ」
一つの魔導具店を三人で手分けして確認するだけでも十分な時間短縮になる上、店長の手が空いている場合は見て回るまでもなく目的の品の入荷を確認するだけで事が済んでしまう。
それ故に、数々の魔導具店が並ぶニュイを歩き回るのにも時間はそこまで要さない。元よりクリスティーナが寄り道をする性格ではないこともあり、一行は一つの街を踏破してしまうのもあっという間のことのように感じ始めていた。
店内へ足を踏み入れながら周囲を見回すリオとエリアスが言葉を交える。
すると来客の気配を察してか店の奥から初老の男が顔を覗かせた。
「何かお探しですかな」
恐らくはこの店の主だろう。声掛けに応じる形でリオが口を開く。
「物の耐久性を向上させる類の道具を探しているのですが、こちらにはありそうですか」
「ほぉ。少々珍しい物をお探しだね。残念だけどうちにはないよ」
「そうですか。ありがとうございます」
探す手間が省けたとクリスティーナ達三人は顔を見合わせる。
他に用件もないからとその場を颯爽と去ろうとする三人。そこへ男が声を掛ける。
「もし急ぎで探しているなら、オークションも覗いてみると良いかもしれないね」
「オークションですか」
三人の頭を過るのはオリヴィエから譲り受けた招待状と、領主が開催しているというきな臭いオークションについて。
足を止めた一行の視線は男へと集中する。
「ああ。この街は規模に差こそあれど結構な頻度で、様々な物品が競りに出されてる。貴族なんかの高貴な立場の方でしか参加できないものもあるが、参加者の身分を問わないものも結構ある。運が良ければそこでの巡りあわせも期待できるかもな」
(オークションは彼から聞かされていたもの以外にも存在するのね)
どうやら男の話すオークションはクリスティーナ達が聞かされているものとはまた別のもののようだ。
オリヴィエの姿を思い返しながら、クリスティーナは静かに男の言葉に耳を傾けた。
「参加条件が比較的優しいもので、詳しい日時や会場などがわかるものはありますか?」
「民間で開催されるオークションの会場はその大半があるホールを選んでいる。様々な組織がそこを交代で借りて行っているらしい。ホール付近の掲示板にスケジュールや詳細もあるはずだから気になるのであれば一度確認しに行ってみるといい」
確認しに行っても良いかと問うようにクリスティーナがリオやエリアスを見やれば、双方が頷いてみせる。
それを確認してからクリスティーナは男へ向き直る。
「どうもありがとう」
「いいや、構わないよ」
構わない、と口にする男。しかしその瞳には何かを期待するような下心を感じさせる。
その正体を探るクリスティーナであったが、その答えは案外あっさりと導き出される。
店を離れようとする客へわざわざ提示された詳しい情報。一見何のメリットもないように思える言動の意図。
クリスティーナは自身の傍に置かれていた品を一つ手に取ると男に差し出した。
「これを頂いてもいいかしら」
空色の瞳が真っ直ぐと男を見据える。
男はクリスティーナが差し出した品物と、彼女の真っ直ぐな視線を自身の視界に収める。
「まいどあり、お嬢さん」
そして満足そうに笑みを深めたのであった。
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