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75 電磁障害 ジャミング
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「あー、肉が食べたいー」
「亜人さん達から頂いたお肉料理、おいしかったですねー
どうやったらお肉をあんなに柔らかく調理できるのでしょう?」
亜人特区、ゼロ村を出立して4日
既に亜人達から貰った料理の殆んどは、2日目に平らげてしまっていた
それでもまだ保存の利く料理や、当初から積んでいた食料もあり
通常の移動であれば決して悪い食料事情ではないのだが
人間一度甘い汁を吸ってしまうと中々に依存してしまうものであった
「しかしあんた、良くあんな話納得出来るわね」
「何がだ?」
ヴァレラが銃をクルクルと指に絡ませ
遊びながら御者席に座るゼロスに問う
「伝承の話よ、神様がどうとか、魂が憑依だとか
正直オカルト的、理解の向こう側な話よ
あんたらなんか、あたしらより
もっと進んだ文明から来たのに
まさか神様は証明されてる、とかは流石にないわよね?」
「宗教は有るが、科学的に神が確認された例は無い」
「そう、ちょっと安心したわ」
「君らの使う魔法という技術も含め
俺達には理解不能な技術だ
しかし理解は出来ずともそこにある、それは事実だ
従って魔法という物が有るのなら
それが何なのか今の俺達に定義できないだけで
神や魂と呼ばれる物も”ある”のだろう」
「ふぅん...あんたって何処までもリアリストなのね」
「あら、リアリストというのは総じてロマンチストでもある物よ?
理想という妄想は現実無くして、現実は理想無くして足りえないもの
二人の間に掛けていたプロメが話に加わる
「人が機械に哲学を説かれる時代も十分現実離れした世界よね...」
「そういう事、
常識や概念、そして技術なんて時代と共に目まぐるしく変化する物よ
しかもこの時代は最早別世界と呼べるほど時の流れを経た地
私達には解らない事だらけだけど
まずは事実として受け止める他ないわね」
「あんたでも匙を投げる事はあるのね、」
「持てる状況から最大限推測はするけれど
解らないものは解らないわ、それこそ”神様”じゃないもの」
「私達の村では神様になってもらいましたけどね、ふふふ」
横からセルヴィがアール村での出来事を思い出す
「もう、セルヴィちゃんも意外と意地悪なのね、」
プロメが少しだけ頬を膨らませていじけて見せる
「あっ、いやそんなつもりじゃなくてっ!」
「ふふっ、冗談よ」
「むぅ、プロメさんには叶わないのです」
おどけて見せたと思えば
常に何処か、大人の余裕を持つプロメに対し
憧れのレディ像を重ねるセルヴィは
その道のりの果てしなさに落胆する
「ところで村で神様って何の話?」
「えっと、それはですね、まだバルザックの街に行く前に...」
そうして馬車は賑やかなまま、一行は順調に旅路を進む
———— 一方その頃 —————
バセリア王国から北東に約80㎞ 都市国家デルゼン
その周囲を何枚もの鉄製の板を貼り付けた様な外壁で被い
都市内部では無数の巨大な歯車が蠢く 街の至る所から伸びた無数の煙突からは
黒煙が立ち昇っている
排気や油の匂いを含む淀んだ空気が流れる街の一角
人気のない薄暗い路地裏で
一人の、まだ若い青年と見られる男が
地面にうつ伏せで倒れていた
その背の中央、やや左側に
こぶし大の赤黒い穴を空け
その周囲には血溜まりを作る
ピクリとも体は動かない
青年は完全に息絶えている
そのすぐ後ろに、血だまりに両足を浸け
青年の亡骸を見下ろす
ローブに身を包んだ少女が一人
そのフードから覗かせる顔は
あの皇都ノヴァスの大聖堂にて
聖少女と呼ばれていた少女だった
ピチャ...ピチャ...
そのローブの裾から僅かに見せる細い手の先は
真っ赤に染まり、そこから雫を血だまりに垂らす
その瞳には何の感情も宿さず、
ただただ、動かなくなった肉の塊を見下ろしている
するとその瞳が一瞬何かに反応し
視線を前に転がるモノから虚空へと移すと
「はい...
はい...
つい先ほど目標の変異種、1体処理完了致しました」
そのまま虚空に向けて一人、何者かに向けて話し始める
「はい、こちらでも先程一瞬だけですが、反応を検知致しました
位置からするに南西の王都バセリアからと思われます
しかし、あの都市の地下...
