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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
69-2.秘められた狂気
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大きな音を伴って落下する槌の頭。
武器を失ったベルフェゴールは体勢を立て直すべく後退を始めた。
しかしリオはそれを逃さない。
彼女以上の速度を以て近づいた彼はその鳩尾へ回し蹴りを食らわせる。
迫る攻撃に感づいたベルフェゴールはそれを片手で受け止めたが、その勢いまでは殺せない。
少女の体は後方まで吹き飛ばされた。
「残りのお時間は?」
それを追いかけようと腰を低く落としながら、リオはノアへと声を掛ける。
序盤に比べ、更に強くなった転移大結晶の光。それを横目で確認しながらノアは告げる。
「一分だ。行けそうかい?」
「お任せください」
負傷していた腕も完全に修復した。
リオは短く言葉を返すと物音を立てる事すらなくその場から去る。
ベルフェゴールは前衛が叩きのめされた戦場まで吹き飛ばされていた。彼女は地面に足を付き、砂煙を巻き起こしながら自身を吹き飛ばす勢いを殺す。
そこへ迫る気配。武器を作る余裕はない。
ベルフェゴールは風の刃と氷の槍を同時に放った。
床と平行に滑る目測不可能な刃と頭上に浮かぶ加減を知らない数の氷の槍。
しかしリオは怯まず前進する。それどころか彼は更に移動速度を上げてきた。
先に襲い掛かるのは風魔法。それは敵の脳髄をぶちまけようと大きな牙を突き立てる。
瞬間。彼は強く地を蹴り、体を真横に傾けて宙を舞う。
地面と平行に傾けられた体の下を鋭い刃が通過した。
更にそれは後衛にまで手を伸ばすが、同時に二人の前へ巨大な水の壁が姿を現す。
それは瞬く間に氷結し、硬度を増した防壁と化した。
衝突する刃。それは壁を大きく抉り抜くが、刃の勢いはそこで打ち消される。
がらがらと音を立てて崩れ落ちる壁。その先には無傷のクリスティーナとノアがいた。
その気配を背後に感じながらリアは静かに着地する。
だが彼が片脚を地面につけた直後、そこへ無数の氷の矢が降り注ぐ。
迫る無数の気配に気付き視線を持ち上げながらも彼はその場の状況を冷静に分析する。
(避けようと思えば全て避けられる。……が、彼女に武器を生成させる時間を作ってしまう)
ならばと選んだ選択は常人ならば到底不可能なもの。
リオはナイフを両手で握りしめながら直進した。
彼はナイフを巧みに扱う。迫る氷はその何本かが砕け散った。
だが残された槍の数は多い。それは腕や横腹を掠め、貫き、鮮血を散らす。
それでも彼は止まらない。
確かに地面を踏み抜いては、更に速度を上げて前進した。
回避は捨て、致命傷を与える攻撃のみを最低限振り払う。
本来ならば動きを鈍らせる要因の負傷も激痛も、彼には通用しない。開いた傍から塞がる傷と痛覚を無視するだけの目的が彼の無茶苦茶な前進を可能にさせた。
手足が貫かれようと、どれだけの激痛に苛まれようとも意識がある限り敵の殲滅に全力を注ぐ。そんな強い意志の下、彼はベルフェゴールの元へ辿り着いた。
武器を失ったベルフェゴールは体勢を立て直すべく後退を始めた。
しかしリオはそれを逃さない。
彼女以上の速度を以て近づいた彼はその鳩尾へ回し蹴りを食らわせる。
迫る攻撃に感づいたベルフェゴールはそれを片手で受け止めたが、その勢いまでは殺せない。
少女の体は後方まで吹き飛ばされた。
「残りのお時間は?」
それを追いかけようと腰を低く落としながら、リオはノアへと声を掛ける。
序盤に比べ、更に強くなった転移大結晶の光。それを横目で確認しながらノアは告げる。
「一分だ。行けそうかい?」
「お任せください」
負傷していた腕も完全に修復した。
リオは短く言葉を返すと物音を立てる事すらなくその場から去る。
ベルフェゴールは前衛が叩きのめされた戦場まで吹き飛ばされていた。彼女は地面に足を付き、砂煙を巻き起こしながら自身を吹き飛ばす勢いを殺す。
そこへ迫る気配。武器を作る余裕はない。
ベルフェゴールは風の刃と氷の槍を同時に放った。
床と平行に滑る目測不可能な刃と頭上に浮かぶ加減を知らない数の氷の槍。
しかしリオは怯まず前進する。それどころか彼は更に移動速度を上げてきた。
先に襲い掛かるのは風魔法。それは敵の脳髄をぶちまけようと大きな牙を突き立てる。
瞬間。彼は強く地を蹴り、体を真横に傾けて宙を舞う。
地面と平行に傾けられた体の下を鋭い刃が通過した。
更にそれは後衛にまで手を伸ばすが、同時に二人の前へ巨大な水の壁が姿を現す。
それは瞬く間に氷結し、硬度を増した防壁と化した。
衝突する刃。それは壁を大きく抉り抜くが、刃の勢いはそこで打ち消される。
がらがらと音を立てて崩れ落ちる壁。その先には無傷のクリスティーナとノアがいた。
その気配を背後に感じながらリアは静かに着地する。
だが彼が片脚を地面につけた直後、そこへ無数の氷の矢が降り注ぐ。
迫る無数の気配に気付き視線を持ち上げながらも彼はその場の状況を冷静に分析する。
(避けようと思えば全て避けられる。……が、彼女に武器を生成させる時間を作ってしまう)
ならばと選んだ選択は常人ならば到底不可能なもの。
リオはナイフを両手で握りしめながら直進した。
彼はナイフを巧みに扱う。迫る氷はその何本かが砕け散った。
だが残された槍の数は多い。それは腕や横腹を掠め、貫き、鮮血を散らす。
それでも彼は止まらない。
確かに地面を踏み抜いては、更に速度を上げて前進した。
回避は捨て、致命傷を与える攻撃のみを最低限振り払う。
本来ならば動きを鈍らせる要因の負傷も激痛も、彼には通用しない。開いた傍から塞がる傷と痛覚を無視するだけの目的が彼の無茶苦茶な前進を可能にさせた。
手足が貫かれようと、どれだけの激痛に苛まれようとも意識がある限り敵の殲滅に全力を注ぐ。そんな強い意志の下、彼はベルフェゴールの元へ辿り着いた。
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