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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
63-1.即席パーティー
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迷宮内を隈なく探しているのだろうか。
いや、探しているというにはあまりにも乱暴さを感じる揺れと轟音に改めて自分達が対峙すべき相手の脅威を認識する。
徐々に近づく轟音にクリスティーナが身構えていると、隣に立っていたリオが口を開く。
「追いつかれるまで少しだけ時間がありそうなので、可能な範囲で話し合いでもしておきましょうか」
「作戦を練るには時間が足りない気がするけどな」
「そうですね。ですからこの時間に出来るのは互いの役割を再認識する程度でしょう」
オリヴィエの指摘をリオは認める。
前衛と後衛、個々の戦闘スタイルの確認。確かにそれは重要なことだ。
特にオリヴィエとは面識が浅い上、クリスティーナやリオは彼の前で戦う姿を見せたことすらない。
言葉で聞くだけの物と実際に目にする物とはまた捉え方が異なるだろうが、事前に得られる味方の知識がゼロと一とでは大きな差がある。
それはオリヴィエ自身も察しているのだろう。リオの提案に頷いた彼は真っ先に告げた。
「僕の魔法は触れたものにしか効力を発揮しない。基本前衛が好ましいだろう。この魔法は一度見た者から警戒されやすいが、例え触れられなくとも僕が前に立っていることで牽制になる」
「オレは剣振るうことしか能がないし、後ろにいても出来ることないからなぁ。とはいえ正直体力が底を尽いてる、あまり役には立てないかもしれない。一応魔法も炎と土の適性はあるけど本当に基礎的なものしか扱えないな」
続いて剣を構えながらエリアスが答える。
疲労を訴えながらもその剣構えがぶれることはなく、限界を悟らせない姿勢はまさしく優秀な騎士の風格をしていた。
「私は後ろにいるわ。多少なら魔法での援護はしてあげられるでしょう」
「そうか、君は氷魔法が使えたね」
「ええ」
後ろから声が掛けられ、視線を向ければノアと目が合う。
「俺はこの場から動くことが出来ない。けれど魔法の支援ならできるだろう」
転移大結晶に片手を伸ばした姿勢のままノアは笑みを浮かべる。
その目は自信に満ちていた。
「無から有を生み出すよりも元から存在する物に手を加える方が労力は少ない。これは魔法にも通ずることだ。水魔法は単体では脅威になり得ない。けれど他属性の魔法と応用を利かせられる柔軟さで言えば一番と言えるだろう」
水と氷。個体か液体かという違いしかないそれらは六属性の中で一番近しい関係にあるものと言えるだろう。
クリスティーナは彼につられるように口角を上げる。
それは気丈さの滲む、愛らしさとは程遠い微笑であった。社交界では疎まれてきた気の強さを匂わせる笑みも、窮地に立たされている状況下で見せつけられれば他者を安心させる材料になり得る。
「貴方、自分は特別ではないと言っていたわね」
いや、探しているというにはあまりにも乱暴さを感じる揺れと轟音に改めて自分達が対峙すべき相手の脅威を認識する。
徐々に近づく轟音にクリスティーナが身構えていると、隣に立っていたリオが口を開く。
「追いつかれるまで少しだけ時間がありそうなので、可能な範囲で話し合いでもしておきましょうか」
「作戦を練るには時間が足りない気がするけどな」
「そうですね。ですからこの時間に出来るのは互いの役割を再認識する程度でしょう」
オリヴィエの指摘をリオは認める。
前衛と後衛、個々の戦闘スタイルの確認。確かにそれは重要なことだ。
特にオリヴィエとは面識が浅い上、クリスティーナやリオは彼の前で戦う姿を見せたことすらない。
言葉で聞くだけの物と実際に目にする物とはまた捉え方が異なるだろうが、事前に得られる味方の知識がゼロと一とでは大きな差がある。
それはオリヴィエ自身も察しているのだろう。リオの提案に頷いた彼は真っ先に告げた。
「僕の魔法は触れたものにしか効力を発揮しない。基本前衛が好ましいだろう。この魔法は一度見た者から警戒されやすいが、例え触れられなくとも僕が前に立っていることで牽制になる」
「オレは剣振るうことしか能がないし、後ろにいても出来ることないからなぁ。とはいえ正直体力が底を尽いてる、あまり役には立てないかもしれない。一応魔法も炎と土の適性はあるけど本当に基礎的なものしか扱えないな」
続いて剣を構えながらエリアスが答える。
疲労を訴えながらもその剣構えがぶれることはなく、限界を悟らせない姿勢はまさしく優秀な騎士の風格をしていた。
「私は後ろにいるわ。多少なら魔法での援護はしてあげられるでしょう」
「そうか、君は氷魔法が使えたね」
「ええ」
後ろから声が掛けられ、視線を向ければノアと目が合う。
「俺はこの場から動くことが出来ない。けれど魔法の支援ならできるだろう」
転移大結晶に片手を伸ばした姿勢のままノアは笑みを浮かべる。
その目は自信に満ちていた。
「無から有を生み出すよりも元から存在する物に手を加える方が労力は少ない。これは魔法にも通ずることだ。水魔法は単体では脅威になり得ない。けれど他属性の魔法と応用を利かせられる柔軟さで言えば一番と言えるだろう」
水と氷。個体か液体かという違いしかないそれらは六属性の中で一番近しい関係にあるものと言えるだろう。
クリスティーナは彼につられるように口角を上げる。
それは気丈さの滲む、愛らしさとは程遠い微笑であった。社交界では疎まれてきた気の強さを匂わせる笑みも、窮地に立たされている状況下で見せつけられれば他者を安心させる材料になり得る。
「貴方、自分は特別ではないと言っていたわね」
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