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第91話 繋がり始める世界
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「凄いですわ、わたくしが乗せて頂いた時とは
まるで別の乗り物の様でございますね...
これ程の速さで移動しているというのに
全く地面の振動が伝わって来ません」
荷台の座席に座り、腰掛けをさすりながら
関心するフレイア
ฅ^₋ω₋^ฅ スヤァ
タマは最早定位置となった、御者をするゼロスの肩の上で
日に当たりながら心地よさそうに眠っている
「ふふ、アール村で貴方と別れた後
主に足回りと動力魔具を
少しばかり弄らせて貰ったのよ」
「何とまぁ...神々の御業が施されていたとは...
今この地上にはこの馬車を凌ぐ物は無いでしょう
最早これはプロメテウス様直々の加護を受けた
神々の馬車!
それ程の物に載せて頂ける等何て恐れ多い...」
対面するプロメに祈る様に腕を組むフレイア
「んー…まぁ、あながち間違いでもないわね
それより貴女も変わりない様で何よりだわ」
ニコリと爽やかな笑顔を向けるプロメ
「は、はいっ!気にかけて頂いて
至極光栄の極みで御座います!」
(あ、あのフレイアさんに全く動じる事無く
極々自然に受け流しています!
流石は大人のレディの対応なのですっ)
隣に座るセルヴィがプロメの毅然とした態度に
彼女に対する憧れを更に強くしていた
「それに貴族の屋敷からクッションやら
やたら高級そうな厚手の布とかも貰って来たしね
勝手にだけど、ニシシシ」
フレイアの隣に座るヴァレラが
小悪魔のように笑って言う
(ちょ、ヴァレラさんったら!
流石に神官《フレイア》さんの前で
そんな堂々と盗んだみたいな事はっ)
「まぁ...大公様もプロメテウス様の為に
また善行を積めるとは、朝の花束といい
素晴らしいですわ」
(あー…そういう思考ベクトルなんですね...)
段々と自分一人だけあたふたしているのが
馬鹿らしくなりセルヴィはしゅんとした
朝の花束とは、
早朝、貴族の屋敷を出立する際
両手いっぱいに抱えきれぬ程の大きな花束を
携えたあの貴族の男が、プロメを待ち構えていたのだ
どうやら彼は、本当に彼女に気があるらしい
当然そんな物を持って行っても、旅の邪魔になることは明白、
その場は一旦受け取って、
フレイアの機転で、バセリアにある
小さな孤児院を兼ねた教会に寄付する事となったのだ
「権力者、金持ちって言うのは
どうしてこうも、ドM男ばっかりなのかしらねー」
「どえむ...?聞いた事の無いお言葉ですが
察するにきっと敬虔な方を示す物なのでしょうね」
(うん、良い方によってはそうとも言えますね
因みに、それはヴァレラさんの偏見...って
もしかしたらヴァレラさんなら...あり得る...?)
セルヴィの頭の中に尖ったヒールで
財力に余裕のありそうな小太りの中年男性を
踏みつけながら両手に鞭的な物を構える
ヴァレラの絵が浮かぶ
「ちょっとあんた、さっきからワタワタしたり
落ち込んだり、ぼけーっとしたり何してんのよ
しかも今最後、何か失礼な事考えてたでしょ」
「えっ!?いえ、そんな、変な事なんて全然考えてないですよ!」
(す、鋭い...やはりふざけていても
ヴァレラさんの観察力は侮れません...)
ジト目でじーっとセルヴィを見つめるヴァレラ
「そ、それよりもこれから向かう
ミヤト帝国ってどんな国なんですかね?!
私もゼロスさんの刀の様な、特殊な技術を持つ国、
と言うのは聞いた事があるのですが
余りミヤト製の魔具は実際見る機会が無かったもので」
その場を濁して新たな話題をフレイアに振ってみるセルヴィ
「そうですねぇ...私も二度ほど
帝都には赴いておりますが
技術の他にも文化的にも独特な国で御座いますね
ブシと呼ばれる騎士の様な方々が国を治めています」
「ぇ、騎士って王様や国に仕えるモノではないのですか?
