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52 魔導と科学技術の兵器
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少女が目をゆっくり開くと
僅かな間虚ろに瞳だけを動かし周囲を見やる
直後、ハッっとしたように大きく目を見開いたかと思うと
急ぎその場に飛び起きると一気に飛び退き距離を空け
両拳を正面に構え戦闘の姿勢を取る
直後少女は体の異変に気が付き
自分の腕や足をキョロキョロと見まわし始める
そこには散々痛めつけられた傷痕は全て消え去っており
体銃の薬物によると思われる倦怠感も無くなっていた
「ど、どういうつもりよ!一体何をしたの?!」
混乱気味少女が叫ぶ
「まだ無理しちゃだめよ、傷は治っても
貴女の体は依然、まだかなり衰弱しているのよ」
プロメが諭す様に説明する
「戯言を!敵が純粋な好意から手当等する物ですか!
何が狙いなの!何処の国の勢力だ」
「待て、俺達はただ話し合いたいだけだ」
「まだ言うの?!今度は不意打ちには合わない!
そっちが来ないなら、こっちから行かせて貰うわ!
バイザーオン!」
突如少女の目元に黄色がかったゴーグルらしき物が装着され
その表面には何かが映し出されているのが反射で見て取れる
恐らくゼロスの網膜ビジョンの外部デバイス版という所だろう
「っ!」
ゼロスがスーツの出力を上げ臨戦態勢に移る
同時にプロメがセルヴィの前に彼女を守る様に出る
少女が両腕を左右水平に突き出す
「魔導兵器召喚ッ!ヴァイパーダブル!!」
少女が叫ぶと両手の先に魔術的な文様
空中に平面の魔法陣の様な物が現れ
その陣の中に小手先を突っ込む様に差し込むと
抜き取ったその手には銃らしき兵器が握られていた
スダァン!スダァン!スダァン!
そのまま一気に両腕を正面に突き立てると
横方向に素早く翔けながら、激しい爆裂音と共に
一切の躊躇無くゼロスに向け速射していく
すぐにフィールドを展開し攻撃を防ぐ
フィールドに接触した弾丸らしき物は
自らの運動エネルギーにより潰れその場に落ちて行く
「これは...火薬式の銃、あの遺跡で見た武器と同じ物か!」
「恐らくそうね、私達の知っている
火薬式の銃と特性は全く同じに見えるけれど
火薬等の爆発物の反応は認められない
恐らく魔術的な物を用いて火薬の役割を代用しているのよ」
ガルムのリアクティブアーマーにても
恐らく原理は同じ様な類のモノなのだろと
ゼロスは思考を巡らせる
「なによそれ!防御系の新兵器って事?!
ならばこれはどうかしらっ...デュアルヴィクター!!」
少女が先程まで持って居た武器をその場に投げ捨てると
地面に触れる前に空中で無散する様に消え失せ
新たに現れた両脇の魔法人から次なる兵器を取り出す
そしてまるで体操選手化の如く一気に方向を変え
跳ね、動きを一瞬たりとも止めない
銃撃戦同士の軌道戦闘を前提とした動きを意識している様だ
手に握られた武器は先程の拳銃とは異なり
若干サイズも大きくなっている
あれが拳銃であるならばこれは短機関銃に当たる物だろう
とゼロスは推測し、引き続き防御フィールドを正面に集中展開する
バララララッ!!
予想通り先の武器の連射版のだった様だ
その兵器は凄まじい速さで殻をはじき出しながら
弾丸の雨をゼロスに叩き込むが、結果は先程と同じであった
「硬いわね...それならっ! バルゼラル!」
先程同様、今の武器を手放すと大きく跳躍し
今度は若干大き目のサイズの魔法陣から
まるで大砲かと思える様な太く長い重心を持つ銃兵器を取り出し
着地と同時に両足をしっかり地面に踏ん張り
両手で脇に抱えゼロスに向け構える
「形状から...貫通特化のアンチマテリアルライフル
という所か、まるで旧世紀の兵器博物館だな
だが弾丸の威力はデータ記録よりも強い、か」
ゼロスがフィールドを解除し
背に背負うクサナギに手を掛ける
防護フィールドも無敵の盾では無い
ある一定以上のエネルギーを持つ攻撃は
防ぎ切る事が出来ない為、万一に備え
別の防御手段へ切り替えたのだ
「ふん!前時代的ね、剣なんかで何が出来ると言うのよ
敵を助けた事をあの世で後悔しなさい!」
ドゴォゥ!!
