セカイノヒカリ

月影砂門

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第5話〜第一任務、決意〜

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 捕らえることが任務の終わりではない。任務は、捕らえてから国民たちの安全を確信できてようやく完遂したことになる。しかし、今回の任務で訪れたラフィール国は、国民が一斉に死亡するという不可解な事件により、死者のために弔いをすることが第一任務の仕上げとなる。重いだろうに砂輝は、クイとその他のアサシン、序に王を連れてお先に帰った。帰省しようとしたのだが、砂輝に「仕事はまだ終わっていないだろう」と言われてしまったのだ。さらには「死者が溢れる国で泊まりたくはないだろう」とまで言われた。つまりは、早く終わらせろということなのだ。


 「耀魔くん、毒とか必要なもの採った?」

 「はい」


 銀色の器のような容器に、砂輝が仕方が無いとばかりに綺麗にしてくれた遺体の内臓を全て取り出したものを入れていた。アースは思わず目を逸らしたくなった。なったではなく逸らした。兄とは違い、鳳魔も目を逸らしていた。医者は分かるが、その様子をじっと見ている修羅とシャオの神経を疑う。遺体の身体を開いているのだから。


 「逸らしてる場合じゃないよ?後で遺体全部処理するんだから」


 鳳魔は「そんなものは葬儀屋に任せろよ」と喉まで競り上がってきた言葉を飲み込んだ。


 「一旦遺体全部葬儀屋のところに持って行けばいっか」


 ・・・普通そうでしょ
 素人がよく遺体を処理しようと思ったな、と鳳魔は心のなかで突っ込んだ。どう考えてもその選択肢は出てこない。


 「ボスはよくご遺体を洗って差し上げねばって言ってたけど」

 「甘露で洗うと言っていたな」

 「蜜の味だそうですね」

 
 甘露とは、天と地と陰と陽が調和すると降り注ぐという神聖なる液体のこと。砂輝は、どこからそんなものを持ってくるのかと思うほどの量の甘露で満たすそうだ。ある意味最後の晩餐だ。


 「美味しいらしいよ、俺飲んだことないけど」

 「砂輝さまは甘露を手ずからお作りになるそうだが」

 「どうやって作るんですか?天の蜜だって言うのに」


 ますます砂輝の謎が深まってしまった。天が作る蜜を人間が生成してしまうという浮世離れし過ぎた能力。神が見ても目を疑うだろう。初めて見たときのシャオも当然の如く、自分の目を疑ったそうだ。


 「ボスは甘露じゃなくてアムリタって言ってるね。金色の雨。浄化する水。古来からそういう伝承があるんだよ」

 「そうなんですか」


 様々な伝承や古典、太古の書物などを読み漁っている修羅は、下手をすれば砂輝に次いで博識だと鳳魔は言った。砂輝が持って帰ってきた書物を一番に読むのは修羅で、砂輝も読んだあと感想を聞くのを楽しみにしているという。


 「砂輝さんも自分と話の会う人と会話をするのが楽しいのでしょうね。話が釣り合うのは太古の神か修羅さんだそうですし」


 修羅は神と肩を並べるほどの知識量だということらしい。それでも砂輝には劣るという。「長い間生きている故な」と知識のなかには経験値も含まれているのだ。百年ほどしか生きていない修羅とは経験の多さが違う。


 「さ、一旦帰ろう。葬儀屋に電話しとかないと」

 「葬儀屋さんは組織の人間なのですか?」

 「非正規だよ」


 長生きだからなのか、それともただ組織のボスだからなのかは定かではないが、砂輝は交友関係がかなり広い。葬儀屋の友人がいると思えば、他国の王と知り合いだったり、国際弁護士と仲が良かったりととにかく知り合い及び友人が多い。広く深くという関係を大切にしているという。


 「俺なんか友達ほとんどいないよ」

 「おや、意外です。ものすごく顔が広いものと」

 「よく言われるよ」

 「この男、こんな感じだが人見知りなのだぞ」


 アースが意外だとでも言うふうな顔をした。社交的に見えるがそれはあくまで本人がそう見せているだけだ。実際は、心を開いているようで閉じていることの方が大半だ。組織のうち本部の人間以外は信じていないし、客人が来たとなっては鳳魔と耀魔程ではないが、警戒心を剥き出しにする。