かの施設と共にまだ装置が稼働しております
私以外の使徒では近づく事は叶わぬでしょう
このまま単独にて先行致します、
はい、お任せください、必ず変異種を探し出し排除致します
...は、」
淡々と話していた少女の表情が僅かに驚きを孕む
「はい、直ちに!...データ受信致しました
これは...神話の時代の...しかしまさかそんな事が...
い、いえ、決してそのような事はっ!
はい、留意致します、ご憂慮の程痛み入ります、
では早速次の任務を開始致します、では」
話し終えた直後、少女が再び
目の前に転がるモノに目を向ける
そして手をかざすと次の瞬間、青色の炎が巻き起こり
10秒とかからずに少女前には黒くすすけた痕が残るのみとなっていた
少女は静かにその場から振り返り
狭い路地裏を大通りに向け歩き始め
今一度そのフードを目深に被りなおす
———————————————————
遠くの街で凄惨な事件が起こった一方で
ゼロス一行の馬車は順調に、歩みを止めることなく
バセリア王都へと近づいていた。
「~と言う事があって、プロメさんのおかげで
村も人達も難民の方々も皆助けて頂いたのですっ!」
「なるほどねぇ、しっかし相変わらずエグイ事するわね...
衛星軌道上からの砲撃で山一つ吹き飛ばすって、
その気になれば世界征服なんてあんた一人簡単じゃないの...」
「おほほ、乙女の嗜みですわ」
「皆、目標まで間もなくの様だ」
丁度アール村での出来事を話し終えた頃
前に座るゼロスが荷台のメンバーにそう告げた
それを受け、ヴァレラとセルヴィが荷台から正面を覗くと
先には分かれ道となっており、そこには
【この先バセリア王都力場圏内】
<↑バセリア王都>
<←王都通信街>
と看板が添えられていた
そのまま馬車は目的地である王都へと直進する
分かれ道の先には、小さな村位の規模の
施設群が遠目に見える
まるで針山のように
数多くの細長い造形物が突き出して居るのが特徴的で
その中央には特に一際大きな鉄塔が立てられている
「セルヴィちゃん、あの沢山突き出してるのって
ここから何かわかる?」
プロメがセルヴィに尋ねる
「はい、あれは通信魔具の送受信の基部ですね、
ここからだと種類までは解りませんが
旧式から最新型まで凄い沢山の種類があるみたいです
真ん中にある特に大きなのは、ここからアール村の更に先の
公国まで届く程強力な奴です!
あのクラスの通信魔具はとても個人で管理できる代物では無いので
恐らく中央の大きめの施設は国が管理しているのだと思います」
「なるほどね、
魔具と言っても通信に関する機械としての
アンテナの概念は通ずるみたいね、ありがとう」
一瞬そこが街なのかと錯覚しそうになるも
すぐにそうでない事は正面から現れる
巨大な都市によって明かになる
まるでホールケーキの型のような、巨大な金属製の外壁に囲まれ
その高さは100mに届くのではないかと思われ
壁の外観から、この時代の技術によって 築かれた物ではない事は明らかだった
外壁の上部には、巨大な温室の残骸を思わせる、朽ちた金属製の骨格もあった。
セルヴィ以外の者たちには、かつてこの場所に、
巨大なドーム型構造物のあったことは容易に想像出来た。
崩れた外壁の一角、その隙間を僅かに埋める様に据えた 石造りの壁に、
木製と金属を組み合わせた関所らしき施設が見える
その周囲には、入管待ちであろうか、
沢山の人々がひしめき合っていた 都市の内側には、
外壁の技術とは不釣り合いな この時代に作られた市街が広がっている。
中央には円形の土台を何段にも重ねた階層型都市があり、
その頂点には、城がそびえ立っていた。
バセリアは、円周上の遺跡の中に築かれた都市だったのだ。
「あれは...」
ゼロスが声を漏らす
「ええ、外壁に使われている工法、組み方
明らかに私達の時代の技術ね
しかしあの様な施設の情報はデータベースには無いわ
それにこんな地表に野ざらしになった状態で
数百万年耐えきれるとも思えない
まだ今の...っ!」
プロメがゼロスの意図を察し、状況を述べていた時
ジ...!! ジジジッ!!
