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新王2

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「陛下!これは由々しき事態です!」

「エド……」

新政府は殆どが平民出身者だ。
その中で友人のエドは「宰相位」に就任してもらった。
彼は頭も良いし、何よりも世慣れていた。

他の役人達がスタンデール辺境伯爵家をこきおろす中で唯一人意義を唱えていた。

田舎貴族が国を名乗る行為を皆が「直ぐに根を上げる」と嘲笑っていた。「それは違う」と反対の意見を述べ続けた。

私は全く気付かなかった。
スタンデール辺境伯爵領の立地を。
貿易が盛んである地域という事しか知らなかった。

だが、国防という観点から見るとスタンデール辺境伯爵領の重要性が浮き彫りになってきた。
エドから更に詳しく説明されると笑えなかった。


「この独立宣言を撤回させなければなりません」

エドの言葉にコクコクと頷くしかない。
急いでスタンデール辺境伯爵家に使者を送った。

独立など認めない事。
当主を今すぐに登城させる命令書を持たせた。

これは我が国にとって当然の権利だ。
国の一地域が勝手に独立宣言をしたのだ。
対応にあたるのは当然の行為だろう。
スタンデール辺境伯爵が登城したら腹を割って話し合おう。誠意ある対応をすれば相手も理解してくれるだろう。目的は独立宣言の取り消しだが、王国を騒がせた罪には変わりない。本来なら死罪にする。だが今回に限っては不問にしてやってもいい。



僕は楽観視していた。

王がここまで下手にでて従わない臣下などいない。
そう思っていたのだ。
 
その考え自体が違っていた事に気付くのは随分後の事。
 
元々、スタンデール辺境伯爵は、コムーネ王国への帰属心はなかった。王家への忠誠心もとうの昔に枯れ果てていたのだ。かといって他国に帰属した処で王国以下の扱いをされる事は分かり切っていたし、独立するには動機も理由も中途半端だった。メリットとデメリットを考慮した上でコムーネ王国に留まっていただけであった。

しかも、スタンデール辺境伯爵家は「軍閥」と言っても過言では無かった。力も金もあるけれど信頼するには不安が尽きないスタンデール辺境伯爵家を中央に取り込むためにベデヴィア伯爵家との縁組がなされていた。

忠義の一族であるベデヴィア伯爵家。
次代を担うアレックスとの婚姻で王国との結びつきを強めたかったのだ。

全てはスタンデール辺境伯爵家が離反しないためのもの。
その事実を知らなかった。知らないままスタンデール辺境伯爵家の怒りを買った。
最後の一線を越えさせたのは僕自身であった。



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