先程とは比べ物に成らぬ低い衝撃音が大気を揺らす
その衝撃に状所が大きく足を踏ん張っていたにも拘わらず
足元の地面が滑り後方に押し出される
そして瞬きする間もなく一瞬にして砲弾の如き弾頭が
目標に直撃しようとしたその時
シャキンッ!!
背の剣の柄に手を掛けていたはずのゼロスが
一瞬にして抜刀し、刀を振りぬいた姿勢に変わっている
直後、ゼロス背後の左右の二本の木がその峰に大穴を空け
自重に耐え切れず倒れて行った...
「そんな馬鹿な!?ありえない...
亜音速の弾丸を剣で切ったと言うの?!」
「君の時代の兵器では、俺は倒せない」
刀を降ろしたままの姿勢でゼロスが静かに告げる
「何を訳の分からない事をっ!
それにさっきからアンタ何も反撃してこないのよ!
馬鹿にしてっ!」
最初は遠距離攻撃を活かせている自分の攻撃に翻弄され
防戦一方に追い込めているかとも思ったが
先程からの動きや態度から、そうでは無い事は少女も悟っていた
「ならその身をもって我らが共和国最強の力を食らうが良いわ!!
魔導強化外骨格!ヴァルキュリアス転送!!」
少女が右手を高々と真上に掲げると
直系4mはあろうかというこれまでで最大級の魔法陣が
少女の頭上に出現する
そして魔法陣の中から巨大なシルエットが徐々に表れ始め
ズゥウウ゛ン
その背後に巨大な人型を模したような機械の塊が姿を現す
少女が素早くその胴体に当たる部分に身を収めると
足、肩、胸がハーネス状の装甲で固定され
巨大な両腕両足を分厚い装甲版に覆われた
大型機械が立ち上がる
「外部装着式のパワードスーツか」
「ふん!殲滅してやるわっ!」
プシュッー!! グォオン
少女が右手を突き出すと、激しい排気の煙と共に
パワードスーツの巨大な鋼鉄の右腕が全く同じように動き
その手の甲に備えつけられた大口径ダブルガトリングが
唸りを上げて回転し、火を噴く
キュィイイ!!ドルルルルゥ!!
ゼロスはそれを凄まじい機動で回避しつつ
徐々に距離を詰める
「ちょこまかと!」
右腕部で弾幕を張り、けん制しつつ
続いて開いていた左腕も向けると
左腕部には1門の砲が備えられており
攻撃にガトリングの連射に砲撃が加えられる
砲弾が着弾した地点は数メートル地殻地面が抉れており
その破壊力のすさまじさを物語る
しかしゼロスの機動は目で追いきれない程人間離れしており
バイザーに表示された照準に捉えたかと思うと
すぐにまたロックから外れてしまう
ギュイィン、ギュイィン、ズシン!
また駆動系、油圧系が激しく駆動するが
中々外骨格の巨大な腕部は追いつかず
激しく腕を振るう中で何度も足回りの
バランスを崩しそうになる
「はぁっ...はぁっ...はぁっ...くそっ、
まだ魔力が回復してないっ」
操縦席で激しく息を切らしながら、足取りが若干不安定になる
「どうした、その装備の扱いには成れていないのではないか?
先程の方が動きは良かったように見えるが」
「うるさいわね!これで一気に決めてやるわ!」
ガシャン!!
