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最高のヒロイン
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「最近の海山風の作品は、恋愛一辺倒だねえ」
風磨の部屋に戻り、ソファに体を沈めて食い入るようにスマホ画面を見ていた莉央は、隣に腰掛ける風磨に視線を移して言った。
「いいんだよ、趣味なんだから。俺は書きたいものを書きたい時に書くことにしたんだ」
「ふうん」
「てかさぁ、作者の前で読むのやめてくれないかな」
照れを隠すように、風磨は何度も鼻を弄っている。
「え、なんで?」
「いや、なんでって……」
「好きな人の前で、好きな人が書いた小説読むなんて、贅沢過ぎだよねえ」
そう返して、莉央は構わずページを進める。
「だからやめろって! マジで恥ずかしいから……」
「先生、新作はまだですかぁ?」
はにかむ風磨を莉央は更に茶化す。
「そんなこと言ってると、実名で悪役令嬢にしてやるからな! 俺は莉央を最高のヒロインにも極悪人にも仕立て上げることが出来るんだからな」
「えー、風磨君ひどーい」
風磨は悪戯な笑みを浮かべている。
「新作、実はもう出来てるんだ」
「え、読みたーい!」
「まだ駄目。明日の夜に公開予定だから」
莉央は仕返しのようにお預けを食らった。
「そっか。じゃあ楽しみに待ってるね」
翌日に公開された海山風の新作のタイトルは――
『君がヒロイン』
今宵も海山風沼にどっぷりハマりそうだ。
【完】
風磨の部屋に戻り、ソファに体を沈めて食い入るようにスマホ画面を見ていた莉央は、隣に腰掛ける風磨に視線を移して言った。
「いいんだよ、趣味なんだから。俺は書きたいものを書きたい時に書くことにしたんだ」
「ふうん」
「てかさぁ、作者の前で読むのやめてくれないかな」
照れを隠すように、風磨は何度も鼻を弄っている。
「え、なんで?」
「いや、なんでって……」
「好きな人の前で、好きな人が書いた小説読むなんて、贅沢過ぎだよねえ」
そう返して、莉央は構わずページを進める。
「だからやめろって! マジで恥ずかしいから……」
「先生、新作はまだですかぁ?」
はにかむ風磨を莉央は更に茶化す。
「そんなこと言ってると、実名で悪役令嬢にしてやるからな! 俺は莉央を最高のヒロインにも極悪人にも仕立て上げることが出来るんだからな」
「えー、風磨君ひどーい」
風磨は悪戯な笑みを浮かべている。
「新作、実はもう出来てるんだ」
「え、読みたーい!」
「まだ駄目。明日の夜に公開予定だから」
莉央は仕返しのようにお預けを食らった。
「そっか。じゃあ楽しみに待ってるね」
翌日に公開された海山風の新作のタイトルは――
『君がヒロイン』
今宵も海山風沼にどっぷりハマりそうだ。
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