国によっては兵隊さんの様な魔物や国を守る為に
戦う事を生業の方ですよね...」
セルヴィがイメージが付かないと言う様子で頭を悩ませる
「そうですね、彼らは皆、ゼロス様の様な
刀と呼ばれる刀剣の武器を腰帯剣していますわ」
「そ、それって、外部に対して閉鎖的で、
武力による統治をしてるって事ですか...?」
「いいえ、そういう訳では御座いません
ブシの方々は民の規範となるべき存在
決して武力に物を言わせて民を
押さえつけるような事はしておりませんわ
帝都内で刀を使って民を切り捨てた、等とあれば
余程正当な理由がない限り、セップクと呼ばれる
自刃しなくてはならないという法も御座います」
「...」
二人の話を聞いて居たプロメの瞳孔が僅かに稼働する
が、その微々たる動きに気付く者は居らず、話が続く
「ひぅ...じ、自分で自害させられてしまうのですか...」
「それ程までに名誉を重んじる方々なのですよ
ですので恐らくセルヴィさんが
思い描かれている様な形では無いと思いますよ」
「う、う~ん...中々イメージが湧きません...」
「ふふっ、直接見て頂ければご納得頂けるかと
閉鎖的な理由も、他を拒絶すると言う敵意よりも
自分達の文化を守りたいが故の様でございますね」
「それなのに教会に対しては随分友好的なのね?」
そこまで話を聞いて居たヴァレラが率直に感想を口にする
「それについては申し訳ございません...
帝国と教会の関係が何時から始まったのか
何がきっかけだったのか、と言う部分については
わたくしの勉強不足で御座います」
フレイアが申し訳なさそうに、
深々と頭を下げる
「いやいや、気になったから聞いただけよ
別にあんたを責めてるんじゃないの
私だって自分の国の軍の構成員ではあったけれど
軍の成り立ちだとか他の部隊の事だとか
聞かれても解らないもの」
「ありがとうございます
貴女の様な心の寛大な方と出会えた事
ノヴァ神様に感謝致します」
再びその場で手を組み祈りをささげるフレイア
「大げさねぇ...何でもかんでも神様のおかげって訳じゃ、
ん?ノヴァってあんたの教会の神様の名前?」
話を途中にふと何か気がかりだった様子のヴァレラが問う
「はい、私共ノヴァ教会が崇める最高神ノヴァ様ですわ」
「ノヴァ教会ってっ...それあたしの時代にもあったよ!」
「「えっ?」」
フレイアと同じく隣で聞いて居たセルヴィも
同時に驚きの声を上げる
「前にあたしの時代にも、大きな、
それこそ国にすら影響力を持つ教会があったって
話したでしょ?それがノヴァ教会なのよ...
偶然?...いや、でも固有名詞が一致する事なんてある...?」
「た、確かに...ちょっと不自然ですよね...」
「少なくとも今までバルザックや
バセリアの街を見て来た限り
残念だけど私の時代の物が、この時代にそのまま
引き継がれてる形跡は見られなかった
それが教会だけって不自然よ」
それぞれ疑問点を口にながら情報を整理していく一同
その時顎に手を当てて考えていたフレイアが
ヴァレラに問いかける
「ヴァレラさん、貴女様の時代の暦を教えていただけませんか?」
「え?いいけど...AT歴1944年よ」
「「!!」」
ヴァレラの答えを聞いたセルヴィとフレイアが
驚きの反応を示す
「フレイアさんそれってもしかして...」
「えぇ...恐らくは...」
「ぇ?えっ?なんのことよ」
「わたくし達の暦で今はAC歴583年です」
「ええ、それは前にセルヴィに教えて貰ったわ」
「ACの読みはアフト・クアトルと読みます
AT歴の読みはアフト・トリア、では御座いませんか?」
「そ、そうだけど...何で知ってるのよ?」
「クアトルは古代言語で4を現しています
そしてトリアは...3
アフトクアトルは『4番目の世界』を意味します
そしてアフトトリアであれば...」
「『3番目の世界』...ですか...?」
セルヴィがその答えを口にする
「はい...まさか伝承は事実だったとは...」
「ちょ、ちょっと二人だけで話を進めないでよっ
何の事か私にはさっぱりなんだけど...」
「以前、セルヴィさんにはお話させて頂いた事が有るのですが
教会には古くから伝わる伝承が御座いまして
それはこの世界は神が創造した4番目の人の世界であり
過去に原初、神々の世界から始まり
1番目の人の世界は業
2番目の人の世界は背信
3番目の人の世界は因果により
それぞれ滅びてしまったと伝えられています...」
「その3番目があたしの居た時代だって言うの?