そう言うと背部パーツから左右肩上に
長方形上の箱状の兵器が現れ
表面の装甲が開いたかと思うと
中から円柱状の物がびっしり詰まっているのが見える
「ミサイルか、あれは不味いな」
チラリと後方のセルヴィとプロメの方に目を向ける
広範囲の爆発を引き起こすであろう兵器の爆発力が
想定より強かった場合、彼女等に被害を及ぼす危険性がある
「すまないが、少し痛いぞっ」
そう言うとゼロスが少女目掛け一気に加速し
距離を詰めにかかる
「嘘っ、早ッ...!!」
迎撃しようとするも、パワードスーツの腕の稼働速度では
懐に飛び込んできたゼロスに照準が間に合わない
少女が左腕を操縦部分から引き抜き
最初と同じ拳銃を取り出し
ズガァン!ズガァン!
しかしその2発とも意図も簡単に切り弾かれ
速度を落とすことなく一気に目前に迫り
ゼロスが刀を握る腕を大きく後方に反らし
剣先を少女に向け、突きの姿勢を取り突進する
「ひっ!」
思わず両腕でクロスを描くように防御の姿勢を取る
次の瞬間
ガキンッ!!
金属を叩きつける音と共に
クサナギが少女の左わき腹のすぐ横に突き立てられ
背後のパワードスーツの装甲ごと
配線が密集している箇所を切り裂いた
ゼロスがそのままクサナギを引き抜くと
突き立てた箇所からスパークと火花を放つ
ギギギギギィ
するとパワードスーツを金属のきしむ音を立てながら
ゆっくりとそのまま背後に傾いている
「うわっ、、、ととととっ!うぐっ!」
何とか体制を保とうと必死に動かすが
既に駆動伝達系を切断されており、一切反応しない
そのまま轟音と共に機械の巨体は仰向けに地面に倒れた
チャキッ...
倒れた少女の鼻先に黒の刀身が突き付けられる
「くっ!殺せっ!!
おめおめと生き恥を晒す位なら死んだ方がマシよ!」
だがその刃は少女に振るわれる事無く
鼻先を離れゼロスの背へと戻された
「何度も言っているが俺達は敵じゃない
共和国、帝国とは何だ」
「はぁ?!あんた何言ってっ...うっ!」
突如、糸の切れた人形の様に突然少女が気を失う
「大丈夫かっ」
倒れた時に頭部を強打したのかも知れない
ゼロスは急ぎ少女を固定する装甲ハーネスを引きはがし
少女をパワードスーツから抱え上げる
幸いな事に呼吸・心拍共は正常であった
「脳震盪か...?」
「いえ、多分それは魔力切れによる影響だと思います」
決着を見届け駆け寄って来たセルヴィが少女を見て答える
「魔力切れ?」
「はい、急に大量の魔力を消費すると
一時的な昏睡状態に陥る事が有ります
大分呼吸も辛そうでしたし
あれだけ過酷な環境に於かれてたのですから
かなり消耗した状態で無理をしたからだと思います」
「魔力、というのは戻るのか?」
「はい、基本的には体力等と同じで
良く食べてゆっくり休めば元に戻ります!
と言っても私も魔法は使えないので聞きづてなのですが...」
「そうか」
そう言うとゼロスはおもむろに少女を一度草の上に降ろすと
右肩から昨日貰ったマントを外し、少女に被せ
再び抱きかかえる
「宿に連れて行くつもり?」
見守っていたプロメが口を開く
「ああ」
「また暴れたらどうするの?」
「その時はまた止めればいい
彼女の戦力は概ね把握した、問題ない」
「そういう事じゃないんだけど...」
「私もゼロスさんに賛成です
きっと彼女も全く知らない時代で突然目が覚めて
一時的に混乱しているだけなのです!」
「うーん...まぁ良いわ、あなたたちがそう言うなら
休ませるなら確かにこのままって訳にも行かないしね」
ゼロスが少女を抱え、数歩あるいた頃
先程まで横たわっていたパワードスーツが
途中少女が放り投げていた銃と同じ様に
光に包まれたかと思うとゆっくり消えて行った
それに呼応する様に少女の首に巻かれた
機械仕掛けのタリスマンが淡く光る
「どうやらエネルギーの源はその首飾りみたいよ
首に固定されてて、あの奴隷商も取り外せなかったのね」
戦闘中少女が叫んでいた言葉を想い返す
「魔導兵器、か」
少女の首元の装置を見つめながら
ゼロスが一言漏らす
僅かな間虚ろに瞳だけを動かし周囲を見やる
直後、ハッっとしたように大きく目を見開いたかと思うと
急ぎその場に飛び起きると一気に飛び退き距離を空け
両拳を正面に構え戦闘の姿勢を取る
直後少女は体の異変に気が付き
自分の腕や足をキョロキョロと見まわし始める
そこには散々痛めつけられた傷痕は全て消え去っており
体銃の薬物によると思われる倦怠感も無くなっていた
「ど、どういうつもりよ!一体何をしたの?!」
混乱気味少女が叫ぶ
「まだ無理しちゃだめよ、傷は治っても
貴女の体は依然、まだかなり衰弱しているのよ」
プロメが諭す様に説明する
「戯言を!敵が純粋な好意から手当等する物ですか!