突然プロメの姿が歪み、ノイズが走る
「これはっ、電磁障害...ジャミングかっ!」
ゼロスが声を上げた
「亜人さん達から頂いたお肉料理、おいしかったですねー
どうやったらお肉をあんなに柔らかく調理できるのでしょう?」
亜人特区、ゼロ村を出立して4日
既に亜人達から貰った料理の殆んどは、2日目に平らげてしまっていた
それでもまだ保存の利く料理や、当初から積んでいた食料もあり
通常の移動であれば決して悪い食料事情ではないのだが
人間一度甘い汁を吸ってしまうと中々に依存してしまうものであった
「しかしあんた、良くあんな話納得出来るわね」
「何がだ?」
ヴァレラが銃をクルクルと指に絡ませ
遊びながら御者席に座るゼロスに問う
「伝承の話よ、神様がどうとか、魂が憑依だとか
正直オカルト的、理解の向こう側な話よ
あんたらなんか、あたしらより
もっと進んだ文明から来たのに
まさか神様は証明されてる、とかは流石にないわよね?」
「宗教は有るが、科学的に神が確認された例は無い」
「そう、ちょっと安心したわ」
「君らの使う魔法という技術も含め
俺達には理解不能な技術だ
しかし理解は出来ずともそこにある、それは事実だ
従って魔法という物が有るのなら
それが何なのか今の俺達に定義できないだけで
神や魂と呼ばれる物も”ある”のだろう」
「ふぅん...あんたって何処までもリアリストなのね」
「あら、リアリストというのは総じてロマンチストでもある物よ?
理想という妄想は現実無くして、現実は理想無くして足りえないもの
二人の間に掛けていたプロメが話に加わる
「人が機械に哲学を説かれる時代も十分現実離れした世界よね...」
「そういう事、
常識や概念、そして技術なんて時代と共に目まぐるしく変化する物よ
しかもこの時代は最早別世界と呼べるほど時の流れを経た地
私達には解らない事だらけだけど
まずは事実として受け止める他ないわね」
「あんたでも匙を投げる事はあるのね、」
「持てる状況から最大限推測はするけれど
解らないものは解らないわ、それこそ”神様”じゃないもの」
「私達の村では神様になってもらいましたけどね、ふふふ」
横からセルヴィがアール村での出来事を思い出す
「もう、セルヴィちゃんも意外と意地悪なのね、」
プロメが少しだけ頬を膨らませていじけて見せる
「あっ、いやそんなつもりじゃなくてっ!」
「ふふっ、冗談よ」
「むぅ、プロメさんには叶わないのです」
おどけて見せたと思えば
常に何処か、大人の余裕を持つプロメに対し
憧れのレディ像を重ねるセルヴィは
その道のりの果てしなさに落胆する
「ところで村で神様って何の話?」
「えっと、それはですね、まだバルザックの街に行く前に...」
そうして馬車は賑やかなまま、一行は順調に旅路を進む
———— 一方その頃 —————
バセリア王国から北東に約80㎞ 都市国家デルゼン
その周囲を何枚もの鉄製の板を貼り付けた様な外壁で被い
都市内部では無数の巨大な歯車が蠢く 街の至る所から伸びた無数の煙突からは
黒煙が立ち昇っている
排気や油の匂いを含む淀んだ空気が流れる街の一角
人気のない薄暗い路地裏で
一人の、まだ若い青年と見られる男が
地面にうつ伏せで倒れていた
その背の中央、やや左側に
こぶし大の赤黒い穴を空け
その周囲には血溜まりを作る
ピクリとも体は動かない
青年は完全に息絶えている
そのすぐ後ろに、血だまりに両足を浸け
青年の亡骸を見下ろす
ローブに身を包んだ少女が一人
そのフードから覗かせる顔は
あの皇都ノヴァスの大聖堂にて
聖少女と呼ばれていた少女だった
ピチャ...ピチャ...
そのローブの裾から僅かに見せる細い手の先は
真っ赤に染まり、そこから雫を血だまりに垂らす
その瞳には何の感情も宿さず、
ただただ、動かなくなった肉の塊を見下ろしている
するとその瞳が一瞬何かに反応し
視線を前に転がるモノから虚空へと移すと
「はい...
はい...
つい先ほど目標の変異種、1体処理完了致しました」
そのまま虚空に向けて一人、何者かに向けて話し始める
「はい、こちらでも先程一瞬だけですが、反応を検知致しました
位置からするに南西の王都バセリアからと思われます
しかし、あの都市の地下...
