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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
epilogue3-5.災厄へのカウントダウン
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「あ。悪い、ぶつかったかも」
「いえ! 際に置いてしまっていたのは私ですから……!」
レミはノアの声に気付くことなくレベッカと共に落ちた書類を拾い集める。
その一連の流れに不審な点はない。
なのにノアの中に生まれた嫌な予感は膨れ上がる一方で収まってはくれない。
「ありがとうございます、レミ先輩」
レベッカは自身が集めた書類を一つに纏めるべく、レミの持っている書類の束へと乗せる。
親し気な微笑を浮かべながらレミの顔を覗き込んで、微笑みかける。先程よりも至近距離から、屈託のない笑顔が彼へ向けられる。
次の瞬間、レミの顔が歪んだ。
先程と同じ――いや、それ以上の恐怖を顕わにした顔。
彼の手から書類が滑り落ちる。
重みを持っていた紙の束が音を立てて床へと落下した。
「えっ」
レベッカが驚いた声を漏らす。
――異変はそこでは終わらない。
「先輩、もしかして体調が悪いんじゃ」
顔を蒼白とさせ、冷や汗を流すレミの様子にレベッカが気付く。
レベッカは心配するように彼へ近づき、声を掛け。
「レミせんぱ――」
手を伸ばしたその瞬間。
――レベッカの体が崩れ落ちた。
突如糸の切れたマリオネットのように、頭を床に打ち付けた彼女はそのまま制止する。
レベッカが倒れた音は他の仕事に勤しんでいた面々の耳にも届く。その場にいた全員が床に倒れた女子生徒の姿へ注目した。
時が止まったかのように重い静寂が生徒会室を満たした。
「……え?」
呆気に取られる誰かの声。
誰もが状況を理解できずに呆けていた。
ノアも同様だ。あまりにも急な出来事に思考の整理が追い付かず、立ち尽くしてしまう。
しかしそれでも真っ先に我に返り、行動に出たのは他でもない彼であった。
「っ、誰か保険医を呼んで! 近くに先生がいるならそっちでもいいから!」
「お、おお!」
混乱と恐怖が場を支配するよりも先に、声を張り上げる。
指示が飛んでから数秒の空白があったものの、遅れて我に返ったジャンが廊下を飛び出していった。
「落ち着いて! 騒ぎが大きくなると指示が通らなくなる!」
更に遅れて心配や不安から口々に言葉を漏らす生徒達をノアは一喝する。
そして倒れたまま動かないレベッカの元まで駆け寄った。
レベッカを仰向けに寝かせ、口元へ耳を傾ける。
しかし呼吸音は聞こえない。
(呼吸がない……っ)
出来る限り動揺を表に出さないよう、ノアはレベッカの首筋へと手を添える。
先程まで普通に接していた人物だったとは思えない程冷たい感触が指先から伝わり、それが嫌な予感と不安を増幅させる。
目を閉じ、指先へ意識を集中させる。
しかしどれだけ探っても、彼女の脈を感じることは出来なかった。
何とか可能性を見出そうと脈を図り直そうとも結果は変わらない。
絶望的な状況下に眩暈がした。それでもノアは何とか自分を奮い立たせ、意識を繋ぎとめる。
ゆっくりと瞼を持ち上げる。視界に入るのは横たわる女子生徒の体と、立ち尽くす一人の爪先。
「いえ! 際に置いてしまっていたのは私ですから……!」
レミはノアの声に気付くことなくレベッカと共に落ちた書類を拾い集める。
その一連の流れに不審な点はない。
なのにノアの中に生まれた嫌な予感は膨れ上がる一方で収まってはくれない。
「ありがとうございます、レミ先輩」
レベッカは自身が集めた書類を一つに纏めるべく、レミの持っている書類の束へと乗せる。
親し気な微笑を浮かべながらレミの顔を覗き込んで、微笑みかける。先程よりも至近距離から、屈託のない笑顔が彼へ向けられる。
次の瞬間、レミの顔が歪んだ。
先程と同じ――いや、それ以上の恐怖を顕わにした顔。
彼の手から書類が滑り落ちる。
重みを持っていた紙の束が音を立てて床へと落下した。
「えっ」
レベッカが驚いた声を漏らす。
――異変はそこでは終わらない。
「先輩、もしかして体調が悪いんじゃ」
顔を蒼白とさせ、冷や汗を流すレミの様子にレベッカが気付く。
レベッカは心配するように彼へ近づき、声を掛け。
「レミせんぱ――」
手を伸ばしたその瞬間。
――レベッカの体が崩れ落ちた。
突如糸の切れたマリオネットのように、頭を床に打ち付けた彼女はそのまま制止する。
レベッカが倒れた音は他の仕事に勤しんでいた面々の耳にも届く。その場にいた全員が床に倒れた女子生徒の姿へ注目した。
時が止まったかのように重い静寂が生徒会室を満たした。
「……え?」
呆気に取られる誰かの声。
誰もが状況を理解できずに呆けていた。
ノアも同様だ。あまりにも急な出来事に思考の整理が追い付かず、立ち尽くしてしまう。
しかしそれでも真っ先に我に返り、行動に出たのは他でもない彼であった。
「っ、誰か保険医を呼んで! 近くに先生がいるならそっちでもいいから!」
「お、おお!」
混乱と恐怖が場を支配するよりも先に、声を張り上げる。
指示が飛んでから数秒の空白があったものの、遅れて我に返ったジャンが廊下を飛び出していった。
「落ち着いて! 騒ぎが大きくなると指示が通らなくなる!」
更に遅れて心配や不安から口々に言葉を漏らす生徒達をノアは一喝する。
そして倒れたまま動かないレベッカの元まで駆け寄った。
レベッカを仰向けに寝かせ、口元へ耳を傾ける。
しかし呼吸音は聞こえない。
(呼吸がない……っ)
出来る限り動揺を表に出さないよう、ノアはレベッカの首筋へと手を添える。
先程まで普通に接していた人物だったとは思えない程冷たい感触が指先から伝わり、それが嫌な予感と不安を増幅させる。
目を閉じ、指先へ意識を集中させる。
しかしどれだけ探っても、彼女の脈を感じることは出来なかった。
何とか可能性を見出そうと脈を図り直そうとも結果は変わらない。
絶望的な状況下に眩暈がした。それでもノアは何とか自分を奮い立たせ、意識を繋ぎとめる。
ゆっくりと瞼を持ち上げる。視界に入るのは横たわる女子生徒の体と、立ち尽くす一人の爪先。
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