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宰相の息子1
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心ここにあらずといった感じでトボトボと去っていくエドワード殿下の後ろ姿は、疲れ果てた役人のようだ。
実際、疲れているのだろう。
殿下は茶会の席で完璧に浮いていた。
会話に参加しないのだ。いや、出来ないといった方が正しい。参加者たちは何も殿下をのけ者にしたり無視したりしている訳ではない。殿下に話を振っても曖昧な表情で良いとも悪いとも言わず、かといって何か意見を出す訳でもない。誰の目から見ても話についていけていない事は一目瞭然だった。
会話の中心になっている「東の国」は、我が国の貿易相手国でもある。というよりも、殿下が最初に礼を欠いた人物がその国の出身だ。その事にもきっと気付いていないのだろう。「東の国」が何処にあるのか位は覚えていたようだか、後はさっぱりだった。
あまりの無知ぶりにヴィエンヌ王国の王族でさえ嘲笑う有様だ。
もっとも、王族の方々の仰る通りなので何もいえない。
恥を掻かされたと怒りを露わにした殿下にアレックスと二人で呆れるしかなかった。
その後、アレックスの歯に衣着せぬ説明によって殿下は酷いショックを受けてしまわれた。
ジュリエットとアテナ嬢と合流して殿下たちの行動についての話し合いの最中にその事を伝えると意外な言葉が返ってきた。
「よくぞ仰ってくださいました。これで殿下も御自身を少しは客観的に見る事ができるでしょう」
「流石、私の未来の夫君!天晴!」
女性陣は大絶賛だった。
少しは自重するようにアレックスに言って欲しかった。
とてもではないが王子殿下に言う言葉ではなかった。不敬罪で処罰されても文句は言えないぞ!
「あの程度で文句を言われる事はない」
アレックス?
僕の心を読んだのか!?
「口に出している」
……そうか。
気心の知れた者しかいない場所だ。気が緩んで口に出ていたようだ。気を付けないと……。
「そう心配しなくとも殿下の事で我々が処罰される事は無い。私は殿下に御忠告申し上げただけだ」
「あれ以上の事を言ったら間違いなく謹慎を食らうレベルだ」
「ヴィクター、私が何もしていないとでも思っているのか?」
「ん!?」
「当然、対策は講じ?てきている。両陛下から『殿下に対する苦言はどんなことであろうとも不敬罪にはならない』というお墨付きをいただいてる」
「……なら安心だな」
「ああ。ヴィクターも今のうちに言いたいことを伝えておくといい。殿下は口でハッキリと言わなければご理解してくださらない方だからな。貴族特有のオブラートに包んだ言い回しでは全く通じないぞ?もっとも、あの様子では噛み砕いて伝えた処で一割程度しか理解してくださらないと思っておいた方がいい」
「……そうか」
基本、面倒見のいいアレックスにあそこまで言わせた殿下が凄いのか、それとも両陛下に言質を取った上で言い負かしたアレックスが凄いのか判断が分かれるところだろう。
「そちらは随分愉快な事になっているようだな」
「アレックス様、殿下にいや……こほん。苦言を呈する事は私たちも出来ますの?」
ジュリエット……君、いま嫌味って言いそうになったよね?気の所為じゃないよね?
「勿論だ。我々四人には無礼講が許されている」
「まぁ!素敵ですわ!」
「流石だ!ここにいる間は存分に小言をいってやろう!」
三人とも何をするつもりだい?
そしてアレックス……無礼講の意味が違うぞ。
果たして無事に国に戻れるのだろうか?
楽しく話し合っている三人に僕はついていけない。
ダメだ。
また胃が痛くなってきた。
ガラガラガラ。
胃薬を瓶から取り出して一気に飲み干した。
最近、効きが悪くなってきている気がする。
実際、疲れているのだろう。
殿下は茶会の席で完璧に浮いていた。
会話に参加しないのだ。いや、出来ないといった方が正しい。参加者たちは何も殿下をのけ者にしたり無視したりしている訳ではない。殿下に話を振っても曖昧な表情で良いとも悪いとも言わず、かといって何か意見を出す訳でもない。誰の目から見ても話についていけていない事は一目瞭然だった。
会話の中心になっている「東の国」は、我が国の貿易相手国でもある。というよりも、殿下が最初に礼を欠いた人物がその国の出身だ。その事にもきっと気付いていないのだろう。「東の国」が何処にあるのか位は覚えていたようだか、後はさっぱりだった。
あまりの無知ぶりにヴィエンヌ王国の王族でさえ嘲笑う有様だ。
もっとも、王族の方々の仰る通りなので何もいえない。
恥を掻かされたと怒りを露わにした殿下にアレックスと二人で呆れるしかなかった。
その後、アレックスの歯に衣着せぬ説明によって殿下は酷いショックを受けてしまわれた。
ジュリエットとアテナ嬢と合流して殿下たちの行動についての話し合いの最中にその事を伝えると意外な言葉が返ってきた。
「よくぞ仰ってくださいました。これで殿下も御自身を少しは客観的に見る事ができるでしょう」
「流石、私の未来の夫君!天晴!」
女性陣は大絶賛だった。
少しは自重するようにアレックスに言って欲しかった。
とてもではないが王子殿下に言う言葉ではなかった。不敬罪で処罰されても文句は言えないぞ!
「あの程度で文句を言われる事はない」
アレックス?
僕の心を読んだのか!?
「口に出している」
……そうか。
気心の知れた者しかいない場所だ。気が緩んで口に出ていたようだ。気を付けないと……。
「そう心配しなくとも殿下の事で我々が処罰される事は無い。私は殿下に御忠告申し上げただけだ」
「あれ以上の事を言ったら間違いなく謹慎を食らうレベルだ」
「ヴィクター、私が何もしていないとでも思っているのか?」
「ん!?」
「当然、対策は講じ?てきている。両陛下から『殿下に対する苦言はどんなことであろうとも不敬罪にはならない』というお墨付きをいただいてる」
「……なら安心だな」
「ああ。ヴィクターも今のうちに言いたいことを伝えておくといい。殿下は口でハッキリと言わなければご理解してくださらない方だからな。貴族特有のオブラートに包んだ言い回しでは全く通じないぞ?もっとも、あの様子では噛み砕いて伝えた処で一割程度しか理解してくださらないと思っておいた方がいい」
「……そうか」
基本、面倒見のいいアレックスにあそこまで言わせた殿下が凄いのか、それとも両陛下に言質を取った上で言い負かしたアレックスが凄いのか判断が分かれるところだろう。
「そちらは随分愉快な事になっているようだな」
「アレックス様、殿下にいや……こほん。苦言を呈する事は私たちも出来ますの?」
ジュリエット……君、いま嫌味って言いそうになったよね?気の所為じゃないよね?
「勿論だ。我々四人には無礼講が許されている」
「まぁ!素敵ですわ!」
「流石だ!ここにいる間は存分に小言をいってやろう!」
三人とも何をするつもりだい?
そしてアレックス……無礼講の意味が違うぞ。
果たして無事に国に戻れるのだろうか?
楽しく話し合っている三人に僕はついていけない。
ダメだ。
また胃が痛くなってきた。
ガラガラガラ。
胃薬を瓶から取り出して一気に飲み干した。
最近、効きが悪くなってきている気がする。
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