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十一話

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月曜日。
昼休みに食堂に姿を見せた遠藤は、眼鏡を掛けていた。無造作な髪にうっすら髭も生えていた。

「どうしたの? 今朝寝坊した?」

愛美が思わず聞いた。

「違うよ」

「え?」

「愛美ちゃん……妬くから」

「……ふーん」

そっけなく返したが、愛美は内心物凄く嬉しかった。

「あ、愛美ちゃんとまた被った。ハンバーグ!」

遠藤のトレーにもデミグラスソースがたっぷりかかったハンバーグが乗っていた。遠藤は愛美のペースに合わせてゆっくりと口に運ぶ。
少し遅れて博子がやってきた。おそらく、遅らせて来てくれているのだと思う。

「おつかれ~ あれ、遠藤さんどうしたんですか? 今日寝坊しました?」

博子も愛美と同じ事を聞いている。

「ああ……やっぱり俺はこっちの方が落ち着くかなって」

「まー君、ソース付いてるよ、ここ」

愛美が人差し指で口元を指した。

「ま、まま、愛美ちゃん! まー君はマズイよ」

遠藤は顔を真っ赤にして慌てて言った。

──あんなことして、あんなことまでさせたくせに、そんなこと言うんだ。

愛美が遠藤に意味ありげな視線を向ける。

「ああ……そういうこと? 休みの間にね……」

博子は察したようで、ニヤニヤしながら続けた。

「別にいいんじゃないですか? うち、社内恋愛禁止じゃないし」

「でも流石にまー君は……」

遠藤が言うと、愛美は黙って腰を上げトレーを持ち上げた。

「それじゃあ意味ないじゃん……」

そう言って、遠藤と博子を残して返却口に向かう。

「あーあ、愛美ちゃん拗ねちゃった」

博子の声が聞こえていた。



「──愛美!」

突然大きな声で呼ばれて驚いた愛美が振り返ると、食堂にいた社員が一斉にそちらを向いた。椅子から立ち上がった遠藤が言う。

「愛美、仕事終わったら一緒に帰ろう。待ってるから……」

今度は愛美が顔を真っ赤にして、遠慮がちに小さく頷いた。
遠藤も三日月の目をして、頬を染めていた。





【完】
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