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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
89-3.とある歴史書より
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世界は東西南北四つの大陸とその中間地点に位置する島国で形成されている。
東西の大陸では主に人族が、世界最大の南大陸ではエルフや獣人などの亜人族が住まい、大陸を越えた交易の中継地点として島国を統括する海洋国家が発展した。
しかし其の昔、北の大陸は発見されていなかった。
北大陸の存在を人々が認知したのは魔王が誕生してからのこと。
突如として現れた魔王、そしてその配下である魔族と魔物。邪悪なるものの誕生と同時に世界は北大陸を中心として瘴気に包まれた。
瘴気は生物や植物へ病と恐れを齎しただけでなく、それに侵された地では魔物が生まれるようになった。
世界へ大災害を齎し、混沌へと陥れた邪悪なる者達は人類へと更なる猛攻を続けた。
人ならざる者らは知性と実力あるものを将とし、軍を成し、大陸へと攻め入った。
中でも武力、魔法に於いて強力な手腕を持っていたのは魔王と、彼の腹心であった七人の魔族。
『怠惰』、『嫉妬』、『暴食』、『強欲』、『憤怒』、『色欲』、『傲慢』。七つの悪しき心を模したかのような邪悪なる者達。
時に外部から圧倒的な武力で押し切り、時に内側へ潜り込んで紛争を誘発させる。
闇を司る魔法を得意とした彼らはその魔法を巧みに操り、着実に戦況を優位に進めていった。
いくつもの国々があらゆる企てによって陥落し、世界全土が魔王に支配されるのも時間の問題。誰もがそう考え、やがて訪れる絶望に嘆いたその時。
魔王へ立ち向かうべく現れたのが一人の少女だった。
『神は今の世界の在り方を嘆いておられます。故にそのお力の一端を私へ預けたのです』
後に聖女と呼ばれることになる少女は神の啓示を受けたことを明らかにする。
『飢え、病気、暴力、恐怖に怯える貴方方を救いましょう。この世界が再び光を浴びる為、私はこの身を捧げると誓いましょう』
戦と災害に苦しむ人々を助け、諸悪の根源である魔族を討ち滅ぼす為に少女は旅をする。
彼女が神から授かった祝福の力は怪我を治し、瘴気を打ち消し、闇の魔法を弾き返した。
例えどんなに枯れた地も彼女が踏めば花が芽吹き、曇り空にも太陽が姿を現し、人々の昏き顔にも明るみが指す。
世界へ光を灯しながら、少女は北の大陸を目指して旅を続ける。
そしてその旅路で彼女は仲間に出会う。
『勤勉』、『忍耐』、『節制』、『救恤』、『慈悲』、『純潔』、『謙譲』。魔王の腹心らと相反する、人としての美しさを聖女に見出された存在。
彼らは聖女に認められたことで彼女を通じ、神からその力の一端を分け与えられた。
それぞれが突出した才を誇る七人の仲間。
彼らを引き連れた聖女は北の大地へ足を踏み入れ、その中央に聳え立つ王城、その玉座に鎮座した魔王の首を討ちとることに成功する。
長を失ったことにより戦況は一転。聖女の勇姿と彼女が切り開いた活路によって希望を見た人々は各地に散らばっていた魔王軍を撃退していく。
この戦により魔王軍は壊滅。軍の主力は魔王の腹心である七人の魔族を除いて全て討ち取られた。
残った七人の魔族も再び軍を率いるだけの力を持たず、聖女の力を恐れて姿を晦ました。
この戦を最後に、世界中を満たしていた瘴気は薄れていき、人々は安寧を再び手に入れたのだ。
世界に再び平和が訪れたが、それでも尚神はこの世界を気に掛けていらっしゃる。
故に聖女が亡くなる度、新たな聖女が生まれる。
聖なる存在が消えると同時に、その力を受け継いだ新たな存在を神が生み出す。
残った魔族らが再び世界を混沌へと誘うことがないように。
例えその兆しが視えたとしても、人類が再び脅威に立ち向かえるように。
故に今も尚、聖女様は世界のどこかにいらっしゃるのだ。