そんな事突然言われても、それに因果って何よ、」
「はい、ノヴァ教会の伝承によると
神は人間を産み出し英知を授けました
それが1番目の世界の人々です、しかし
その英知により奢り、慢心し、人の良心を失い
自ら産み出した物により滅びを迎えました
そこで神は新たに生み出した人間に力を授けました
それが2番目の世界の人々です
しかしあろうことか、何と強欲にも
その力を使い、人間は神に反旗を翻し
神々との激しい戦争の末、
遥か世界の果てと追放されてしまいました
それを見た神は、今度は英知と力を
半分ずつにして人間に与える事にしました
それが3番目の世界の人々です
しかし...今度は人は与えられた英知と力を掛け合わせ
より大きな力を求めようとしました
結果...分不相応な力を産み出した人々は
その力によって滅びる事となりました...
その3つの世界の結果に嘆いた神は
最低限の英知と力の欠片のみを与え
魔物に怯えて暮すか弱い人間を産み出しました
それが今のわたくし達であり
今の世は完全とは程遠い世界ですが
それは神が、人の為に、人々を守る為に与えた
試練であり、その試練を人自らの足で一歩一歩
歩むことによって真に神の寵愛を受ける事が出来る
という物で御座います」
「その3番目の自ら滅びた人類ってのがあたしらだって事...?」
「伝承とは時代を経て着色や改変される事が多く御座います
その通りとは限りませんが、
少なくとも教会の名や共通の年号あるという事は
わたくしには何か繋がっている様に思えます」
「...」
ばかばかしい、と一蹴したい衝動に駆られるヴァレラだったが
確かに情報を整理していくと偶然だ、とも
割り切れぬのもまた事実だった
(敵国が開発した新型爆弾が投下されて
敵も味方も、地上は皆滅びてるって話も...)
冷凍カプセルで眠りに着く前に地下シェルターで
将校達が話していた噂話を思い返す
—分不相応な力を産み出した人々は
その力によって滅びる事となりました—
曖昧な伝承や言葉から
こじ付けや解釈など幾らでも出来る
本当に?
本当に偶然だと言い切れるのか?
思考をフルに回転させるヴァレラだが
結論は出ない
その時対面するセルヴィが何かに気付いた様な顔をする
「もしかして...亜人の方々に伝わる方の伝承は...
2番目の世界を指し示してるのでは...
凄まじい力を持つ亜人の勇者達と神々の戦いがあったと...」
確かにその通りだ、情報と完全に符合する
ならば亜人達の話はその人々側からの視点となる
ならば、教会側に伝わる伝承とはだれが残したのか、
神が本当に居るとでもいうのだろうか?
少なくとも自分の時代にそんな物は居なかった
もしもそんな者が居るなら、あんな世界には成っていない
ヴァレラの思考が駆け巡る
ここに来て何かが繋がり始めている気がする
「それに...バセリアの地下の映像で
あの人が言っていた言葉にも
NOVAと...」
「はい、そこまで」
セルヴィが更に言いかけたその時
黙って聞いて居たプロメが話を差し止めた。
「現時点で答えを出すにはまだ早すぎるわ
それ以上は推測ではなく憶測よ、
憶測の状態で結論を急ぐと物の見方が歪曲して
現実に対処出来なくなるわよ」
「は、はいっ」
「そうね、考えても答えの無い事は考えても仕方ない
って自分で言っておきながら、ダメね」
「皆様の求める答えが、これから向かう
帝国にある事を願っておりますわ」
「さてさて腹が減っては戦は出来ぬ!
屋敷から貰って来た食材がダメにならない内に
食べちゃいましょ!」
「ちょ、ヴァレラさんさっき
昼食取ったばかりじゃないですか!
まだお日様は高いですよっ」
「食べれる時に食べる!これ大事!」
各々思考を中断し、再び馬車は賑やかさを取り戻す
そんな中プロメはただ前を向き続けるゼロスに対し
口を動かさず通信を送る
『私達が眠りに着いてからこの世界で何があったのか
パズルのピースは揃いつつある...
そしてその最後のピースは恐らくあの声の主が...』
『ああ』
『そしてもしもその推測が正しければ
彼女達は...いえ、この世界の人々は皆...』
『...それこそ憶測だ』
『そうね、
ふふ...まさか貴方に注意されるとはね』
『...』
『無茶しちゃ駄目よ?』
『...善処する』
プロメは溜息を一つはきながら
僅かに微笑み、ゆっくりと瞳を閉じる
まるで別の乗り物の様でございますね...