何が狙いなの!何処の国の勢力だ」
「待て、俺達はただ話し合いたいだけだ」
「まだ言うの?!今度は不意打ちには合わない!
そっちが来ないなら、こっちから行かせて貰うわ!
バイザーオン!」
突如少女の目元に黄色がかったゴーグルらしき物が装着され
その表面には何かが映し出されているのが反射で見て取れる
恐らくゼロスの網膜ビジョンの外部デバイス版という所だろう
「っ!」
ゼロスがスーツの出力を上げ臨戦態勢に移る
同時にプロメがセルヴィの前に彼女を守る様に出る
少女が両腕を左右水平に突き出す
「魔導兵器召喚ッ!ヴァイパーダブル!!」
少女が叫ぶと両手の先に魔術的な文様
空中に平面の魔法陣の様な物が現れ
その陣の中に小手先を突っ込む様に差し込むと
抜き取ったその手には銃らしき兵器が握られていた
スダァン!スダァン!スダァン!
そのまま一気に両腕を正面に突き立てると
横方向に素早く翔けながら、激しい爆裂音と共に
一切の躊躇無くゼロスに向け速射していく
すぐにフィールドを展開し攻撃を防ぐ
フィールドに接触した弾丸らしき物は
自らの運動エネルギーにより潰れその場に落ちて行く
「これは...火薬式の銃、あの遺跡で見た武器と同じ物か!」
「恐らくそうね、私達の知っている
火薬式の銃と特性は全く同じに見えるけれど
火薬等の爆発物の反応は認められない
恐らく魔術的な物を用いて火薬の役割を代用しているのよ」
ガルムのリアクティブアーマーにても
恐らく原理は同じ様な類のモノなのだろと
ゼロスは思考を巡らせる
「なによそれ!防御系の新兵器って事?!
ならばこれはどうかしらっ...デュアルヴィクター!!」
少女が先程まで持って居た武器をその場に投げ捨てると
地面に触れる前に空中で無散する様に消え失せ
新たに現れた両脇の魔法人から次なる兵器を取り出す
そしてまるで体操選手化の如く一気に方向を変え
跳ね、動きを一瞬たりとも止めない
銃撃戦同士の軌道戦闘を前提とした動きを意識している様だ
手に握られた武器は先程の拳銃とは異なり
若干サイズも大きくなっている
あれが拳銃であるならばこれは短機関銃に当たる物だろう
とゼロスは推測し、引き続き防御フィールドを正面に集中展開する
バララララッ!!
予想通り先の武器の連射版のだった様だ
その兵器は凄まじい速さで殻をはじき出しながら
弾丸の雨をゼロスに叩き込むが、結果は先程と同じであった
「硬いわね...それならっ! バルゼラル!」
先程同様、今の武器を手放すと大きく跳躍し
今度は若干大き目のサイズの魔法陣から
まるで大砲かと思える様な太く長い重心を持つ銃兵器を取り出し
着地と同時に両足をしっかり地面に踏ん張り
両手で脇に抱えゼロスに向け構える
「形状から...貫通特化のアンチマテリアルライフル
という所か、まるで旧世紀の兵器博物館だな
だが弾丸の威力はデータ記録よりも強い、か」
ゼロスがフィールドを解除し
背に背負うクサナギに手を掛ける
防護フィールドも無敵の盾では無い
ある一定以上のエネルギーを持つ攻撃は
防ぎ切る事が出来ない為、万一に備え
別の防御手段へ切り替えたのだ
「ふん!前時代的ね、剣なんかで何が出来ると言うのよ
敵を助けた事をあの世で後悔しなさい!」
ドゴォゥ!!
