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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
70-2.撤退作戦
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そして彼女が能動的に動くよりも先に二人は動き出した。
リオは手元で生成されるナイフを掴んではベルフェゴールへ向けて投げつけ、近づき、その肉を切り裂かんと振るい続ける。
時折二人の間に出現する水柱がベルフェゴールの注意を削ぎ、無駄に回避行動を取らせることで彼女から隙を生み出そうとした。
後方の支援を受けながら攻め続けるリオ。だがその攻撃の殆どをベルフェゴールは避けてみせる。
だが、それでいいのだ。自分達の目的はあくまでその場からの撤退。相手の深追いでも撃退でもないのだから。
時間を稼ぐリオの背後をオリヴィエが素早く通過する。
道中、転がっていたエリアスの剣へ足を伸ばし、爪先で掠めるように触れる。
そして低空で飛行する彼は、体に負担が掛からない範疇で可能な限りの速度を以てエリアスへ近づいた。
エリアスもまた、地面に手をついて体を起こそうとしていた。しかし壁へ激突した際にどこかを酷く痛めらしく、彼は立ち上がることすらままならないようだ。
そんな彼へ近づいたオリヴィエがその肩へ触れる。
「っ、オリヴィエ――」
「その様で文句なんて言ってくれるな。今の僕達に求められる最善は先の撤退だ」
主人が残っている場での撤退を良しとしないエリアスの言い分を悟ったオリヴィエは先回りするように言い放つ。
まともに動けない前衛は役に立たないどころか、足を引っ張ることになりかねない。自分の意志や誇りよりも優先しなければならない選択も時には存在する。
それを短く指摘され、エリアスは顔を歪める。それは自分の無力さや望まぬ選択に対する苛立ち、悔しさから来るものだった。
彼は項垂れるが、それ以上口を挟むことはしなかった。
「……わかった。頼む」
「賢明な判断だ。”飛べ”」
エリアスの体がオリヴィエと同じように上昇する。
それを確認するとオリヴィエは転移大結晶へ向けて最速で移動を始めた。
道中、彼は後方を気遣うように視線を動かした後、人差し指で何かを招くような素振りを見せる。
それに応えたのは地面に転がったままであったエリアスの剣だ。合図を受け取ったそれは、独りでに浮かび上がった後にオリヴィエ達の背を追って滑空した。
「リヴィ、エリー!」
自分の元へ近づく二人にノアが声を掛ける。
「悪い、先に行く。お前も後から必ず来い」
「勿論だ。先で待っていてくれ」
すれ違い様に短い言葉を交わすノアとオリヴィエ。
一方でエリアスもクリスティーナへ声を掛けた。
「すみません、オレ……」
「不要な謝罪よ」
エリアスは思っていることが顔に出やすい。
顔を曇らせる彼の考えを察したクリスティーナはその声を遮った。
リオは手元で生成されるナイフを掴んではベルフェゴールへ向けて投げつけ、近づき、その肉を切り裂かんと振るい続ける。
時折二人の間に出現する水柱がベルフェゴールの注意を削ぎ、無駄に回避行動を取らせることで彼女から隙を生み出そうとした。
後方の支援を受けながら攻め続けるリオ。だがその攻撃の殆どをベルフェゴールは避けてみせる。
だが、それでいいのだ。自分達の目的はあくまでその場からの撤退。相手の深追いでも撃退でもないのだから。
時間を稼ぐリオの背後をオリヴィエが素早く通過する。
道中、転がっていたエリアスの剣へ足を伸ばし、爪先で掠めるように触れる。
そして低空で飛行する彼は、体に負担が掛からない範疇で可能な限りの速度を以てエリアスへ近づいた。
エリアスもまた、地面に手をついて体を起こそうとしていた。しかし壁へ激突した際にどこかを酷く痛めらしく、彼は立ち上がることすらままならないようだ。
そんな彼へ近づいたオリヴィエがその肩へ触れる。
「っ、オリヴィエ――」
「その様で文句なんて言ってくれるな。今の僕達に求められる最善は先の撤退だ」
主人が残っている場での撤退を良しとしないエリアスの言い分を悟ったオリヴィエは先回りするように言い放つ。
まともに動けない前衛は役に立たないどころか、足を引っ張ることになりかねない。自分の意志や誇りよりも優先しなければならない選択も時には存在する。
それを短く指摘され、エリアスは顔を歪める。それは自分の無力さや望まぬ選択に対する苛立ち、悔しさから来るものだった。
彼は項垂れるが、それ以上口を挟むことはしなかった。
「……わかった。頼む」
「賢明な判断だ。”飛べ”」
エリアスの体がオリヴィエと同じように上昇する。
それを確認するとオリヴィエは転移大結晶へ向けて最速で移動を始めた。
道中、彼は後方を気遣うように視線を動かした後、人差し指で何かを招くような素振りを見せる。
それに応えたのは地面に転がったままであったエリアスの剣だ。合図を受け取ったそれは、独りでに浮かび上がった後にオリヴィエ達の背を追って滑空した。
「リヴィ、エリー!」
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「悪い、先に行く。お前も後から必ず来い」
「勿論だ。先で待っていてくれ」
すれ違い様に短い言葉を交わすノアとオリヴィエ。
一方でエリアスもクリスティーナへ声を掛けた。
「すみません、オレ……」
「不要な謝罪よ」
エリアスは思っていることが顔に出やすい。
顔を曇らせる彼の考えを察したクリスティーナはその声を遮った。
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