これ程の速さで移動しているというのに
全く地面の振動が伝わって来ません」
荷台の座席に座り、腰掛けをさすりながら
関心するフレイア
ฅ^₋ω₋^ฅ スヤァ
タマは最早定位置となった、御者をするゼロスの肩の上で
日に当たりながら心地よさそうに眠っている
「ふふ、アール村で貴方と別れた後
主に足回りと動力魔具を
少しばかり弄らせて貰ったのよ」
「何とまぁ...神々の御業が施されていたとは...
今この地上にはこの馬車を凌ぐ物は無いでしょう
最早これはプロメテウス様直々の加護を受けた
神々の馬車!
それ程の物に載せて頂ける等何て恐れ多い...」
対面するプロメに祈る様に腕を組むフレイア
「んー…まぁ、あながち間違いでもないわね
それより貴女も変わりない様で何よりだわ」
ニコリと爽やかな笑顔を向けるプロメ
「は、はいっ!気にかけて頂いて
至極光栄の極みで御座います!」
(あ、あのフレイアさんに全く動じる事無く
極々自然に受け流しています!
流石は大人のレディの対応なのですっ)
隣に座るセルヴィがプロメの毅然とした態度に
彼女に対する憧れを更に強くしていた
「それに貴族の屋敷からクッションやら
やたら高級そうな厚手の布とかも貰って来たしね
勝手にだけど、ニシシシ」
フレイアの隣に座るヴァレラが
小悪魔のように笑って言う
(ちょ、ヴァレラさんったら!
流石に神官《フレイア》さんの前で
そんな堂々と盗んだみたいな事はっ)
「まぁ...大公様もプロメテウス様の為に
また善行を積めるとは、朝の花束といい
素晴らしいですわ」
(あー…そういう思考ベクトルなんですね...)
段々と自分一人だけあたふたしているのが
馬鹿らしくなりセルヴィはしゅんとした
朝の花束とは、
早朝、貴族の屋敷を出立する際
両手いっぱいに抱えきれぬ程の大きな花束を
携えたあの貴族の男が、プロメを待ち構えていたのだ
どうやら彼は、本当に彼女に気があるらしい
当然そんな物を持って行っても、旅の邪魔になることは明白、
その場は一旦受け取って、
フレイアの機転で、バセリアにある
小さな孤児院を兼ねた教会に寄付する事となったのだ
「権力者、金持ちって言うのは
どうしてこうも、ドM男ばっかりなのかしらねー」
「どえむ...?聞いた事の無いお言葉ですが
察するにきっと敬虔な方を示す物なのでしょうね」
(うん、良い方によってはそうとも言えますね
因みに、それはヴァレラさんの偏見...って
もしかしたらヴァレラさんなら...あり得る...?)
セルヴィの頭の中に尖ったヒールで
財力に余裕のありそうな小太りの中年男性を
踏みつけながら両手に鞭的な物を構える
ヴァレラの絵が浮かぶ
「ちょっとあんた、さっきからワタワタしたり
落ち込んだり、ぼけーっとしたり何してんのよ
しかも今最後、何か失礼な事考えてたでしょ」
「えっ!?いえ、そんな、変な事なんて全然考えてないですよ!」
(す、鋭い...やはりふざけていても
ヴァレラさんの観察力は侮れません...)
ジト目でじーっとセルヴィを見つめるヴァレラ
「そ、それよりもこれから向かう
ミヤト帝国ってどんな国なんですかね?!
私もゼロスさんの刀の様な、特殊な技術を持つ国、
と言うのは聞いた事があるのですが
余りミヤト製の魔具は実際見る機会が無かったもので」
その場を濁して新たな話題をフレイアに振ってみるセルヴィ
「そうですねぇ...私も二度ほど
帝都には赴いておりますが
技術の他にも文化的にも独特な国で御座いますね
ブシと呼ばれる騎士の様な方々が国を治めています」
「ぇ、騎士って王様や国に仕えるモノではないのですか?