例え今その存在が明らかとなっていなくとも、この世が悪に染まろうとしたその時は再び姿をお見せになることだろう。
世界は東西南北四つの大陸とその中間地点に位置する島国で形成されている。
東西の大陸では主に人族が、世界最大の南大陸ではエルフや獣人などの亜人族が住まい、大陸を越えた交易の中継地点として島国を統括する海洋国家が発展した。
しかし其の昔、北の大陸は発見されていなかった。
北大陸の存在を人々が認知したのは魔王が誕生してからのこと。
突如として現れた魔王、そしてその配下である魔族と魔物。邪悪なるものの誕生と同時に世界は北大陸を中心として瘴気に包まれた。
瘴気は生物や植物へ病と恐れを齎しただけでなく、それに侵された地では魔物が生まれるようになった。
世界へ大災害を齎し、混沌へと陥れた邪悪なる者達は人類へと更なる猛攻を続けた。
人ならざる者らは知性と実力あるものを将とし、軍を成し、大陸へと攻め入った。
中でも武力、魔法に於いて強力な手腕を持っていたのは魔王と、彼の腹心であった七人の魔族。
『怠惰』、『嫉妬』、『暴食』、『強欲』、『憤怒』、『色欲』、『傲慢』。七つの悪しき心を模したかのような邪悪なる者達。
時に外部から圧倒的な武力で押し切り、時に内側へ潜り込んで紛争を誘発させる。
闇を司る魔法を得意とした彼らはその魔法を巧みに操り、着実に戦況を優位に進めていった。
いくつもの国々があらゆる企てによって陥落し、世界全土が魔王に支配されるのも時間の問題。誰もがそう考え、やがて訪れる絶望に嘆いたその時。
魔王へ立ち向かうべく現れたのが一人の少女だった。
『神は今の世界の在り方を嘆いておられます。故にそのお力の一端を私へ預けたのです』
後に聖女と呼ばれることになる少女は神の啓示を受けたことを明らかにする。
『飢え、病気、暴力、恐怖に怯える貴方方を救いましょう。この世界が再び光を浴びる為、私はこの身を捧げると誓いましょう』
戦と災害に苦しむ人々を助け、諸悪の根源である魔族を討ち滅ぼす為に少女は旅をする。
彼女が神から授かった祝福の力は怪我を治し、瘴気を打ち消し、闇の魔法を弾き返した。
例えどんなに枯れた地も彼女が踏めば花が芽吹き、曇り空にも太陽が姿を現し、人々の昏き顔にも明るみが指す。
世界へ光を灯しながら、少女は北の大陸を目指して旅を続ける。
そしてその旅路で彼女は仲間に出会う。
『勤勉』、『忍耐』、『節制』、『救恤』、『慈悲』、『純潔』、『謙譲』。魔王の腹心らと相反する、人としての美しさを聖女に見出された存在。
彼らは聖女に認められたことで彼女を通じ、神からその力の一端を分け与えられた。
それぞれが突出した才を誇る七人の仲間。
彼らを引き連れた聖女は北の大地へ足を踏み入れ、その中央に聳え立つ王城、その玉座に鎮座した魔王の首を討ちとることに成功する。
長を失ったことにより戦況は一転。聖女の勇姿と彼女が切り開いた活路によって希望を見た人々は各地に散らばっていた魔王軍を撃退していく。
この戦により魔王軍は壊滅。軍の主力は魔王の腹心である七人の魔族を除いて全て討ち取られた。
残った七人の魔族も再び軍を率いるだけの力を持たず、聖女の力を恐れて姿を晦ました。
この戦を最後に、世界中を満たしていた瘴気は薄れていき、人々は安寧を再び手に入れたのだ。
世界に再び平和が訪れたが、それでも尚神はこの世界を気に掛けていらっしゃる。
故に聖女が亡くなる度、新たな聖女が生まれる。
聖なる存在が消えると同時に、その力を受け継いだ新たな存在を神が生み出す。
残った魔族らが再び世界を混沌へと誘うことがないように。
例えその兆しが視えたとしても、人類が再び脅威に立ち向かえるように。
故に今も尚、聖女様は世界のどこかにいらっしゃるのだ。
例え今その存在が明らかとなっていなくとも、この世が悪に染まろうとしたその時は再び姿をお見せになることだろう。
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