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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
93-2.祝賀会
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「まあ、一年も音沙汰のない友人が急に顔を見せればね。多少なりとも浮かれるよ」
先程盛ったものと被らないように気を遣いながら、レミは綺麗に料理を盛る。
テーブルへと視線を落としながら話す彼の表情は穏やかだ。
「お前のことだぞ」
再び料理の乗せられた取り皿がオリヴィエへ差し出され持ち主がそれを受け取るも、レミの手は離れようとしない。
未だ何かを食べている最中であったらしいオリヴィエはそれを呑み込んでから反論した。
「仕方ないだろ。こっちも立て込んでたんだ」
「へぇ?」
「信じてないだろう」
「友人の見舞いに行くだけで一年も掛けてるような奴の言い分なんて信じようがないだろう」
「僕だって色々と予想外だったんだ」
取り皿が解放され、皿がオリヴィエの元へ戻される。
彼らの会話の内容には気になる言葉がいくつか見受けられたが、深く聞くべきではないような話に思えたクリスティーナは口を挟まないことにした。
「まだ戻っては来ないんだな」
「やることがあるからな」
「そっか」
レミは自身の取り分であるキッシュを切り分けて口へ運ぶ。オリヴィエの返答に彼は視線を落とした。
会話の切れ目に無言の間が出来る。
物悲しそうなレミと、それを悟りながらもそれ以上語るつもりのなさそうなオリヴィエ。
話題を変えた方がいいのだろうかと考えつつもいい考えが浮かばないクリスティーナは隣へ座っていたリオへ視線を移す。
助けを求めるような意図に気付いたのだろう。エリアスやノアの談笑に参加していた彼はその視線に微笑みを返した。
「そういえばオリヴィエ様。明日からのご同行の件はノア様から伺いましたか?」
「ああ」
「そのご様子だと承諾していただけたのですね、よかったです。ご気分を害されるのではと心配していたようですので……主にクリス様が」
「リオ?」
話題を変える案を求めたのはクリスティーナなのだが、唐突な話題振りに思わず噛みつきそうになる。
確かに嫌がるのではないかとは考えていたが、それは別にオリヴィエを気遣っての思考ではない。単に今後の予定を汲む為に同行者の有無をはっきりさせておきたいという考えから来たものなのだ、と適当なことを抜かす従者をクリスティーナはねめつける。
しかし元凶は自身の仕事を全うしたかのような清々しい笑顔を貼り付けているときた。
腹立たしさに彼の足を踏みつけてやろうかとクリスティーナがテーブルの下で自身の足を持ち上げた時、オリヴィエが不思議そうに首を傾ける。
「気分を害す? 何故?」
「……貴方は少なくとも、私のことを良くは思っていないでしょう」
リオの言葉の意図がいまいち通じていないようである相手へ、クリスティーナが補足を入れる。
何が悲しくて自らが良く思われていない事実を申告しなければならないのだろう。しかも本人に。
そんな虚しさを覚えていると、彼は更に目を丸くした。
先程盛ったものと被らないように気を遣いながら、レミは綺麗に料理を盛る。
テーブルへと視線を落としながら話す彼の表情は穏やかだ。
「お前のことだぞ」
再び料理の乗せられた取り皿がオリヴィエへ差し出され持ち主がそれを受け取るも、レミの手は離れようとしない。
未だ何かを食べている最中であったらしいオリヴィエはそれを呑み込んでから反論した。
「仕方ないだろ。こっちも立て込んでたんだ」
「へぇ?」
「信じてないだろう」
「友人の見舞いに行くだけで一年も掛けてるような奴の言い分なんて信じようがないだろう」
「僕だって色々と予想外だったんだ」
取り皿が解放され、皿がオリヴィエの元へ戻される。
彼らの会話の内容には気になる言葉がいくつか見受けられたが、深く聞くべきではないような話に思えたクリスティーナは口を挟まないことにした。
「まだ戻っては来ないんだな」
「やることがあるからな」
「そっか」
レミは自身の取り分であるキッシュを切り分けて口へ運ぶ。オリヴィエの返答に彼は視線を落とした。
会話の切れ目に無言の間が出来る。
物悲しそうなレミと、それを悟りながらもそれ以上語るつもりのなさそうなオリヴィエ。
話題を変えた方がいいのだろうかと考えつつもいい考えが浮かばないクリスティーナは隣へ座っていたリオへ視線を移す。
助けを求めるような意図に気付いたのだろう。エリアスやノアの談笑に参加していた彼はその視線に微笑みを返した。
「そういえばオリヴィエ様。明日からのご同行の件はノア様から伺いましたか?」
「ああ」
「そのご様子だと承諾していただけたのですね、よかったです。ご気分を害されるのではと心配していたようですので……主にクリス様が」
「リオ?」
話題を変える案を求めたのはクリスティーナなのだが、唐突な話題振りに思わず噛みつきそうになる。
確かに嫌がるのではないかとは考えていたが、それは別にオリヴィエを気遣っての思考ではない。単に今後の予定を汲む為に同行者の有無をはっきりさせておきたいという考えから来たものなのだ、と適当なことを抜かす従者をクリスティーナはねめつける。
しかし元凶は自身の仕事を全うしたかのような清々しい笑顔を貼り付けているときた。
腹立たしさに彼の足を踏みつけてやろうかとクリスティーナがテーブルの下で自身の足を持ち上げた時、オリヴィエが不思議そうに首を傾ける。
「気分を害す? 何故?」
「……貴方は少なくとも、私のことを良くは思っていないでしょう」
リオの言葉の意図がいまいち通じていないようである相手へ、クリスティーナが補足を入れる。
何が悲しくて自らが良く思われていない事実を申告しなければならないのだろう。しかも本人に。
そんな虚しさを覚えていると、彼は更に目を丸くした。
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