国によっては兵隊さんの様な魔物や国を守る為に
戦う事を生業の方ですよね...」
セルヴィがイメージが付かないと言う様子で頭を悩ませる
「そうですね、彼らは皆、ゼロス様の様な
刀と呼ばれる刀剣の武器を腰帯剣していますわ」
「そ、それって、外部に対して閉鎖的で、
武力による統治をしてるって事ですか...?」
「いいえ、そういう訳では御座いません
ブシの方々は民の規範となるべき存在
決して武力に物を言わせて民を
押さえつけるような事はしておりませんわ
帝都内で刀を使って民を切り捨てた、等とあれば
余程正当な理由がない限り、セップクと呼ばれる
自刃しなくてはならないという法も御座います」
「...」
二人の話を聞いて居たプロメの瞳孔が僅かに稼働する
が、その微々たる動きに気付く者は居らず、話が続く
「ひぅ...じ、自分で自害させられてしまうのですか...」
「それ程までに名誉を重んじる方々なのですよ
ですので恐らくセルヴィさんが
思い描かれている様な形では無いと思いますよ」
「う、う~ん...中々イメージが湧きません...」
「ふふっ、直接見て頂ければご納得頂けるかと
閉鎖的な理由も、他を拒絶すると言う敵意よりも
自分達の文化を守りたいが故の様でございますね」
「それなのに教会に対しては随分友好的なのね?」
そこまで話を聞いて居たヴァレラが率直に感想を口にする
「それについては申し訳ございません...
帝国と教会の関係が何時から始まったのか
何がきっかけだったのか、と言う部分については
わたくしの勉強不足で御座います」
フレイアが申し訳なさそうに、
深々と頭を下げる
「いやいや、気になったから聞いただけよ
別にあんたを責めてるんじゃないの
私だって自分の国の軍の構成員ではあったけれど
軍の成り立ちだとか他の部隊の事だとか
聞かれても解らないもの」
「ありがとうございます
貴女の様な心の寛大な方と出会えた事
ノヴァ神様に感謝致します」
再びその場で手を組み祈りをささげるフレイア
「大げさねぇ...何でもかんでも神様のおかげって訳じゃ、
ん?ノヴァってあんたの教会の神様の名前?」
話を途中にふと何か気がかりだった様子のヴァレラが問う
「はい、私共ノヴァ教会が崇める最高神ノヴァ様ですわ」
「ノヴァ教会ってっ...それあたしの時代にもあったよ!」
「「えっ?」」
フレイアと同じく隣で聞いて居たセルヴィも
同時に驚きの声を上げる
「前にあたしの時代にも、大きな、
それこそ国にすら影響力を持つ教会があったって
話したでしょ?それがノヴァ教会なのよ...
偶然?...いや、でも固有名詞が一致する事なんてある...?」
「た、確かに...ちょっと不自然ですよね...」
「少なくとも今までバルザックや
バセリアの街を見て来た限り
残念だけど私の時代の物が、この時代にそのまま
引き継がれてる形跡は見られなかった
それが教会だけって不自然よ」
それぞれ疑問点を口にながら情報を整理していく一同
その時顎に手を当てて考えていたフレイアが
ヴァレラに問いかける
「ヴァレラさん、貴女様の時代の暦を教えていただけませんか?」
「え?いいけど...AT歴1944年よ」
「「!!」」
ヴァレラの答えを聞いたセルヴィとフレイアが
驚きの反応を示す
「フレイアさんそれってもしかして...」
「えぇ...恐らくは...」
「ぇ?えっ?なんのことよ」
「わたくし達の暦で今はAC歴583年です」
「ええ、それは前にセルヴィに教えて貰ったわ」
「ACの読みはアフト・クアトルと読みます
AT歴の読みはアフト・トリア、では御座いませんか?」
「そ、そうだけど...何で知ってるのよ?」
「クアトルは古代言語で4を現しています
そしてトリアは...3
アフトクアトルは『4番目の世界』を意味します
そしてアフトトリアであれば...」
「『3番目の世界』...ですか...?」
セルヴィがその答えを口にする
「はい...まさか伝承は事実だったとは...」
「ちょ、ちょっと二人だけで話を進めないでよっ
何の事か私にはさっぱりなんだけど...」
「以前、セルヴィさんにはお話させて頂いた事が有るのですが
教会には古くから伝わる伝承が御座いまして
それはこの世界は神が創造した4番目の人の世界であり
過去に原初、神々の世界から始まり
1番目の人の世界は業
2番目の人の世界は背信
3番目の人の世界は因果により
それぞれ滅びてしまったと伝えられています...」
「その3番目があたしの居た時代だって言うの?
そんな事突然言われても、それに因果って何よ、」
「はい、ノヴァ教会の伝承によると
神は人間を産み出し英知を授けました
それが1番目の世界の人々です、しかし
その英知により奢り、慢心し、人の良心を失い
自ら産み出した物により滅びを迎えました
そこで神は新たに生み出した人間に力を授けました
それが2番目の世界の人々です
しかしあろうことか、何と強欲にも
その力を使い、人間は神に反旗を翻し
神々との激しい戦争の末、
遥か世界の果てと追放されてしまいました
それを見た神は、今度は英知と力を
半分ずつにして人間に与える事にしました
それが3番目の世界の人々です
しかし...今度は人は与えられた英知と力を掛け合わせ
より大きな力を求めようとしました
結果...分不相応な力を産み出した人々は
その力によって滅びる事となりました...