先程とは比べ物に成らぬ低い衝撃音が大気を揺らす
その衝撃に状所が大きく足を踏ん張っていたにも拘わらず
足元の地面が滑り後方に押し出される
そして瞬きする間もなく一瞬にして砲弾の如き弾頭が
目標に直撃しようとしたその時
シャキンッ!!
背の剣の柄に手を掛けていたはずのゼロスが
一瞬にして抜刀し、刀を振りぬいた姿勢に変わっている
直後、ゼロス背後の左右の二本の木がその峰に大穴を空け
自重に耐え切れず倒れて行った...
「そんな馬鹿な!?ありえない...
亜音速の弾丸を剣で切ったと言うの?!」
「君の時代の兵器では、俺は倒せない」
刀を降ろしたままの姿勢でゼロスが静かに告げる
「何を訳の分からない事をっ!
それにさっきからアンタ何も反撃してこないのよ!
馬鹿にしてっ!」
最初は遠距離攻撃を活かせている自分の攻撃に翻弄され
防戦一方に追い込めているかとも思ったが
先程からの動きや態度から、そうでは無い事は少女も悟っていた
「ならその身をもって我らが共和国最強の力を食らうが良いわ!!
魔導強化外骨格!ヴァルキュリアス転送!!」
少女が右手を高々と真上に掲げると
直系4mはあろうかというこれまでで最大級の魔法陣が
少女の頭上に出現する
そして魔法陣の中から巨大なシルエットが徐々に表れ始め
ズゥウウ゛ン
その背後に巨大な人型を模したような機械の塊が姿を現す
少女が素早くその胴体に当たる部分に身を収めると
足、肩、胸がハーネス状の装甲で固定され
巨大な両腕両足を分厚い装甲版に覆われた
大型機械が立ち上がる
「外部装着式のパワードスーツか」
「ふん!殲滅してやるわっ!」
プシュッー!! グォオン
少女が右手を突き出すと、激しい排気の煙と共に
パワードスーツの巨大な鋼鉄の右腕が全く同じように動き
その手の甲に備えつけられた大口径ダブルガトリングが
唸りを上げて回転し、火を噴く
キュィイイ!!ドルルルルゥ!!
ゼロスはそれを凄まじい機動で回避しつつ
徐々に距離を詰める
「ちょこまかと!」
右腕部で弾幕を張り、けん制しつつ
続いて開いていた左腕も向けると
左腕部には1門の砲が備えられており
攻撃にガトリングの連射に砲撃が加えられる
砲弾が着弾した地点は数メートル地殻地面が抉れており
その破壊力のすさまじさを物語る
しかしゼロスの機動は目で追いきれない程人間離れしており
バイザーに表示された照準に捉えたかと思うと
すぐにまたロックから外れてしまう
ギュイィン、ギュイィン、ズシン!
また駆動系、油圧系が激しく駆動するが
中々外骨格の巨大な腕部は追いつかず
激しく腕を振るう中で何度も足回りの
バランスを崩しそうになる
「はぁっ...はぁっ...はぁっ...くそっ、
まだ魔力が回復してないっ」
操縦席で激しく息を切らしながら、足取りが若干不安定になる
「どうした、その装備の扱いには成れていないのではないか?
先程の方が動きは良かったように見えるが」
「うるさいわね!これで一気に決めてやるわ!」
ガシャン!!
