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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
52-6.『怠惰』の魔族
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一方で濃霧の発生を合図に戦闘を中断させたエリアスの体も限界を迎えていた。彼は音を立て、半ば崩れ落ちるように両膝をつく。集中力が切れると同時に自覚した疲労を無視することは出来ないようで、今すぐにでも休息を取るべきだと体が限界を主張した。
すぐに距離を取らなければと頭ではわかっているのにも拘らず、鉛のように重い脚が意地でも動くことを拒絶する。
剣を地面に突き立てて荒く呼吸をするエリアスは、自身の数メートル先にある気配へ注意を向けた。
「……やっぱり人間って、可哀想。どれだけ頑張ってもわたし達より先に力尽きる」
何かが空を切る鋭い音。恐らくは例の大鎌を弄んでいるのだろう。
(まずい、ノアも動いてる気配がない)
せめてどちらかが動ける状況であれば肩を貸すなり抱えるなりして逃走を試みることもできる。
しかし今の状況では撤退も絶望的であった。
ゆっくりと距離を詰める気配を感じつつ、エリアスは何か活路はないものかと頭を働かせる。
だが彼が何かを見出すよりも先にベルフェゴールが地面を蹴った。
せめて攻撃を弾かなければ。
そんな考えから、しゃがみ込んだ体勢のまま乱暴に剣を構えるエリアス。だが、がむしゃらに剣を振るって勝てる相手でないことはエリアスが良く理解していた。
このままでは間違いなく自分の命は刈り取られる――。
そんな危機感の中、エリアスが唇を強く噛んだ時。
突如としてエリアスの横を走り抜ける影があった。
霧の中、僅かに視認できたのは黄橡色の髪。その持ち主はエリアスの肩に優しく触れたかと思えば、次の瞬間には前進して霧の中へ姿を消す。
膝をつく騎士の横を通り過ぎたのは一人の青年だった。
彼はそのまま真っ直ぐと突き進み、ベルフェゴールがエリアスと鉢合わせるよりも前に彼女の正面へ躍り出る。
「っ……!」
突如現れた三人目に目を見張りながらも大鎌を振るうベルフェゴール。
しかし青年はそれを簡単に避けてみせる。彼ははまるでダンスのステップを踏むかのような軽やかさで地面を蹴り、宙を舞った。
その足元を大きな刃は通過する。
風に乗る花弁のように柔らかな軌道を描いて着地した青年。
そしてベルフェゴールの懐に潜り込むと彼は相手の胴体目掛けて手を伸ばした。
その動きから魔法を警戒して仰け反るベルフェゴールであったが、如何せん互いの距離があまりにも近かった。
故に彼女は、相手の指先が自身の胸元を掠めるのを許してしまう。
それを確認した彼は覇気のある声で短く呟いた。
「――"跪け"」
瞬間。ベルフェゴールは目に見えない何かに押さえつけられるかのような不自然さで、その場に跪くこととなる。
すぐに距離を取らなければと頭ではわかっているのにも拘らず、鉛のように重い脚が意地でも動くことを拒絶する。
剣を地面に突き立てて荒く呼吸をするエリアスは、自身の数メートル先にある気配へ注意を向けた。
「……やっぱり人間って、可哀想。どれだけ頑張ってもわたし達より先に力尽きる」
何かが空を切る鋭い音。恐らくは例の大鎌を弄んでいるのだろう。
(まずい、ノアも動いてる気配がない)
せめてどちらかが動ける状況であれば肩を貸すなり抱えるなりして逃走を試みることもできる。
しかし今の状況では撤退も絶望的であった。
ゆっくりと距離を詰める気配を感じつつ、エリアスは何か活路はないものかと頭を働かせる。
だが彼が何かを見出すよりも先にベルフェゴールが地面を蹴った。
せめて攻撃を弾かなければ。
そんな考えから、しゃがみ込んだ体勢のまま乱暴に剣を構えるエリアス。だが、がむしゃらに剣を振るって勝てる相手でないことはエリアスが良く理解していた。
このままでは間違いなく自分の命は刈り取られる――。
そんな危機感の中、エリアスが唇を強く噛んだ時。
突如としてエリアスの横を走り抜ける影があった。
霧の中、僅かに視認できたのは黄橡色の髪。その持ち主はエリアスの肩に優しく触れたかと思えば、次の瞬間には前進して霧の中へ姿を消す。
膝をつく騎士の横を通り過ぎたのは一人の青年だった。
彼はそのまま真っ直ぐと突き進み、ベルフェゴールがエリアスと鉢合わせるよりも前に彼女の正面へ躍り出る。
「っ……!」
突如現れた三人目に目を見張りながらも大鎌を振るうベルフェゴール。
しかし青年はそれを簡単に避けてみせる。彼ははまるでダンスのステップを踏むかのような軽やかさで地面を蹴り、宙を舞った。
その足元を大きな刃は通過する。
風に乗る花弁のように柔らかな軌道を描いて着地した青年。
そしてベルフェゴールの懐に潜り込むと彼は相手の胴体目掛けて手を伸ばした。
その動きから魔法を警戒して仰け反るベルフェゴールであったが、如何せん互いの距離があまりにも近かった。
故に彼女は、相手の指先が自身の胸元を掠めるのを許してしまう。
それを確認した彼は覇気のある声で短く呟いた。
「――"跪け"」
瞬間。ベルフェゴールは目に見えない何かに押さえつけられるかのような不自然さで、その場に跪くこととなる。
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