その3つの世界の結果に嘆いた神は
最低限の英知と力の欠片のみを与え
魔物に怯えて暮すか弱い人間を産み出しました
それが今のわたくし達であり
今の世は完全とは程遠い世界ですが
それは神が、人の為に、人々を守る為に与えた
試練であり、その試練を人自らの足で一歩一歩
歩むことによって真に神の寵愛を受ける事が出来る
という物で御座います」
「その3番目の自ら滅びた人類ってのがあたしらだって事...?」
「伝承とは時代を経て着色や改変される事が多く御座います
その通りとは限りませんが、
少なくとも教会の名や共通の年号あるという事は
わたくしには何か繋がっている様に思えます」
「...」
ばかばかしい、と一蹴したい衝動に駆られるヴァレラだったが
確かに情報を整理していくと偶然だ、とも
割り切れぬのもまた事実だった
(敵国が開発した新型爆弾が投下されて
敵も味方も、地上は皆滅びてるって話も...)
冷凍カプセルで眠りに着く前に地下シェルターで
将校達が話していた噂話を思い返す
—分不相応な力を産み出した人々は
その力によって滅びる事となりました—
曖昧な伝承や言葉から
こじ付けや解釈など幾らでも出来る
本当に?
本当に偶然だと言い切れるのか?
思考をフルに回転させるヴァレラだが
結論は出ない
その時対面するセルヴィが何かに気付いた様な顔をする
「もしかして...亜人の方々に伝わる方の伝承は...
2番目の世界を指し示してるのでは...
凄まじい力を持つ亜人の勇者達と神々の戦いがあったと...」
確かにその通りだ、情報と完全に符合する
ならば亜人達の話はその人々側からの視点となる
ならば、教会側に伝わる伝承とはだれが残したのか、
神が本当に居るとでもいうのだろうか?
少なくとも自分の時代にそんな物は居なかった
もしもそんな者が居るなら、あんな世界には成っていない
ヴァレラの思考が駆け巡る
ここに来て何かが繋がり始めている気がする
「それに...バセリアの地下の映像で
あの人が言っていた言葉にも
NOVAと...」
「はい、そこまで」
セルヴィが更に言いかけたその時
黙って聞いて居たプロメが話を差し止めた。
「現時点で答えを出すにはまだ早すぎるわ
それ以上は推測ではなく憶測よ、
憶測の状態で結論を急ぐと物の見方が歪曲して
現実に対処出来なくなるわよ」
「は、はいっ」
「そうね、考えても答えの無い事は考えても仕方ない
って自分で言っておきながら、ダメね」
「皆様の求める答えが、これから向かう
帝国にある事を願っておりますわ」
「さてさて腹が減っては戦は出来ぬ!
屋敷から貰って来た食材がダメにならない内に
食べちゃいましょ!」
「ちょ、ヴァレラさんさっき
昼食取ったばかりじゃないですか!
まだお日様は高いですよっ」
「食べれる時に食べる!これ大事!」
各々思考を中断し、再び馬車は賑やかさを取り戻す
そんな中プロメはただ前を向き続けるゼロスに対し
口を動かさず通信を送る
『私達が眠りに着いてからこの世界で何があったのか
パズルのピースは揃いつつある...
そしてその最後のピースは恐らくあの声の主が...』
『ああ』
『そしてもしもその推測が正しければ
彼女達は...いえ、この世界の人々は皆...』
『...それこそ憶測だ』
『そうね、
ふふ...まさか貴方に注意されるとはね』
『...』
『無茶しちゃ駄目よ?』
『...善処する』
プロメは溜息を一つはきながら
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阿部敏丈
SF
第一次ボーグ侵攻、ウルフ359の戦いの直前、アルベルト・フォン・ハイゼンベルク中佐率いるクロノ・コルセアーズはハンソン提督に秘密任務を与えられる。
これはスタートレックの二次作品です。
今でも新作が続いている歴史の深いSFシリーズですが、自分のオリジナルキャラクターで話を作り本家で出てくるキャラクターを使わせて頂いています。
新版はモリソンというキャラクターをもう少し踏み込んで書きました。
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