かの施設と共にまだ装置が稼働しております
私以外の使徒では近づく事は叶わぬでしょう
このまま単独にて先行致します、
はい、お任せください、必ず変異種を探し出し排除致します
...は、」
淡々と話していた少女の表情が僅かに驚きを孕む
「はい、直ちに!...データ受信致しました
これは...神話の時代の...しかしまさかそんな事が...
い、いえ、決してそのような事はっ!
はい、留意致します、ご憂慮の程痛み入ります、
では早速次の任務を開始致します、では」
話し終えた直後、少女が再び
目の前に転がるモノに目を向ける
そして手をかざすと次の瞬間、青色の炎が巻き起こり
10秒とかからずに少女前には黒くすすけた痕が残るのみとなっていた
少女は静かにその場から振り返り
狭い路地裏を大通りに向け歩き始め
今一度そのフードを目深に被りなおす
———————————————————
遠くの街で凄惨な事件が起こった一方で
ゼロス一行の馬車は順調に、歩みを止めることなく
バセリア王都へと近づいていた。
「~と言う事があって、プロメさんのおかげで
村も人達も難民の方々も皆助けて頂いたのですっ!」
「なるほどねぇ、しっかし相変わらずエグイ事するわね...
衛星軌道上からの砲撃で山一つ吹き飛ばすって、
その気になれば世界征服なんてあんた一人簡単じゃないの...」
「おほほ、乙女の嗜みですわ」
「皆、目標まで間もなくの様だ」
丁度アール村での出来事を話し終えた頃
前に座るゼロスが荷台のメンバーにそう告げた
それを受け、ヴァレラとセルヴィが荷台から正面を覗くと
先には分かれ道となっており、そこには
【この先バセリア王都力場圏内】
<↑バセリア王都>
<←王都通信街>
と看板が添えられていた
そのまま馬車は目的地である王都へと直進する
分かれ道の先には、小さな村位の規模の
施設群が遠目に見える
まるで針山のように
数多くの細長い造形物が突き出して居るのが特徴的で
その中央には特に一際大きな鉄塔が立てられている
「セルヴィちゃん、あの沢山突き出してるのって
ここから何かわかる?」
プロメがセルヴィに尋ねる
「はい、あれは通信魔具の送受信の基部ですね、
ここからだと種類までは解りませんが
旧式から最新型まで凄い沢山の種類があるみたいです
真ん中にある特に大きなのは、ここからアール村の更に先の
公国まで届く程強力な奴です!
あのクラスの通信魔具はとても個人で管理できる代物では無いので
恐らく中央の大きめの施設は国が管理しているのだと思います」
「なるほどね、
魔具と言っても通信に関する機械としての
アンテナの概念は通ずるみたいね、ありがとう」
一瞬そこが街なのかと錯覚しそうになるも
すぐにそうでない事は正面から現れる
巨大な都市によって明かになる
まるでホールケーキの型のような、巨大な金属製の外壁に囲まれ
その高さは100mに届くのではないかと思われ
壁の外観から、この時代の技術によって 築かれた物ではない事は明らかだった
外壁の上部には、巨大な温室の残骸を思わせる、朽ちた金属製の骨格もあった。
セルヴィ以外の者たちには、かつてこの場所に、
巨大なドーム型構造物のあったことは容易に想像出来た。
崩れた外壁の一角、その隙間を僅かに埋める様に据えた 石造りの壁に、
木製と金属を組み合わせた関所らしき施設が見える
その周囲には、入管待ちであろうか、
沢山の人々がひしめき合っていた 都市の内側には、
外壁の技術とは不釣り合いな この時代に作られた市街が広がっている。
中央には円形の土台を何段にも重ねた階層型都市があり、
その頂点には、城がそびえ立っていた。
バセリアは、円周上の遺跡の中に築かれた都市だったのだ。
「あれは...」
ゼロスが声を漏らす
「ええ、外壁に使われている工法、組み方
明らかに私達の時代の技術ね
しかしあの様な施設の情報はデータベースには無いわ
それにこんな地表に野ざらしになった状態で
数百万年耐えきれるとも思えない
まだ今の...っ!」
プロメがゼロスの意図を察し、状況を述べていた時
ジ...!! ジジジッ!!
突然プロメの姿が歪み、ノイズが走る
「これはっ、電磁障害...ジャミングかっ!」
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