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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

76-2.神の賜物

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 それを眺めながらもクリスティーナはオリヴィエとのやり取りを思い浮かべる。
 鋭い言葉、思慮の浅い言動。それらを思い浮かべた後に過ぎったのは戦闘時に扱っていた特殊な魔法についてだ。

「……これはただの興味だから、言えない事なら断ってくれていいのだけれど」
「うん?」

 彼の魔法を目撃し、自身の中で導いていた確信染みた予測。
 少し躊躇いながらもクリスティーナはそれを言葉にした。

「彼は神の賜物ギフトなの?」

 ある程度予想していた問いだったのだろう。
 ノアは動揺することもなく、僅かに目を細めて頷いた。

「そうだよ」
「そう……」

 ――神の賜物ギフト
 人族の中に根付いた魔法適性という概念から外れた特殊な存在。彼らの扱う魔法、もしくは彼ら自身のことを纏めて人は神の賜物ギフトと呼ぶ。

 それは神から与えられた特別な才。前世で徳を積んだ魂が輪廻転生の際に神の寵愛を受けた証として授かったものと言われる。
 神の賜物ギフトは実例が少なく、古い言い伝え程度の認識で語り継がれてきた存在。実在するかどうかも怪しいという説を唱える者が数多いる程に珍しい存在である。
 斯く言うクリスティーナもこの目で見るまではあくまで昔の話が誇張されて生まれた存在という認識を持っていた一人だ。

 広義では聖女も神の賜物ギフトに該当し、七人の従者が与えられる力も後天的な神の賜物ギフトと呼ばれることがある。
 しかし狭義の神の賜物ギフトと聖女達とでは明確な違いが存在する。

 一つは聖女や七人の従者は聖魔法や聖女から授かった能力の外にも魔法適性という概念を持つことが許されているという点。
 聖女は他の者が扱うことのできない聖魔法を使用しながらも一般的に魔法と呼ばれる六属性の魔法を魔法適性という制約の中で行使することができる。
 クリスティーナが氷魔法を行使できる体質のまま回復魔法等の特別な魔法を行使出来ていることなどがこれに該当する。七人の従者も然りだ。

 一方で神の賜物ギフトは神から授かったと言われる特別な魔法以外、一切の魔法を扱うことが出来ないと言われている。
 戦闘中にオリヴィエが六属性の魔法のどれかを扱う姿は見られなかったことからも、この説は濃厚だろう。

 そしてもう一つ。明確な違いは――

 クリスティーナの頭を過った考え。彼女が言わんとしたことを悟ったのだろう。ノアはゆっくりと首を横に振った。

「クリス、彼に同情するような態度は見せないでやってくれよ」

 胸の内を言い当てられるような言葉に内心虚を突かれる。
 僅かに肩を揺らすクリスティーナに苦笑を返しながら彼は言った。
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