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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

38-2.確かな進展

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 気を散らさせないようにという気遣いなのだろうか。エリアスとノアが声を潜めて談笑している中でクリスティーナとリオは今日も訓練に勤しむ。
 最初に比べれば自身の魔力の流れもわかるようになってきた。

 きっかけは初めて聖女の能力を使用した時のことを意識したことだ。

(あの時感じた、温もりが内側から手の先へ走る感覚)

 当時はほぼ無意識であった上、その後の忙しなさから気にすることもなかったが、あれこそが魔力の流れを明瞭に認識するということなのではないだろうか。

 そんな一つの見解を基に当時を思い出し、可能な限りその時の感覚をイメージする。
 結果、二週間で八割程度まで魔力の流れを認知できるようになったクリスティーナの読みは正しかったと言えるだろう。

 更に鮮明な記憶の再現さえできれば魔力の流れの完全な認識を可能とする日も近いのではないか。
 そんな期待を抱きながら、クリスティーナは訓練に励んでいた。

 目標が着実に近づいていることを自覚しているからか、ここ最近のクリスティーナの集中力は今まで以上に凄まじいものであった。

 魔晶石の材料を握りしめ、目を閉じる。
 集中しろと言い聞かせるように数度深い呼吸を繰り返した後、クリスティーナは息を止めた。

 石から自身の体温以上の仄かな暖かさを感じる。けれどこれは石自身が発しているわけではない。クリスティーナが注いでいる魔力によるものだ。

 普段氷魔法を使う時の感覚では駄目だ。あれは慣れ親しんだ魔法ではあるがもっと意識せず自然に生み出せるものでなければ。
 『あの時』感じた体の中心を巡るエネルギーの存在。それが決まった回路を辿って放出される感覚。

 意識を潜り込ませれば潜り込ませる程、感じる熱は明確に、温かさを増してクリスティーナの意識を迎え入れる。
 『暖かさ』に限界まで集中したクリスティーナが最初に認識したのはぼんやりと曖昧な回路の輪郭。不明瞭だが確かにエネルギーが全体を流れて指先から溢れているのだと認識が出来るもの。

 その解像度はゆっくり、ゆっくりと鮮明さを増していく。
 ぼやけた輪郭と一刹那の後に見せる完全な魔力の回路。ちかちかと明滅するように不明瞭な姿と明瞭な姿が意識の中で何度も移り変わる。
 そんな現象を繰り返していく内、徐々に明瞭な回路の輪郭を認識する頻度は高まり、やがて――。
 
(見えた――!)

 突如視界が晴れたかのように鮮明に感じ取った魔力の流れ。
 それは二度と不明瞭さを齎すことはなく、体を巡る温かさを明確に伝えてくれる。

 同時に、両肩を強く掴まれる気配があった。
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