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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

83-2.オーケアヌス魔法学院

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「この先は教鞭を執っている魔術師や魔法学の研究員の研究室が並んでいる。生徒の行き来は結構減るんじゃないかな」

 ノアの説明の通り、先程まで騒々しかった廊下も建物が変わるだけで落ち着きを見せていた。
 時折一流の魔導師らしき人物らとすれ違いながら、クリスティーナはふと抱いた疑問をノアへ向ける。

「そういえば、貴方は彼女と随分親しいのね」
「うん?」
「ただの生徒と教師にしては教師の方の焼く世話が大きいと思って」

 彼女、という言葉が指すのは勿論アレットのことだ。

 思い返せばノアと初めて会った時もそうだった。ただの生徒と教師という関係にしては親しげなやりとり。
 それに加えて生徒一人の個人的な頼みで魔導具の製造を引き受けるという行動や非常時に個別に連絡をし合える関係。
 アレットの振る舞いや身に纏う雰囲気、そして学院の生徒数などを考慮しても流石に生徒全員と同じ関係を築いているとは考えにくい。

 その点について指摘をするとノアは納得したように頷いた。

「アレット先生は俺とレミの師匠なんだ。俺達は入学前から彼女の元で弟子入りさせてもらっててね。長い付き合いなのさ」
「なるほど」
「あ。とは言っても彼女は魔法に対して厳しい目を持っているから、贔屓目で俺達を評価することはないよ。親しいのはあくまでプライベート関連であって成績なんかは関係していない」

 魔法に対するノアの姿勢を見ていれば彼の言葉が事実であることはわかる。例え楽をして甘えられる立場にあったとしても彼自身がそれを良しとはしないはずだ。

「それと今回の魔導具の製造については元を辿れば先生にも落ち度があると指摘されてもおかしくない案件だからね。その上学院近辺で混乱を招かれるとなれば彼女自身が咎められることも十分考えられるだろう」
「ノア様の頼みだからという以上にご自身の問題として対処した、といったところでしょうか」
「そういうこと」

 アレットの落ち度というのは規格外の魔力を見て強行に出たことを指すのだろう。
 リオの言葉に頷きを返した直後、ノアは足を止める。

「っと、ここだよ」

 三人の正面には一枚の扉。
 ノアが三度戸を叩くと、中からは「入れ」という短く淡白な返事が返ってきた。
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