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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

epilogue-4.取捨選択の先延ばし

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 『あの一行』が指すのはクリスティーナ達のことだ。
 ノア自身も、彼女達のことが話題に上げられることを察していたのだろう。特に動じることなくアレットの言葉に耳を傾けていた。

「ベルフェゴールから襲撃を受けたのは彼女達と共にいた時だろう。お前は優秀だが、それでも何者かに狙われる程魔導の極地へ至った訳ではない。今はまだな」
「……彼女の狙いがクリス達だったんじゃないか、って言いたいんでしょ。先生は」
「ああ。これはほぼ確定だろう」

 誤魔化せる範疇の話ではないことを悟っているのだろう。これについては潔く認めたノアの言葉にアレットは頷きを返す。

「彼女達は普通じゃない。特に規格外の魔力量を持つ二人はな。……そしてお前は短くはない期間、彼女達を観察していたはずだ」

 オリヴィエの件についてはアレットの黙認できる範疇にある。だが彼女達のことについてはそれが難しいだろうことをアレットは悟っていた。
 そして恐らくはノアもそれをわかっているはずだ。

「彼女達が何者であるのか、お前なら見当がついているんじゃないのか」

 規格外の魔力を持ちながら旅をする謎の一行。彼女達が魔族から狙われた理由。
 クリスティーナ達との関りが薄いアレットでは見えていないこともノアであるならば見抜けているのではないか。そんな疑問を投げかける。

「国内で魔族が発見されたという問題の大きさがわからないお前じゃないはずだ。そしてその要因が彼女達にあるのだとすれば、彼女達に対しても何かしらの対処する必要性が出てくる可能性についても」

 ここまで取り繕っていたノアの表情はここで漸く変化を見せる。
 思い悩むように泳ぐ視線。
 考え込む彼の頭を過るのはクリスティーナの姿だ。

 凄まじい魔力を伴っていた姿、魔力制御の訓練を乗り越えた姿。
 俯きそうになった自分を叱責し、同時に元気付けてくれた姿。
 魔法を行使して戦闘の支援を全うする姿、氷の剣で相手に一撃を与えた姿。

 そして自分を庇うように前に立ち、その身を光に包んだ姿。

 彼女が普通ではないのだろうという事はとっくに悟っていた。だがそこから導かれた結論は自身の持ち得る知識からを引っ張り出してきただけの安直な回答。確信できる程のものでは到底ない。

 それでも話しておくべきなのだろうか。
 これはアレットから呼び出しを受けた時点でクリスティーナ達の話題が出ることを悟ったノアが、研究室へ辿り着くまでの間考えてきた悩みだった。
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