そう言うと背部パーツから左右肩上に
長方形上の箱状の兵器が現れ
表面の装甲が開いたかと思うと
中から円柱状の物がびっしり詰まっているのが見える
「ミサイルか、あれは不味いな」
チラリと後方のセルヴィとプロメの方に目を向ける
広範囲の爆発を引き起こすであろう兵器の爆発力が
想定より強かった場合、彼女等に被害を及ぼす危険性がある
「すまないが、少し痛いぞっ」
そう言うとゼロスが少女目掛け一気に加速し
距離を詰めにかかる
「嘘っ、早ッ...!!」
迎撃しようとするも、パワードスーツの腕の稼働速度では
懐に飛び込んできたゼロスに照準が間に合わない
少女が左腕を操縦部分から引き抜き
最初と同じ拳銃を取り出し
ズガァン!ズガァン!
しかしその2発とも意図も簡単に切り弾かれ
速度を落とすことなく一気に目前に迫り
ゼロスが刀を握る腕を大きく後方に反らし
剣先を少女に向け、突きの姿勢を取り突進する
「ひっ!」
思わず両腕でクロスを描くように防御の姿勢を取る
次の瞬間
ガキンッ!!
金属を叩きつける音と共に
クサナギが少女の左わき腹のすぐ横に突き立てられ
背後のパワードスーツの装甲ごと
配線が密集している箇所を切り裂いた
ゼロスがそのままクサナギを引き抜くと
突き立てた箇所からスパークと火花を放つ
ギギギギギィ
するとパワードスーツを金属のきしむ音を立てながら
ゆっくりとそのまま背後に傾いている
「うわっ、、、ととととっ!うぐっ!」
何とか体制を保とうと必死に動かすが
既に駆動伝達系を切断されており、一切反応しない
そのまま轟音と共に機械の巨体は仰向けに地面に倒れた
チャキッ...
倒れた少女の鼻先に黒の刀身が突き付けられる
「くっ!殺せっ!!
おめおめと生き恥を晒す位なら死んだ方がマシよ!」
だがその刃は少女に振るわれる事無く
鼻先を離れゼロスの背へと戻された
「何度も言っているが俺達は敵じゃない
共和国、帝国とは何だ」
「はぁ?!あんた何言ってっ...うっ!」
突如、糸の切れた人形の様に突然少女が気を失う
「大丈夫かっ」
倒れた時に頭部を強打したのかも知れない
ゼロスは急ぎ少女を固定する装甲ハーネスを引きはがし
少女をパワードスーツから抱え上げる
幸いな事に呼吸・心拍共は正常であった
「脳震盪か...?」
「いえ、多分それは魔力切れによる影響だと思います」
決着を見届け駆け寄って来たセルヴィが少女を見て答える
「魔力切れ?」
「はい、急に大量の魔力を消費すると
一時的な昏睡状態に陥る事が有ります
大分呼吸も辛そうでしたし
あれだけ過酷な環境に於かれてたのですから
かなり消耗した状態で無理をしたからだと思います」
「魔力、というのは戻るのか?」
「はい、基本的には体力等と同じで
良く食べてゆっくり休めば元に戻ります!
と言っても私も魔法は使えないので聞きづてなのですが...」
「そうか」
そう言うとゼロスはおもむろに少女を一度草の上に降ろすと
右肩から昨日貰ったマントを外し、少女に被せ
再び抱きかかえる
「宿に連れて行くつもり?」
見守っていたプロメが口を開く
「ああ」
「また暴れたらどうするの?」
「その時はまた止めればいい
彼女の戦力は概ね把握した、問題ない」
「そういう事じゃないんだけど...」
「私もゼロスさんに賛成です
きっと彼女も全く知らない時代で突然目が覚めて
一時的に混乱しているだけなのです!」
「うーん...まぁ良いわ、あなたたちがそう言うなら
休ませるなら確かにこのままって訳にも行かないしね」
ゼロスが少女を抱え、数歩あるいた頃
先程まで横たわっていたパワードスーツが
途中少女が放り投げていた銃と同じ様に
光に包まれたかと思うとゆっくり消えて行った
それに呼応する様に少女の首に巻かれた
機械仕掛けのタリスマンが淡く光る
「どうやらエネルギーの源はその首飾りみたいよ
首に固定されてて、あの奴隷商も取り外せなかったのね」
戦闘中少女が叫んでいた言葉を想い返す
「魔導兵器、か」
少女の首元の装置を見つめながら
ゼロスが一言漏らす
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機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
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