244 / 579
第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
73-6.これからの為の話
しおりを挟む
「エリアス様、少々席を外しましょう」
「へぇっ? 急に何だよ」
リオは開け放たれたままだった窓に手を掛けてエリアスへ振り返る。
エリアスは呼び出された理由がわからず目を丸くしつつも腰を浮かせてその後に続く。
「合流してからというもの、俺を見てはずっと気まずそうにしているじゃないですか。俺やお嬢様が気付かないと思ったんですか」
「いつまでも落ち着きがないと目障りだわ。何とかして来なさい」
「えっ!? 何でバレて……いや、違うんだってこれは」
本人達は取り繕う努力をしていたようだが、森で合流を果たしてからというものエリアスがリオのことを気に掛けるように見ていたことにクリスティーナとリオは気付いていた。
行動に支障を来すほどではなさそうであったことや、その時抱えていた問題が問題であっただけにどちらも触れずにいたことだが、ぎくしゃくした雰囲気が長引くことは是非とも避けて欲しい所であった。
「あー、やっぱり分かりやすかったかぁ」
「貴方は上手く隠していたようだったけれど」
窓から外へ出ていくリオとエリアスを見送り、その窓が閉じたのを確認してからクリスティーナはノアを横目で見る。
リオに対して気まずさを覚えていたのは何もエリアスだけではない。
上手く隠していた分リオは気付けなかったようだが、人の心の動きに敏感なクリスティーナはノアもエリアスと同じ様にリオを気に掛けていたことに気付いていた。
隠しきれていた自信があったのだろう。
それを指摘されたノアは目を見開いてから肩を竦める。
「……恐れ入ったよ。君には本当に頭が上がらない」
降参だ、彼はと両手を緩く上げる。
「森で少し妙なものを見たからね……。彼がぎこちなかったのもそのせいだろう。その話が気になるのなら後で話すよ」
狭い部屋は六人が詰め込まれていた時に比べて部屋は随分と静かになる。
窓の外からは時折リオとエリアスの声が聞こえてくるが、その内容までは聞き取れない。
ノアはクリスティーナの正面へ来るよう座り直すと、小さく微笑んだ。
顔を覗き込むように藍色の瞳を向けているものの、彼が自ら言葉を紡ぐ様子はない。
恐らくはクリスティーナが言葉に迷っていることを察して待っていてくれているのだろう。
二人の間に暫く沈黙が訪れる。
その間少しずつ自分の考えを整理していたクリスティーナはやがてゆっくりと口を開いた。
「へぇっ? 急に何だよ」
リオは開け放たれたままだった窓に手を掛けてエリアスへ振り返る。
エリアスは呼び出された理由がわからず目を丸くしつつも腰を浮かせてその後に続く。
「合流してからというもの、俺を見てはずっと気まずそうにしているじゃないですか。俺やお嬢様が気付かないと思ったんですか」
「いつまでも落ち着きがないと目障りだわ。何とかして来なさい」
「えっ!? 何でバレて……いや、違うんだってこれは」
本人達は取り繕う努力をしていたようだが、森で合流を果たしてからというものエリアスがリオのことを気に掛けるように見ていたことにクリスティーナとリオは気付いていた。
行動に支障を来すほどではなさそうであったことや、その時抱えていた問題が問題であっただけにどちらも触れずにいたことだが、ぎくしゃくした雰囲気が長引くことは是非とも避けて欲しい所であった。
「あー、やっぱり分かりやすかったかぁ」
「貴方は上手く隠していたようだったけれど」
窓から外へ出ていくリオとエリアスを見送り、その窓が閉じたのを確認してからクリスティーナはノアを横目で見る。
リオに対して気まずさを覚えていたのは何もエリアスだけではない。
上手く隠していた分リオは気付けなかったようだが、人の心の動きに敏感なクリスティーナはノアもエリアスと同じ様にリオを気に掛けていたことに気付いていた。
隠しきれていた自信があったのだろう。
それを指摘されたノアは目を見開いてから肩を竦める。
「……恐れ入ったよ。君には本当に頭が上がらない」
降参だ、彼はと両手を緩く上げる。
「森で少し妙なものを見たからね……。彼がぎこちなかったのもそのせいだろう。その話が気になるのなら後で話すよ」
狭い部屋は六人が詰め込まれていた時に比べて部屋は随分と静かになる。
窓の外からは時折リオとエリアスの声が聞こえてくるが、その内容までは聞き取れない。
ノアはクリスティーナの正面へ来るよう座り直すと、小さく微笑んだ。
顔を覗き込むように藍色の瞳を向けているものの、彼が自ら言葉を紡ぐ様子はない。
恐らくはクリスティーナが言葉に迷っていることを察して待っていてくれているのだろう。
二人の間に暫く沈黙が訪れる。
その間少しずつ自分の考えを整理していたクリスティーナはやがてゆっくりと口を開いた。
0
お気に入りに追加
82
あなたにおすすめの小説
異世界転移した町民Aは普通の生活を所望します!!
コスモクイーンハート
ファンタジー
異世界転移してしまった女子高生の合田結菜はある高難度ダンジョンで一人放置されていた。そんな結菜を冒険者育成クラン《炎樹の森》の冒険者達が保護してくれる。ダンジョンの大きな狼さんをもふもふしたり、テイムしちゃったり……。
何気にチートな結菜だが、本人は普通の生活がしたかった。
本人の望み通りしばらくは普通の生活をすることができたが……。勇者に担がれて早朝に誘拐された日を境にそんな生活も終わりを告げる。
何で⁉私を誘拐してもいいことないよ⁉
何だかんだ、半分無意識にチートっぷりを炸裂しながらも己の普通の生活の(自分が自由に行動できるようにする)ために今日も元気に異世界を爆走します‼
※現代の知識活かしちゃいます‼料理と物作りで改革します‼←地球と比べてむっちゃ不便だから。
#更新は不定期になりそう
#一話だいたい2000字をめどにして書いています(長くも短くもなるかも……)
#感想お待ちしてます‼どしどしカモン‼(誹謗中傷はNGだよ?)
#頑張るので、暖かく見守ってください笑
#誤字脱字があれば指摘お願いします!
#いいなと思ったらお気に入り登録してくれると幸いです(〃∇〃)
#チートがずっとあるわけではないです。(何気なく時たまありますが……。)普通にファンタジーです。
アブストラクト・シンキング 人間編
時富まいむ(プロフ必読
ファンタジー
訳ありでここに連載している小説をカクヨムに移転、以降の更新をそちらで行います。
一月末まで公開しております
侵食した世界に隠された真実を子供たちは受け入れるのか、それとも・・・
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
転生王女は現代知識で無双する
紫苑
ファンタジー
普通に働き、生活していた28歳。
突然異世界に転生してしまった。
定番になった異世界転生のお話。
仲良し家族に愛されながら転生を隠しもせず前世で培ったアニメチート魔法や知識で色んな事に首を突っ込んでいく王女レイチェル。
見た目は子供、頭脳は大人。
現代日本ってあらゆる事が自由で、教育水準は高いし平和だったんだと実感しながら頑張って生きていくそんなお話です。
魔法、亜人、奴隷、農業、畜産業など色んな話が出てきます。
伏線回収は後の方になるので最初はわからない事が多いと思いますが、ぜひ最後まで読んでくださると嬉しいです。
読んでくれる皆さまに心から感謝です。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる