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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
45-1.水遣いの応戦
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「アクア・スラッシュ」
ノアは杖を左から右へ振る。同時にその動きに連動したように、水の一線が二体の魔物へ命中した。
しかしそれ自体の威力には期待できない。水は刃物の様に鋭く成れないからだ。
打撃にもなり得るか怪しい攻撃は相手の顔を濡らす。
目に入った水に狼狽える魔物。そこに生まれた隙をノアは狙う。
彼はローブの裏に隠し持っていた小瓶を取り出し、片手のみでその栓を開ける。
中へ入っていたのは黄色い液体だ。
ノアはそれを正面へ振りかけ、更に杖でそれを指示した。
「アクア・スフィア」
無作為に飛んだ液体がビー玉程度の小さな球体を二つ作る。
そしてそれらが素早く魔物達の頭上へ飛んだかと思えば、突如弾け飛んで飛沫をまき散らす。
微細な雨粒と化したそれが魔物の頭へ、体へ付着した。
しかし次の瞬間、魔物が悲鳴を上げて地面の上を転げ回った。
降り注いだ液体が触れた箇所からは白い蒸気が発生し、魔物達の皮膚を僅かに溶かしていった。
そもそもの液体の量が僅かであった分、致命傷には及ばない。
しかし激痛を与えるに十分の範囲を負傷させた。暫くはまともに動くこともままならないだろう。
「よし」
ノアは空になった瓶を投げ捨てた。
そしてシモンの腕を掴み、半ば無理矢理その体を背負い込むと明るく言い放った。
「……逃げよう!」
ノアはシモンを背負って森を駆け抜ける。
「ノア! トドメ刺さねーのかよぉ!」
「心配しなくても暫く動けないよ。止めを刺す分の時間で逃げた方が早く街に着けるしね……!」
心配する声を宥める。
日頃は安全であるはずの範囲に魔物が現れた。それが先の二体だけではない可能性を考えれば、魔物と遭遇する前に少しでも早く森を抜けるべきだとノアは結論付けた。
ただでさえ水魔法は戦闘向きでないことに加え、今はシモンがいるのだ。シモンの安全を確保することが先決だろう。
「ノア、お前……」
早く街へ出たい一心で走るノアの頭上からシモンが声を掛ける。
振り向くことが出来ないので耳だけ傾けていると驚いたような呟きが届いた。
「……体力なさ過ぎじゃね?」
「うるさ……っなぁ!」
痛い所を衝かれ、シモンの言葉に思わず噛みつくノア。
しかしその言葉すら乱れた呼吸によって途切れてしまう。無念だ。
数分走っただけでノアの息は絶え絶えになってしまっていた。
年中屋内で研究に勤しむ者が多い魔導師の体力の平均値を舐めてはいけない。特にノアは魔導師の中でも自分の時間の殆どを研究に費やすようなタイプである為、魔導士間で相対的に見ても体力量は平均以下である。
子供相手であろうが即座に悟られてしまう程、ノアの体力のなさは壊滅的なのだ。
一度足を止めて膝に手を置く。
数秒間、ノアは呼吸を整えることに徹していたが、背後からの敵意に気が付くと咄嗟に身を翻した。
ノアは杖を左から右へ振る。同時にその動きに連動したように、水の一線が二体の魔物へ命中した。
しかしそれ自体の威力には期待できない。水は刃物の様に鋭く成れないからだ。
打撃にもなり得るか怪しい攻撃は相手の顔を濡らす。
目に入った水に狼狽える魔物。そこに生まれた隙をノアは狙う。
彼はローブの裏に隠し持っていた小瓶を取り出し、片手のみでその栓を開ける。
中へ入っていたのは黄色い液体だ。
ノアはそれを正面へ振りかけ、更に杖でそれを指示した。
「アクア・スフィア」
無作為に飛んだ液体がビー玉程度の小さな球体を二つ作る。
そしてそれらが素早く魔物達の頭上へ飛んだかと思えば、突如弾け飛んで飛沫をまき散らす。
微細な雨粒と化したそれが魔物の頭へ、体へ付着した。
しかし次の瞬間、魔物が悲鳴を上げて地面の上を転げ回った。
降り注いだ液体が触れた箇所からは白い蒸気が発生し、魔物達の皮膚を僅かに溶かしていった。
そもそもの液体の量が僅かであった分、致命傷には及ばない。
しかし激痛を与えるに十分の範囲を負傷させた。暫くはまともに動くこともままならないだろう。
「よし」
ノアは空になった瓶を投げ捨てた。
そしてシモンの腕を掴み、半ば無理矢理その体を背負い込むと明るく言い放った。
「……逃げよう!」
ノアはシモンを背負って森を駆け抜ける。
「ノア! トドメ刺さねーのかよぉ!」
「心配しなくても暫く動けないよ。止めを刺す分の時間で逃げた方が早く街に着けるしね……!」
心配する声を宥める。
日頃は安全であるはずの範囲に魔物が現れた。それが先の二体だけではない可能性を考えれば、魔物と遭遇する前に少しでも早く森を抜けるべきだとノアは結論付けた。
ただでさえ水魔法は戦闘向きでないことに加え、今はシモンがいるのだ。シモンの安全を確保することが先決だろう。
「ノア、お前……」
早く街へ出たい一心で走るノアの頭上からシモンが声を掛ける。
振り向くことが出来ないので耳だけ傾けていると驚いたような呟きが届いた。
「……体力なさ過ぎじゃね?」
「うるさ……っなぁ!」
痛い所を衝かれ、シモンの言葉に思わず噛みつくノア。
しかしその言葉すら乱れた呼吸によって途切れてしまう。無念だ。
数分走っただけでノアの息は絶え絶えになってしまっていた。
年中屋内で研究に勤しむ者が多い魔導師の体力の平均値を舐めてはいけない。特にノアは魔導師の中でも自分の時間の殆どを研究に費やすようなタイプである為、魔導士間で相対的に見ても体力量は平均以下である。
子供相手であろうが即座に悟られてしまう程、ノアの体力のなさは壊滅的なのだ。
一度足を止めて膝に手を置く。
数秒間、ノアは呼吸を整えることに徹していたが、背後からの敵意に気が付くと咄嗟に身を翻した。
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