 「あぁ、誤解しないでね。君のことは信頼してるから。信頼してなかったら連れ出してないし」

 「そうですか。それはよかった」


 アースはホッとしたように微笑み呟いた。人の笑顔に見惚れてしまうなど、砂輝以来のことだ。守護天使は見目麗しい容姿をしているらしいとは聞いていたが、ここまでとは思わなかった。
 ・・・いや違うな。綺麗なだけじゃない
 アースの美しさは容姿だけではない。掛け離れた心の美しさだ。普通の人間ならば持ち合わせていない無垢故の美しさ。一つ目の任務で人の醜さを思い知らされたはずだ。人の死に嘆き悲しみ、死者の声を聞く。


 「ええっと、もしもしヨミさん?」

 『やぁやぁ修羅くん』


 ハスキーな声音と飄々とした口調の性別の判別がつかない人だ。


 『砂輝さんは既に来て予約してくれてあるから、問題ないよ。めっちゃ多いらしいじゃん』

 「そうなんだよ、五百人近くいる」

 『棺出しとくよ』


 ヨミという男はそう言うと、用意して待ってるからゆっくり来てねと重ねて告げて念話を断った。
 ヨミとの念話が終わる頃には、シャオが異空間に遺体を入れておいてくれた。防腐剤のような効果を持つ札を遺体に張った状態にしてあるため、遺体は数日間ならば腐らずに保たれる。札には名前が書いてあるが、その名前についてはアースが遺体から聞き出した。


 「じゃあすぐに帰ろう」

 「はい」


 シャオは異空間を維持してくれているため、鳳魔と耀魔がテレポートしてくれることになり、修羅たちはそれでスイレンにある葬儀屋に移動した。
 『葬儀屋ヨミ』と書かれた看板。ダークグレーで塗られたどこか温かみのある木壁の屋敷だった。


 「ごめんくださーい」

 「いらっしゃい。砂輝さんはもう来てるよ」


 屋敷から出てきたのは


 「え、修羅さん?」


 修羅にそっくりだが、どこからどうみても女性にしか見えない人だ。緩くウェーブがかかった髪を簪で一つに纏めて結い上げていた。黒を基調とした派手な衣を着崩した状態で羽織り、下は燃えるような真っ赤な単を着ていた。


 「俺の従兄弟なんだ」

 「あぁ、従兄弟さんなのですね」

 「俺と一緒に砂輝さんが受け入れてくれたんだけどね」

 「これが僕の部門というわけ」


 部門があるとはいえ、彼はあくまで非正規のメンバーであり、仕事は葬儀屋としての仕事のみだ。なぜ葬儀屋を目指そうと思ったのかは修羅にも分からない。


 「どうぞ、入って入って。早くご遺体洗ってあげないと」


 ヨミはそう言って修羅たちを屋敷に通した。
 お茶とまたしても茶菓子を嗜みながら優雅に寛いでいる砂輝が目に入り、耀魔がため息をついた。これが彼の夕食なのだ。


 「でも、今日はもう遅いし明日にしよっか。砂輝さんもそれでいいですか?」

 「あぁ、では手料理を振舞おう。何がいい」

 「うぅーんと、炊き込みご飯」

 「おぉいいね!」


 盛り上がる面々に、アースは首を傾げる。炊き込みご飯とはどういうものなのだろうか。和食なのか、と。「台所を借りるぞ」と言って裏に消えた。しかし、しばらくすると手に何かを持った状態で出てきた。


 「ほれ、シャオ。コンのご飯」

 「あぁ、あげですね。ありがとうございます。コン」


 コンはシャオが呼ぶまでもなく既に出てきており、油揚げを食べていた。しかも、狐ではなく子どもの姿で。その様子を砂輝が惚れ惚れとした様子で見つめていた。
 

 「よし、できた」


 テーブルに焼き魚とキュウリの梅和え。豆腐の味噌汁。炊き込みご飯が置かれた。炊き込みご飯の香りと、焼き魚の芳ばしい香りに食欲が湧く。アースは目をキラキラとさせてそれらを見つめていた。


