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第一章―イニティウム皇国 『皇国の悪女』
14-4.暗殺未遂容疑
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お茶の用意を終えた給仕を下がらせ、その場から離れる姿を見送りながら彼はテーブルに置かれたクッキーへと視線を落とした。
「クリスティーナ嬢、急な誘いに応じてくれた上にこのような手土産まで用意してくれたこと、感謝しよう」
「いいえ。こちらこそわざわざお気遣いいただき、この様な場をご用意くださりありがとうございます。洋菓子屋へ立ち寄る途中、建国祭を見て回ったのですが普段よりも活気に満ちた街の景色は新鮮でございました」
「休暇を楽しめていないのではというアリシアの心配はどうやら杞憂だったようだな。君もきちんと羽を伸ばせているようで安心したよ」
貴方様のせいで重要な休日が一日潰れたのですが、などとは口が裂けても言えまい。彼は恐らく良心でクリスティーナを招いてくれたのだ。
祭りへ参加しておいたことによって休日を謳歌している自分の姿を誤魔化すことの出来たクリスティーナはほっと胸を撫で下ろしつつ愛想笑いを続ける。
「さて、冷めてしまわないうちに頂いてしまおうか」
「はい、殿下」
三人がそれぞれティーカップに手を伸ばした時、それは起きた。
庭園から程よく離れた建物へ続く廊下から使用人たちのざわめきが広がる。
思わず手を止めたクリスティーナとアリシアはそちらへ視線を移し、フェリクスは腰を浮かせて騎士を呼びつける。
「何事だ」
「わかりません。確認して参ります」
皇太子から離れた騎士は騒ぎの出所を把握しようと建物へ向かうが、それと同時に彼の進行方向から庭園へ転がり出る別の騎士がいた。
彼は慌てた様子でフェリクスの前まで辿り着いて跪くと声を高らかに上げる。
「皇太子殿下、今すぐ皇宮へお戻りください」
「何があった。簡潔に話せ」
「はっ、皇宮の毒見役がたった今失神を起こし倒れました。こちらに運ばれたものに遅効性の毒が混入している可能性があります」
「なっ……」
その場の空気が凍り付く。誰もが顔を強張らせてテーブルに乗せられた洋菓子やティーポットを警戒の眼差しで見つめていた。
フェリクスはアリシアやクリスティーナがティーカップに口を付けていないことを確認しつつこめかみを押さえた。
「貴方様の命を狙った者の犯行である可能性、また体内に毒物が入り込んでいる可能性がございますのですぐに身の安全の確保と容態の確認を……」
「まだ誰も口を付けていない。犯人の特定は進んでいるのか」
「それが……毒見用の残りを鑑定したところ毒物はそちらのクッキーに混入していたとのことで……」
騎士は皿に盛られたクッキーを指さす。それはクリスティーナが手土産として皇太子へ献上したものだ。
その場にいた全員が一斉にクリスティーナを見た。
「クリスティーナ嬢、急な誘いに応じてくれた上にこのような手土産まで用意してくれたこと、感謝しよう」
「いいえ。こちらこそわざわざお気遣いいただき、この様な場をご用意くださりありがとうございます。洋菓子屋へ立ち寄る途中、建国祭を見て回ったのですが普段よりも活気に満ちた街の景色は新鮮でございました」
「休暇を楽しめていないのではというアリシアの心配はどうやら杞憂だったようだな。君もきちんと羽を伸ばせているようで安心したよ」
貴方様のせいで重要な休日が一日潰れたのですが、などとは口が裂けても言えまい。彼は恐らく良心でクリスティーナを招いてくれたのだ。
祭りへ参加しておいたことによって休日を謳歌している自分の姿を誤魔化すことの出来たクリスティーナはほっと胸を撫で下ろしつつ愛想笑いを続ける。
「さて、冷めてしまわないうちに頂いてしまおうか」
「はい、殿下」
三人がそれぞれティーカップに手を伸ばした時、それは起きた。
庭園から程よく離れた建物へ続く廊下から使用人たちのざわめきが広がる。
思わず手を止めたクリスティーナとアリシアはそちらへ視線を移し、フェリクスは腰を浮かせて騎士を呼びつける。
「何事だ」
「わかりません。確認して参ります」
皇太子から離れた騎士は騒ぎの出所を把握しようと建物へ向かうが、それと同時に彼の進行方向から庭園へ転がり出る別の騎士がいた。
彼は慌てた様子でフェリクスの前まで辿り着いて跪くと声を高らかに上げる。
「皇太子殿下、今すぐ皇宮へお戻りください」
「何があった。簡潔に話せ」
「はっ、皇宮の毒見役がたった今失神を起こし倒れました。こちらに運ばれたものに遅効性の毒が混入している可能性があります」
「なっ……」
その場の空気が凍り付く。誰もが顔を強張らせてテーブルに乗せられた洋菓子やティーポットを警戒の眼差しで見つめていた。
フェリクスはアリシアやクリスティーナがティーカップに口を付けていないことを確認しつつこめかみを押さえた。
「貴方様の命を狙った者の犯行である可能性、また体内に毒物が入り込んでいる可能性がございますのですぐに身の安全の確保と容態の確認を……」
「まだ誰も口を付けていない。犯人の特定は進んでいるのか」
「それが……毒見用の残りを鑑定したところ毒物はそちらのクッキーに混入していたとのことで……」
騎士は皿に盛られたクッキーを指さす。それはクリスティーナが手土産として皇太子へ献上したものだ。
その場にいた全員が一斉にクリスティーナを見た。
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