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「瑛大君、ごめんね」
「わかってもらえて良かった。僕はAIロボットじゃないから、当然感情がある。腹が立つこともあるし、ストレスを発散したい時だってあるんだ。もしかしたら、また誕生日や大事な記念日を忘れちゃうことだってあるかもしれない。でもそれは、萌々香だって同じじゃないかな」
「……」
「だけど、ロボットじゃないから、僕は君のちょっとした感情の変化にだって気付くことが出来る。ほら、そうやって、服の端っこを触る癖。君が動揺している時の仕草だ」
瑛大の視線の先にある萌々香の右手は、ブラウスの裾を握っていた。
「それに、耳を触る癖もある。ロボットだったら気付くかな? せいぜい『耳が痒いの?』って聞くくらいじゃないかな。……本当は照れてる時の仕草なのに」
萌々香は何も言えなくなっていた。
「萌々香もロボットなんかじゃないから、すっごくワガママで意地っぱりだけど、それは仕方がないことなんだ」
「じゃあ……瑛大君は、何で私みたいなのと付き合ってたの? ワガママで、気が強くて、全然可愛げもないのに」
瑛大がゆっくりと近付いて萌々香の頭を撫でた。
「風邪がうつるから駄目だって言ってるのに、君は必ず僕のところに飛んできて、看病してくれる」
「だって、それは……」
萌々香の左手は耳朶を摘まんでいた。
「それから……風邪がうつるって言ってるのに、君は必ず僕にキスしてくる」
自分の左手が耳朶を引っ張っていることに気付いた萌々香は、慌ててその手を離した。
「きっと頭のいいAIロボットは、そんなことしないと思うんだ」
そう言ってから、「あ、まあロボットだったら風邪はうつらないか」と瑛大は笑った。
「あー、もしかして萌々香、僕に看病してもらいたくて、わざと風邪うつろうとしてた?」
「ち、違うよ! そういう瑛大君だってさぁ、そうやって鼻を触る癖……」
瑛大は慌てたように鼻から手を離し、頬を染めて萌々香を見つめる。
「萌々香、大好きだよ」
久しぶりに聞いたその言葉に、萌々香の瞳から涙が溢れた。
これが、恋愛の醍醐味だ。
【完】
「わかってもらえて良かった。僕はAIロボットじゃないから、当然感情がある。腹が立つこともあるし、ストレスを発散したい時だってあるんだ。もしかしたら、また誕生日や大事な記念日を忘れちゃうことだってあるかもしれない。でもそれは、萌々香だって同じじゃないかな」
「……」
「だけど、ロボットじゃないから、僕は君のちょっとした感情の変化にだって気付くことが出来る。ほら、そうやって、服の端っこを触る癖。君が動揺している時の仕草だ」
瑛大の視線の先にある萌々香の右手は、ブラウスの裾を握っていた。
「それに、耳を触る癖もある。ロボットだったら気付くかな? せいぜい『耳が痒いの?』って聞くくらいじゃないかな。……本当は照れてる時の仕草なのに」
萌々香は何も言えなくなっていた。
「萌々香もロボットなんかじゃないから、すっごくワガママで意地っぱりだけど、それは仕方がないことなんだ」
「じゃあ……瑛大君は、何で私みたいなのと付き合ってたの? ワガママで、気が強くて、全然可愛げもないのに」
瑛大がゆっくりと近付いて萌々香の頭を撫でた。
「風邪がうつるから駄目だって言ってるのに、君は必ず僕のところに飛んできて、看病してくれる」
「だって、それは……」
萌々香の左手は耳朶を摘まんでいた。
「それから……風邪がうつるって言ってるのに、君は必ず僕にキスしてくる」
自分の左手が耳朶を引っ張っていることに気付いた萌々香は、慌ててその手を離した。
「きっと頭のいいAIロボットは、そんなことしないと思うんだ」
そう言ってから、「あ、まあロボットだったら風邪はうつらないか」と瑛大は笑った。
「あー、もしかして萌々香、僕に看病してもらいたくて、わざと風邪うつろうとしてた?」
「ち、違うよ! そういう瑛大君だってさぁ、そうやって鼻を触る癖……」
瑛大は慌てたように鼻から手を離し、頬を染めて萌々香を見つめる。
「萌々香、大好きだよ」
久しぶりに聞いたその言葉に、萌々香の瞳から涙が溢れた。
これが、恋愛の醍醐味だ。
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