 「炊き込みご飯はまだあるからな、お代わりできるぞ」

 「やったぁ!」


 お腹が空いていたこともあり、スイスイと平らげていく。夢中になって頬張る修羅たちに、砂輝は思わず吹き出した。


 「そんなに急がずともまだあるぞ」


 母親のような言葉を呟きながら、またしても茶菓子を頬張っていた。いい加減に茶菓子も飽きてきたなと考えながら、お茶を啜る。手本かのように上品に完璧なマナーで生菓子を口に放り込んでいく。
 茶菓子に飽きてくると、今度は様々な果物を切っていく。オレンジやグレープフルーツなどの柑橘系の果実や、苺やリンゴなど器にどんどんと盛っていく。


 「美味いのだがなぁ・・・」

 「そんだけ食べてたら飽きますよ」

 
 黙々と果物を口に放り込んでいく砂輝に修羅が突っ込む。魔力になる体質でなければ今頃何らかの病になっているだろう。栄養がしっかりと取れていない分、やはり免疫力は低下しており、風邪も引きやすい体質とはいえだ。


 「ねぇねぇ君がアースくん?」

 「はい、エデン・フィルアリアのアースと申します。昨日からお世話になっております」


 礼儀正しく名乗るアースに、そこまで固くならなくていいよ、と苦笑しながら告げた。


 「じゃあ僕も自己紹介を。僕は夜深修黎ヨミシュリ。葬儀屋をしているルミエール非正規だけど所属。よろしくね」


 葬儀屋に専念しているため、アースとはあまり任務で一緒になることはないが、このような死者が出た場合には彼が処理をしてくれる。彼が遺体を処理したあとは、死者の生前生きていた地に埋め、墓を立ててやる。墓を立てるのは砂輝である。


 「可愛いね」

 「はい?」

 
 可愛いものに目がない修黎は、アースをじっと見つめる。逆にアースの方が気まずくなってしまう。


 「お風呂沸かさないとね」

 「では私は片付けを」

 「手伝います」


 アースや砂輝が片付けをしている間に、修羅と鳳魔は任務の報告書の作成を始めた。


 「初めての任務はどうだった、アース」

 
 アースは、砂輝の言うどうだったの意味を図りかねていた。外の世界に出てきて初めての外国は、国民が一斉に殺されて全滅した国で、残っていたのは彼らを苦しめ続けた王とその側近のアサシンのみ。国民は不安だろうといざ行ってみれば、予想の範疇外。修羅たちも自分の常識が完全に覆されたと言っていた。


 「初任務にしてはかなりハードだったな」

 「いえ、経験にはなりましたよ」


 いきなり遺体を見せられるとはアースも思っていなかった。ハードといえば確かにハードだった。磔にされた遺体をいち早く見つけてしまったり、かと思えば守護天使だと言って狙われたり。


 「ご遺体の心を知ることが出来た。私の中では十分な成果です」

 「なるほど、今回の任務においては其方は悔いはないということか?」

 「クイさんたちの心がわからなかったことについては悔いが残ります」


 人を殺す者の心がわからない。アサシンとして命を奪う者の心をわかってあげられないとアースは言う。罪を犯す者の心を、犯していない者には分からないのは然るべきことだ。アースは天使であり真っ白で人の醜さをまだ理解し切れていない。その点では、健全な人間よりも理解することなど容易ではないだろうと砂輝は肯いた。


 「それは、私にもわからないな」

 「そうなんですか?」

 「罪を犯す者には、その者にしかない苦しみがある。智慧、私の弟子」


 弟子第二位の実力を誇る智慧。彼は罪を犯す者の心が多少分かるという。しかし、その気持ちがわかるというのも苦しいことだと言った。


 「彼はな、元々暗殺者なのだ」

 「暗殺教団?」

 「いや、闇だがまた別の組織だ。羅那の方も元々闇の組織の人間だった」


 アースはそれを聞いて目を見開いた。砂輝が誇る弟子のうち二人が闇の人間だったというのだから。しかし砂輝は、その二人を受け入れたのだ。


 「虚しくなったそうだ。罪を犯す自分が。人を殺してきた自分には生きる価値など一つもないと」

 「暗殺者が、それをあなたに言いに?」


 百五十年ほど前。修羅もまだ組織に入っていなかった頃に、智慧は砂輝の寺に助けを求めるように現れた。「私は罪を犯しました。だから、生きていく資格などありません。しかし、何故か生きたいと思う私がいるのです」と智慧はマシンガンのように言い放った。それを、砂輝は静かに聞いていた。罪人ならば間違いなく跪く寺院とその主を前にして、彼はただ助けを乞うた。
 第四位の弟子羅那も同じだ。「人を騙し、殺して生きてきた自分が罪を背負ってでも生きたいと願っているのです」二人はそうせざるを得なかった闇という世界に絶望したのだ。


