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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
88-2.生徒会
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「アレット先生の元へ行ったんじゃないのか」
「行ってきたわ。その後図書室を見せてもらう約束だったのだけれど……」
「大勢に追いかけられ始めたノア様がレミ様を当たるようにとだけ残して走り去ってしまって」
「ああ……」
クリスティーナ達へと距離を詰めたレミは二人の説明を聞いて大方の察しが付いたらしい。
大きく息を吐くと出口である戸へと手を掛けた。
「わかった。要はきみ達を図書室へ連れていけばいいんだろう」
「恐らくそういう事だと思うわ」
レミが戸を開く。クリスティーナとリオはその後に続いた。
しかしその足を止めるように後ろから声が掛かる。
「あ、レミ先輩。用事ですか?」
「ああ。少し外すよ」
「そうですか。……あ、そうだ」
レミを引き留めたのは先程のおかっぱの少女。
彼女はレミの返事に頷きを返しながらも、何かを思い出したように手を打った。
「もう少しここに顔を出すよう、ノア先輩に言っておいてくれませんか? 引継ぎや必要な活動が終わっているとはいえまだ任期中である以上、生徒会長はノア先輩に他ならないんですから」
「せ……」
「ああ、伝えておくよ。気苦労を掛けてすまないな」
女子生徒の発言に目を剥くクリスティーナとリオを他所にレミは返事と謝罪を返して今度こそ退室する。
その背中を見失うことがないようにとクリスティーナ達も続いて部屋を後にするが、その顔には未だ困惑の色が残っていた。
「あの人、時間に余裕があるって顔しておきながら役職持ちだったんですか」
「それが事実なら多忙を極めているものだと思うのだけれど。最近は殆ど私達につきっきりだったはずよ」
「言っても今は引き継ぎ期間だからな。各々の役職の仕事内容を後輩に教えれば他にやることは殆どないんだ」
顔を見合わせて声を顰めるクリスティーナ達の話が聞こえたのだろう。
先へ進みながらレミが口を挟んだ。
「……とはいえ、ただでさえ最終学年はばたつきやすい。そんな中生徒会に属しながらも時間を持て余してるのは要領の良いあいつくらいだよ。普通は学業と生徒会の仕事とで手一杯になるはずだ。ぼくみたいにね」
自分もまた生徒会の一員であることを仄めかしつつレミは大袈裟に肩を竦めた。
それを視界に捉えながらもクリスティーナは学院内の顔の広さを指摘した時のノアの反応を思い出す。
口籠もり、よそよそしい様子を見せたのは自分の立場をひけらかすのが憚られたからかもしれない。
「優秀なのね」
「それが妥当な評価だろうな」
クリスティーナは会話を交えつつレミの様子を窺う。
脳裏をよぎるのは昨晩の彼の様子だ。
体調も精神面も明らかに不安定であったレミだが、前を歩く彼にその面影はない。
フードの下に隠された顔色まで窺うことは出来ないが、少なくともその声音や振る舞いからは昨晩の様子を連想させるような何かを感じることはない。
前を歩く青年の様子を気に掛けながらも、昨晩の件について触れることは出来ず。気が付けば別館の入り口まで辿り着いていた。
「ここが図書館だ」
移動中見かけた通常の教室達とは違った、大きな両開きの扉。
それを押し開けるレミに続いてクリスティーナとリオはオーケアヌス魔法学院の図書館へと足を踏み入れた。
「行ってきたわ。その後図書室を見せてもらう約束だったのだけれど……」
「大勢に追いかけられ始めたノア様がレミ様を当たるようにとだけ残して走り去ってしまって」
「ああ……」
クリスティーナ達へと距離を詰めたレミは二人の説明を聞いて大方の察しが付いたらしい。
大きく息を吐くと出口である戸へと手を掛けた。
「わかった。要はきみ達を図書室へ連れていけばいいんだろう」
「恐らくそういう事だと思うわ」
レミが戸を開く。クリスティーナとリオはその後に続いた。
しかしその足を止めるように後ろから声が掛かる。
「あ、レミ先輩。用事ですか?」
「ああ。少し外すよ」
「そうですか。……あ、そうだ」
レミを引き留めたのは先程のおかっぱの少女。
彼女はレミの返事に頷きを返しながらも、何かを思い出したように手を打った。
「もう少しここに顔を出すよう、ノア先輩に言っておいてくれませんか? 引継ぎや必要な活動が終わっているとはいえまだ任期中である以上、生徒会長はノア先輩に他ならないんですから」
「せ……」
「ああ、伝えておくよ。気苦労を掛けてすまないな」
女子生徒の発言に目を剥くクリスティーナとリオを他所にレミは返事と謝罪を返して今度こそ退室する。
その背中を見失うことがないようにとクリスティーナ達も続いて部屋を後にするが、その顔には未だ困惑の色が残っていた。
「あの人、時間に余裕があるって顔しておきながら役職持ちだったんですか」
「それが事実なら多忙を極めているものだと思うのだけれど。最近は殆ど私達につきっきりだったはずよ」
「言っても今は引き継ぎ期間だからな。各々の役職の仕事内容を後輩に教えれば他にやることは殆どないんだ」
顔を見合わせて声を顰めるクリスティーナ達の話が聞こえたのだろう。
先へ進みながらレミが口を挟んだ。
「……とはいえ、ただでさえ最終学年はばたつきやすい。そんな中生徒会に属しながらも時間を持て余してるのは要領の良いあいつくらいだよ。普通は学業と生徒会の仕事とで手一杯になるはずだ。ぼくみたいにね」
自分もまた生徒会の一員であることを仄めかしつつレミは大袈裟に肩を竦めた。
それを視界に捉えながらもクリスティーナは学院内の顔の広さを指摘した時のノアの反応を思い出す。
口籠もり、よそよそしい様子を見せたのは自分の立場をひけらかすのが憚られたからかもしれない。
「優秀なのね」
「それが妥当な評価だろうな」
クリスティーナは会話を交えつつレミの様子を窺う。
脳裏をよぎるのは昨晩の彼の様子だ。
体調も精神面も明らかに不安定であったレミだが、前を歩く彼にその面影はない。
フードの下に隠された顔色まで窺うことは出来ないが、少なくともその声音や振る舞いからは昨晩の様子を連想させるような何かを感じることはない。
前を歩く青年の様子を気に掛けながらも、昨晩の件について触れることは出来ず。気が付けば別館の入り口まで辿り着いていた。
「ここが図書館だ」
移動中見かけた通常の教室達とは違った、大きな両開きの扉。
それを押し開けるレミに続いてクリスティーナとリオはオーケアヌス魔法学院の図書館へと足を踏み入れた。
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