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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
87-2.生と死
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「偉大な功績を残した者をそのままの姿で眠らせること。それはその者の生前の活躍に敬意を表す為というのが表向きの理由だ。実際、死後も尚丁重な扱いを受け、数々の称賛を浴びることが叶えば誰だって光栄なことだと感じるだろう」
「その言い方だと裏があるような言い方ね」
「まあね。ここから先は賛否が分かれる話さ」
一定のリズムを足で刻み、先を進むノア。
その顔をクリスティーナが見ることは叶わない。しかし彼の声色から、彼自身は現在の話題をそこまで深刻なものとして捉えていないように思えた。
「国規模で評価される魔導の天才たちは揃いも揃って優れた人材だ。それが体質的な要因であれ、頭脳面であれ、魔力や適正魔法など魔導師としての才や素質であれ」
開けっ放しの窓から風が入り込む。
それはクリスティーナ達を撫でるように過ぎ去った。
「何故彼らが魔導の極地へ至ったのか。それを追究すれば更なる魔導の進歩を望むことさえできる」
通り過ぎる風に攫われぬよう、ノアは自身のフードを押さえる。
渡り廊下の終着点。生徒達が良く行き交う建物の前で彼は一度振り返った。
「故に魔導士達は考えるのさ。例え亡骸だとしても彼らの体には魔導の真価を促すヒントが隠れているのではないか、そんな可能性を秘めているのではないか……ってね」
「それは……魔導師の亡骸を使って研究を進めているということ?」
「その通りだよ」
クリスティーナの問いに彼は首を縦に振った。
あっさりと肯定された事実。それはクリスティーナにとって少なくとも気分が良いといえる内容ではない。
「勿論遺言や生前の言葉なんかで死後の自身の扱いに触れている者……極端な例で言うと時計塔に自分の亡骸を入れるな、とかね。そういうものが把握できれば本人の意思が尊重される。けれどそういったものが確認できない場合は身内へ確認された上で死者の扱いが決定する」
「身内が良しとすれば亡骸は晴れて時計塔へ保管されるという事ね」
「ああ。保管された遺体全てが使用される訳ではないが観察や研究、時に魔法の実験の為に有効に活用されることもある」
遺体を使って魔法の人体実験を行う。それが公に許容された国。
人の体を使ってでしか確かめようのないことも出てくるのだろう。極地へと至った存在だからこそ、常軌を逸しているからこそ普通と比べてわかることもあるのだろう。
しかし今のクリスティーナにはフォルトゥナの情勢をすんなりと受け入れられるだけの器を持ち合わせていなかった。
フォルトゥナの魔導師達が許容しているそれは死者の冒涜と捕らえる事も出来るのではないか。そんな批判的な思惑が頭を埋める。
「合点がいっていない顔だね、クリス」
「そうね。私はとても褒められた行いではないと思ったわ」
「そう。だからこれは賛否が分かれる話なのさ」
目の前の魔導師は涼しい顔のままクリスティーナの言葉を受け止める。
彼はクリスティーナの反応を粗方予測していたようだ。
「その言い方だと裏があるような言い方ね」
「まあね。ここから先は賛否が分かれる話さ」
一定のリズムを足で刻み、先を進むノア。
その顔をクリスティーナが見ることは叶わない。しかし彼の声色から、彼自身は現在の話題をそこまで深刻なものとして捉えていないように思えた。
「国規模で評価される魔導の天才たちは揃いも揃って優れた人材だ。それが体質的な要因であれ、頭脳面であれ、魔力や適正魔法など魔導師としての才や素質であれ」
開けっ放しの窓から風が入り込む。
それはクリスティーナ達を撫でるように過ぎ去った。
「何故彼らが魔導の極地へ至ったのか。それを追究すれば更なる魔導の進歩を望むことさえできる」
通り過ぎる風に攫われぬよう、ノアは自身のフードを押さえる。
渡り廊下の終着点。生徒達が良く行き交う建物の前で彼は一度振り返った。
「故に魔導士達は考えるのさ。例え亡骸だとしても彼らの体には魔導の真価を促すヒントが隠れているのではないか、そんな可能性を秘めているのではないか……ってね」
「それは……魔導師の亡骸を使って研究を進めているということ?」
「その通りだよ」
クリスティーナの問いに彼は首を縦に振った。
あっさりと肯定された事実。それはクリスティーナにとって少なくとも気分が良いといえる内容ではない。
「勿論遺言や生前の言葉なんかで死後の自身の扱いに触れている者……極端な例で言うと時計塔に自分の亡骸を入れるな、とかね。そういうものが把握できれば本人の意思が尊重される。けれどそういったものが確認できない場合は身内へ確認された上で死者の扱いが決定する」
「身内が良しとすれば亡骸は晴れて時計塔へ保管されるという事ね」
「ああ。保管された遺体全てが使用される訳ではないが観察や研究、時に魔法の実験の為に有効に活用されることもある」
遺体を使って魔法の人体実験を行う。それが公に許容された国。
人の体を使ってでしか確かめようのないことも出てくるのだろう。極地へと至った存在だからこそ、常軌を逸しているからこそ普通と比べてわかることもあるのだろう。
しかし今のクリスティーナにはフォルトゥナの情勢をすんなりと受け入れられるだけの器を持ち合わせていなかった。
フォルトゥナの魔導師達が許容しているそれは死者の冒涜と捕らえる事も出来るのではないか。そんな批判的な思惑が頭を埋める。
「合点がいっていない顔だね、クリス」
「そうね。私はとても褒められた行いではないと思ったわ」
「そう。だからこれは賛否が分かれる話なのさ」
目の前の魔導師は涼しい顔のままクリスティーナの言葉を受け止める。
彼はクリスティーナの反応を粗方予測していたようだ。
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