 「人はな、罪を犯そうとも資格がある」

 「資格?」

 「罪を償うという資格が。その資格は、自分の愚かさや罪深さに気付けるものにしか与えられぬもの」


 窃盗を犯した者。壊した者。傷つけた者。殺人を犯した者。その者たち自身には決して資格はない。しかし、償うという資格はそれらの罪を認めること。愚かな自分を認めることで与えられる。


 「罪を償い生を全うする。それが智慧と羅那の覚悟。償いながらでも生きたいと願ったのだ」

 「その罰は?」

 「人を救うこと。奪ったならば、今度はその力を守るために、救うために使えと」


 死刑でもなく、牢屋でただ無情に過ぎる時を生きるのでもなく、人々を救いながら生きていく。それが罰。一見かなり甘い罰だ。しかし、彼らにとってはあまりにも難しいものだったのだ。殺すために使ってきた術を守るために使う。つまりは、殺さないように敵を倒さねばならない。


 「彼らは出家し、さらには武器を捨てた」

 
 武器とは己の半身ともいえる。智慧も羅那も、その半身を捨てて救うための道を選んだのだ。困難でしかないその罰を、己の罪を償うために。


 「ラグは剣をやめて楽器を使うようになったのだ。智慧はお分かりの通り、体術だが」

 「罪を認める・・・とても難しそうです。私・・・今日思ったのです。彼らの心は分からずとも、救える天使になりたいと」


 綺麗な微笑を浮かべるアースを図るように砂輝は見つめた。心がわからないならそれで構わない。しかしせめて、その心を救える者になりたい。アースは決意した。そして、救えなかったことに後悔する任務はしたくないと。


 「砂輝さん」

 「あぁ」

 「私・・・修羅さんのように強く、シャオさんのように優しく、鳳魔さんのように賢明な人を支えてあげられるメンバーでいたい」


 アースの言葉に砂輝が驚かされる番だった。修羅のように燃える炎のように強く、轟く雷鳴のように苛烈でもなく。シャオのように霊魂を包み込む優しさと、慈悲深い厳しさでもなく。鳳魔のように自分のすべきことを把握し賢明に遂行するのでもなく。そんな彼らを支える天使として第一部隊のメンバーとしてすべての任務を全うする。初めての任務で決意を固めたのだ。
 ・・・十分だ
 砂輝は心のなかで息を吐く。純粋に初めて出来た仲間を思う天使を試していた自分に、一種の嫌悪感を抱いた。試す必要も、図る必要もなかった。


 「済まないことをした。この任務で其方を第一部隊として配属するか、それとも守るべきものとして置いておくかを判断するつもりでいた」

 「おや、そうなのですか?」


 第一部隊として配属したあとも、修羅のもとで監視をしようとも考えていたほどだ。しかし、その必要など毛ほどもなかった。思わず自嘲の笑みを浮かべた。


 「二人とも、どんだけ長いこと洗い物してるんですか?」

 「何だ、もう終わっていたのではないですか」

 「秘密の話ですか?」


 丁度話題に上がっていた三人がひょっこり現れた。修羅だけ若干悪戯っぽい笑みを浮かべているのがアースは気になった。砂輝のほうは、気になるどころか察した。


 「聞いていたな、さては」

 「俺の地獄耳を忘れた訳じゃあないですよね?」

 「鳳魔が盗聴していましたし」


 筒抜けであったことに、アースが思わず赤面した。決意表明をしたのはアース本人のため、砂輝は何も恥ずかしいことはない。流石にすべて聞いているとなると、逆の意味で苦笑するしかない。修羅の地獄耳を忘れてしまっていたのは確かだが。

 
 「アースくん、改めて宜しくね」

 「は、はい」

 「じゃあ、正式にメンバーになったということで、風呂に入ろう」


 第一部隊の暗黙の了解として、正式にメンバーとして認められると全員で入るというものがあるのだ。それをする必要がどこにあるのかと思うのは、最早常識となった第一部隊以外全員の疑問であった。

