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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

73-3.これからの為の話

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「悪いね。彼、言葉がきついんだ」
「構わないわ。私達が迷惑を掛けたのは事実だもの。彼の言葉は尤もよ」
「そんな言い方しないでくれ。訳ありだとわかっていて首を突っ込んだのは俺なんだからね」

 卑屈になっている訳ではない。認識している事実として言葉にしただけなのだが、そんなクリスティーナの声に対してノアは困ったように眉を下げた。

「彼の態度もあまりに気にしないでくれよ。つんけんしてるけど根は馬鹿だからね、今頃先の戦闘を思い出して鼻血でも出してるとこさ」
「そういえば女性が得意ではありませんでしたね。戦闘時はそんな素振り全くありませんでしたが」
「単純馬鹿だからね。何かに集中する時は余所事が考えられないのさ。今クリスと話してた時だって内心穏やかではなかっただろうね」
「本人がいないとこで株下げるの止めてやれよぉ……」

 明るい口調で敢えて友人の無様を晒すのはノアの気遣いだろう。
 重い空気を切り替える為、そして友人の印象が下がらない為に彼は笑い話として片付けられる話題を挟んでみせているのだ。

 それにリオとエリアスが乗っかってやることで部屋の空気は再び緩みだす。
 そこから暫くは他愛もない話が花を咲かせた。そしてその場を満たしていた緊張感が抜けきったところでノアは机から地図を出す。

「さて、さっきの話の続きだけども。君達がフォルトゥナを発つとして。どこか目星をつけている場所はあるのかな」

 フォルトゥナ全体と隣国の一部が載った地図を床に広げながら投げられる問い。
 クリスティーナ達三人は互いに顔を見合わせてから首を傾けた。

「最終的な目的地の候補はありますが経路などは特に……?」
「一先ずは脅威から離れられればいいって感じですよね?」

 自己の認識が合っているか問うようにリオとエリアスが主人を見やる。
 クリスティーナはそれに頷きを返した。

 三人の様子にノアもまた一つ頷いてから地図の上に人差し指を乗せる。
 彼が指し示すのはフォルトゥナの首都。現在地だ。

「今いるのはフォルトゥナ首都グロワール。君達がフロンティエール方面からやってきたこと、ベルフェゴールとの接触が森林地帯で発生したことを考えると東進と南進は避けたいところだろう」

 フロンティエール、そしてミロワールの森へと指を辿るノア。
 一行は彼の言葉に対し頷きで肯定した。

「ならば北か西に進むことになる。この二択ならどちらかな」
「……西、かしら」

 元より聖国を避けるべく西進してきた身だ。更にシムラクルム森林へ足を踏み入れるかどうかの判断を先延ばしにするにしろ、近づいておいて損はないだろう。
 今後シムラクルム森林へ向かう必要性を見出した時、目的地との距離が離れていればその分の時間を無駄にしてしまう訳なのだ。ここは西進が無難だろう。

「そうですね、賛成です」

 賛同するリオに続いてエリアスも無言でうなずく。
 二人とも異論はないようだ。
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