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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

25-3.得も言われぬ不快感

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「はぁ、この数秒で何故そのような結論に……?」

 魔導師間だけでの問題かと高を括って聞き流していれば唐突に告げられる思いがけない提案。クリスティーナから出たのは気の抜けた声だった。

 教えを請える相手がいるとなればクリスティーナの懸念も随分軽減される為ありがたいことこの上ないのだが、如何せん彼が自ら名乗りを上げることに何のメリットがあるのかと疑問に思う。
 すると逆に質問の意図がよくわからないというような顔を返されてしまった。

「困ってるんでしょ? 俺に出来ることで助けられそうだから提案してるだけだけど……」
「それで貴方は何かを得られるのかしら。関係を築いていない相手からの無償の好意って一番信じるに値しないものだと思うのだけれど」
「え、そんなに言う……? 何か理由があった方がいい?」
「悪いな、元からこういう奴なんだ。生粋のお人好しっていうか、人たらしっていうか……とにかく他意はないよ」

 たじろぐノアの様子に痺れを切らしただろうか。レミが助け舟を寄越す。

「本当に余計な世話なら断ってくれてもいい。こちらとしては手違いで迷惑を掛けたわけだから何かしらの詫びになるようなことが出来るなら面子も救われるってものではあるけど」
「……二人の考えを聞かせて頂戴」

 自身が疑り深い質だということは自覚している。それ故に無意味な警戒によって最善の選択を逃す可能性についてやそれによるリスクについても理解していた。

 今までの安全圏での暮らしであればまだしも、現在は従者や騎士に命を預けなければならない状況である。主人の決定一つで状況が左右される可能性を孕んでいる旅路である以上、全てを独断で決定するのもいかがなものかと思ったのだ。

 クリスティーナの言葉にリオは予想通りの一言。

「俺はお嬢様の決定に従います」

 彼が何でもいいと言うときは本当に何でもいいのだ。
 それがただの無責任な発言ではなく、どのような選択をしてどのようなリスクが発生しても対処できるという絶対的な自信から来るものであることをクリスティーナは知っている。この不敬且つ仕事のできる従者は、何か問題があれば都度口をはさんでくれるはずだ。

 故にそれ以上彼には言及しない。代わりにエリアスへ視線を移して発言促す。
 視線を受けた騎士はやや緊張した面持ちになるがすぐにリオに続いて口を開いた。

「オレは割と賛成寄りかな。学院の生徒ってことは魔法のエキスパートだろうし、そういう人から直々に話聞けるのって結構貴重なんじゃないかなー、って思ったり」

 エリアスの言葉に何度も深く頷くノアの動きが何だか煩わしく感じる。
 しかしやはり彼の言動から悪意の類は感じられない。

 更にクリスティーナにとってとても都合の良い話だということもある。
 結局、クリスティーナはエリアスの意見に後押しされる形でノアの提案を受け入れることにした。
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