 
 「ボス、一緒に入りません?」

 「いや、私は結構だ」


 砂輝は、一緒に入浴することについてはいつも断る。いつもの事なので、疑問に思うこともなくなっては来たが、アースだけは何故だろうと首を傾げた。

 
 「ヨミ、コーヒー牛乳用意しといてね」

 「はいはい」

 「コーヒー牛乳?」

 
 温泉で入浴のあと飲みたいもので上位に浮上してくるコーヒー牛乳は、第一部隊がお酒の代わりに乾杯するためのものであった。コーヒー牛乳というものについてはアースは当然知らないのだが。


 「賑やかだな」

 「砂輝さん賑やかなの嫌いじゃないでしょう?」

 「まぁそうだな。耀魔はよかったのか?」

 「はい、今遺体から採取した細胞から毒を検出しているところですので」


 耀魔は、キラルヴァから研究道具を持って来るなり科学捜査し始めたのだ。そして、砂輝というと、またしてもお茶菓子を食べ始めたのだった。好きとはいえ、ここまで来ると地獄だ。


 「しんどい・・・修黎、其方大食らいだったな。食ってくれ」

 「はーい」


 それまで砂輝がノツコツしながら食べていたお茶菓子をあっという間に平らげて言った。砂輝と耀魔は、どこに入っていくのだろうかと目を見張りながら見ていた。修羅も引くほど食べるということを思い出した。


 「今度修羅に回すか」

 「それがいいですよ。甘いもの好きだって言ってましたし」

 「エネルギー満タンになるとあの男はまず岩を壊しに行くからな。あの細い身体からどうすればあんな力が」


 小柄で程よく筋肉のついた肉体美を誇る鬼神修羅だが、その体型とは裏腹に破壊力ならば勝るものなどいないのではないかと思うほど強力だった。国一つ拳で破壊するほどの力を持つが、体重は五十キロほどしかない。


 「百七十センチに四十キロ代のあなたには言われたくないです」

 「アースくんと変わらないんじゃない?」

 「アースさんは論外ですよ。四十切ってますから」


 百五十六センチの身体で体重は僅かに三十八キロ。耀魔は密かに愕然としていた。自分たち双子と変わらない身長なのに。


 「其方らの武器は銃だからな。それなりに筋力は必要だろう」

 「まぁ、そうですけど」


 四人仲良く歓迎会をしているなか、砂輝たちはため息を吐くのだった。
 上がってくるなりコーヒー牛乳で乾杯し、疲れたのかさっさと寝所に入った四人に対してまたしてもため息。


 「こう見ると子どもなのだがな・・・」

 「僕もそろそろ寝ようかな。鳳魔、一緒に寝よう」

 「うん、いいよ」


 ・・・か、かわいい
 突然目をキラキラしだした砂輝に、修黎は苦笑した。双子が召喚獣ハムスターを間に置いて眠る姿。目の保養とでも言うかのように見守っていた。


 「経を唱えておこう。シャオが浄化していたそうなのでな」

 「それでなんだ。この屋敷が霊魂で溢れないのは」

 「流石に強力な浄化術だな」


 砂輝は、丁寧に経を唱えると、修黎が用意してくれていた寝所で休んだ。

 翌日、七人とコンで遺体を清め、修羅と修黎で火葬し、ラフィール国の地で彼らを埋めそれぞれの墓を立てた。その際も、砂輝がお経を唱え彼らの冥福を祈った。


 ── ── ── ── ── ──


 ラフィール国調査任務報告について

 我々第一部隊は、ラフィール国の調査任務についての調査結果及び結論をここに記す

 一、ラフィール国の全国民の死亡が確認された。死亡した国民についての状況については、別紙にて掲載
 二、死亡要因については、第二部隊鏡國の捜査により新毒物ラフールであることが確認された
 三、ラフィール国元王ジーフはインフィニティの幹部であることが本人の証言により確定した。さらに詳しいことは、情報部門の部員が尋問するとのこと
 四、ラフィール国元王の側近クイ率いるアサシン部隊を捕獲
 五、アサシン部隊の処分については国際協会が判断する予定である
 六、国民たちの処理についてはボス千蓮寺と葬儀屋夜深の指導のもと行われ、葬儀も無事終えた
 七、ラフィール国は事実上滅亡であるが、国民の墓が立てられているため、処分は不要
 八、アースを正式に第一部隊のメンバーとする
 
 以上報告とし、ラフィール国調査任務完遂とする

         第一部隊 
             隊長 暁修羅
                砂隠砂織                 
                鏡國鳳魔
                アース



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