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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
53-2.滑空
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「本当にこっちでいいのか?」
「ああ。合流したい相手がいるからね」
ノアの指示で街とは反対の方角へ移動する青年。
彼は敢えて開けた道を避けて木々の生い茂る地点を通過していた。
時折太い枝に着地をしては次の木へ乗り移る。それを繰り返しながら一行は全身をする。
先程自分達を取り囲んでいた霧に比べればフロンティエール全体を覆う霧は優しいものだが、それでも視界が悪いことには変わらない。
クリスティーナ達が向かった方角へ移動している間、すれ違いを避けるべく周囲の気配を入念に探る必要があった。
しかし戦闘時程気を引き締める必要はなく移動も人任せな分、エリアスには幾分か心の余裕が生まれていた。
故に気配を探りながらも自分を抱えている青年の横顔を盗み見る。
「なあ。アンタ、もしかして少し前にフロンティエールの宿屋の前にいなかったか?」
髪色と空を飛ぶ魔法。それらに心当たりがあったエリアスはフロンティエールへ到着した日のことを思い出していた。
クリスティーナへ声を掛けた青年――雰囲気は大きく異なる気がするが、特徴は同じだ。
そう思い問うたエリアスであったが、声を掛けられた青年は横目で彼を一瞥しただけ。すぐに視線をそらしてしまう。
「さあ」
「え、リヴィ、もしかしてフロンティエールに滞在してるの?」
はぐらかしたのにも関わらず、更に深堀をしようとする悪意なき言葉に青年は深々と息を吐いた。
「違う。所用で来ただけだ。すぐ出るつもりだった……お前が森へ突っ走るところを見なければな」
「あ、見られてたんだ」
青年に親し気に声を掛けるノア。
しかし彼はその途中でその様子を静観しているエリアスの視線に気付き、話題を変えた。
「彼はオリヴィエ。俺とレミの友人だ。こっちはエリアス、最近知り合った友人」
「あ、どうも。おかげで助かったよ」
「別に。大したことはしてないし、気にしなくていい」
エリアスの礼には素っ気ない返事を返されるが、何か気を悪くしているといった様子はない。
元よりそういう振る舞い方をするタイプなのだろう。
「ところで、事の経緯については僕にも知る権利があるんじゃないか」
「あ、そうだね。ええと、何から話したものか……」
霧の異常発生についてから話すべきか、魔族の襲撃から話すべきか。
要点を整理しながらノアが考え込んでいた時、エリアスが何かに気付いたように下方を見る。
「あ、待て」
「お。もしかして見つけた?」
「多分。気配がある」
「了解」
進行方向から感じる気配。それは一人分だけであったが、常日頃からリオの気配が感じられないことをエリアスは体感している。
それに加えて異常な状態の森の中、迷いなく奥へ突き進む者がクリスティーナ達の外にいるとは考えにくい。
エリアスはそう考え、指示を出した。
その指摘に従い、オリヴィエは下降する。
小さな音を伴って着地する彼と、抱えられた二人。
エリアスの予想通り、その正面にはリオとクリスティーナが立っていた。
「ああ。合流したい相手がいるからね」
ノアの指示で街とは反対の方角へ移動する青年。
彼は敢えて開けた道を避けて木々の生い茂る地点を通過していた。
時折太い枝に着地をしては次の木へ乗り移る。それを繰り返しながら一行は全身をする。
先程自分達を取り囲んでいた霧に比べればフロンティエール全体を覆う霧は優しいものだが、それでも視界が悪いことには変わらない。
クリスティーナ達が向かった方角へ移動している間、すれ違いを避けるべく周囲の気配を入念に探る必要があった。
しかし戦闘時程気を引き締める必要はなく移動も人任せな分、エリアスには幾分か心の余裕が生まれていた。
故に気配を探りながらも自分を抱えている青年の横顔を盗み見る。
「なあ。アンタ、もしかして少し前にフロンティエールの宿屋の前にいなかったか?」
髪色と空を飛ぶ魔法。それらに心当たりがあったエリアスはフロンティエールへ到着した日のことを思い出していた。
クリスティーナへ声を掛けた青年――雰囲気は大きく異なる気がするが、特徴は同じだ。
そう思い問うたエリアスであったが、声を掛けられた青年は横目で彼を一瞥しただけ。すぐに視線をそらしてしまう。
「さあ」
「え、リヴィ、もしかしてフロンティエールに滞在してるの?」
はぐらかしたのにも関わらず、更に深堀をしようとする悪意なき言葉に青年は深々と息を吐いた。
「違う。所用で来ただけだ。すぐ出るつもりだった……お前が森へ突っ走るところを見なければな」
「あ、見られてたんだ」
青年に親し気に声を掛けるノア。
しかし彼はその途中でその様子を静観しているエリアスの視線に気付き、話題を変えた。
「彼はオリヴィエ。俺とレミの友人だ。こっちはエリアス、最近知り合った友人」
「あ、どうも。おかげで助かったよ」
「別に。大したことはしてないし、気にしなくていい」
エリアスの礼には素っ気ない返事を返されるが、何か気を悪くしているといった様子はない。
元よりそういう振る舞い方をするタイプなのだろう。
「ところで、事の経緯については僕にも知る権利があるんじゃないか」
「あ、そうだね。ええと、何から話したものか……」
霧の異常発生についてから話すべきか、魔族の襲撃から話すべきか。
要点を整理しながらノアが考え込んでいた時、エリアスが何かに気付いたように下方を見る。
「あ、待て」
「お。もしかして見つけた?」
「多分。気配がある」
「了解」
進行方向から感じる気配。それは一人分だけであったが、常日頃からリオの気配が感じられないことをエリアスは体感している。
それに加えて異常な状態の森の中、迷いなく奥へ突き進む者がクリスティーナ達の外にいるとは考えにくい。
エリアスはそう考え、指示を出した。
その指摘に従い、オリヴィエは下降する。
小さな音を伴って着地する彼と、抱えられた二人。
エリアスの予想通り、その正面にはリオとクリスティーナが立っていた。
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