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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』

23-2.規格外

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***


 クリスティーナ達は早朝に宿を出てフォルトゥナ首都部へ向かっていた。
 目的は魔導師探しと物資調達である。

 旅を始めてから森での生活にも慣れ始めていたが、街の中の移動は襲撃の心配もない分落ち着けるのが魅力的だとクリスティーナは感じていた。
 麗らかな日差しを受ける街道を普段よりも緩やかな速度で馬車が進んでいく。馬車の揺れも心地よさを感じる程度のものだ。

 それに加えて今日が暖かく過ごしやすい気候だということがクリスティーナを眠りへ誘おうとしていた。
 小さく欠伸をすると、その様子を見ていたリオの笑う気配を向かいから感じる。

「少しお休みになられますか?」
「……いいわ。どの道そろそろ着くのでしょう? 宿でゆっくりするわ」
「そうですか」

 睡魔を誤魔化すようにクリスティーナは軽い魔法で花を模した氷を足元にいくつか咲かせてみせる。
 その精密さや見栄えの良さ、魔法に詠唱を使わない様にリオが感嘆の息を漏らして拍手をした。

「流石、魔法の扱いに長けていらっしゃいますね」
「……このくらいで褒められても嬉しくはないわ」
「お嬢様は自身に設けている目標が高すぎるのですよ。魔法学院でも十分に評価される才をお持ちでした」
「けれど、お姉様は全ての属性が使えるもの」

 自虐ではない。周りに自分より優れている人物が多かったという客観的な目線からの話だ。それに、無詠唱魔法は術者が優れている証と称されるが、クリスティーナが詠唱を必要としない魔法は簡易的且つ実用的ではない些細なもののみである。
 自身の才が役に立つような代物でない以上不必要に褒め称えられるのは居心地が悪かった。

 困らせたいわけではなかったのだが、クリスティーナの一言はリオを困らせるには十分だったらしい。彼は眉を下げて苦笑すると黙ってしまった。

 彼が世辞を述べているとは思っていない。ただ、自分より優れている人間を共に見てきた存在だからこそ彼の賞賛を心から喜ぶことが出来ない。他の家族のように突出しているわけではないことに後ろめたさを感じてしまう。

(……何故私なのかしら)

 秀でている者は身近に何人もいたのに、聖女などという面倒極まりない役回りだけが自分について回る。
 理不尽だと愚痴を零したくなってしまう。

 自分の置かれている状況でも心の内で呪ってやろうかと聖女にふさわしくないような邪なことを考え始めていた頃。突如馬車が停車した。
 荷台から見える景色から予測するに、首都部へ到着したわけではなさそうだ。
 更に何事かと身構えるリオとクリスティーナの耳にエリアスが何者かと言い争うような声が届く。
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