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国王2
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「こちらの方が余程深刻な問題です」
王妃が目の前に差し出してきたのは『招待状』だった。封が切られているという事は、王妃に送られてきたものだろう。一国の王妃に『招待状』を送れるものは数えるほどしかいない。大体の場合が他国の王家からのものだ。最近はめっきりと減ったが、以前は、煩いほど『招待状』が届いていた。
「どこの国からの招待状だ?」
「……ヴィエンヌ王国からです」
「ヴィエンヌ王国が?珍しいな?音楽の祭典でも行うのか?」
音楽が盛んなヴィエンヌ王国は、何かにつけて祭典やらコンテストなどを行っている。国際的にも「音楽の都」として名高い。我が国とはあまり交流はないが、外交上、最低限の付き合いはしている。
「今回は‟茶会”の招待状です」
「そうか。では夫婦での出席にしなければならんな」
『茶会』という名目の音楽祭だろう。一々付き合うのも面倒だが、ヴィエンヌ王国での茶会は只の茶会ではない。一種の国際的な社交の場だ。他国の国王夫妻も挙って参加している。
「……残念ながら、招待されたのは私たちではありません」
「なに!?では誰が招待されたというんだ?キャサリンは我が国に居ないのだぞ!?」
「……エドワード殿下と新たな婚約者への招待状です」
「な、なに……?」
何故、エドワードとアリス嬢が招待されるんだ?
今までエドワードを直接名指しして招待した事などなかっただろう!招待する相手は決まって「キャサリン」だったはず……。エドワードも何度か参加しているが、それは飽く迄もキャサリンのパートナーとしてだ。エドワード自身が招待された事などない。なのに……。
「皆さま、興味深々何でしょう」
「興味?」
「エドワード殿下がキャサリン・ブロワ公爵令嬢を押しのけてまで選んだ相手にです。しかも、その令嬢が血は繋がらないとは申せ、キャサリン嬢の妹なのですから」
「だが……」
「エドワード殿下が起こした騒動は、我が国だけの問題ではありません。諸外国にとっても十分すぎる位の醜聞なのです」
「だからといって、何もあの二人を行かす事はないだろう。見世物にされるのは目に見えておる。此度は不参加としておいた方がいいだろう」
「それは無理ですね」
「何故だ?参加するしないは招待客の自由だろう。今までも参加出来なかった事はある」
「今回は、そうも言ってられません。国の未来を担う者達との交流の場として参加を求められているんです」
「どういうことだ?」
「王太子や次期大臣クラスの若く優秀な者達が国の境を無くして交流しましょう、と誘いを受けているのです。これに参加しないという事は、将来において国の中枢にいない、とみなされる恐れがあります」
「そんな…バカな……」
「中立国であるヴィエンヌ王国の誘いを断るという事はそう判断されても致し方ありません」
「王妃、それは流石に考え過ぎというものだ。それに、ヴィエンヌ王国は中立と言っても名ばかりのものでは無いか!」
「ヴィエンヌ王国は帝国と同盟を結んでいる友好国ですが、永世中立を国際的に認められている国でもあります。その国が、いずれ国を背負って立つ若者たちとの交流を深めよう、と言いだしてきている以上、無視する事はできません。特に最初というのは肝心です。他の国もよほどの理由がないかぎり欠席はしないでしょう。将来だけでなく、今の外交にも大いに影響が出るものですから」
王妃の見解に頭を抱えたくなった。
ただでさえ、外交官たちからの恨み言が多いのだ。諸外国から我が国が侮られている、と言ってな。エドワードの婚約者が急遽変更したことは諸外国でも把握している。表立って非難はされていないようだが、遠回しな嫌味は言われ続けているのだ。参加するも地獄、不参加するも地獄……という訳か。
王妃が目の前に差し出してきたのは『招待状』だった。封が切られているという事は、王妃に送られてきたものだろう。一国の王妃に『招待状』を送れるものは数えるほどしかいない。大体の場合が他国の王家からのものだ。最近はめっきりと減ったが、以前は、煩いほど『招待状』が届いていた。
「どこの国からの招待状だ?」
「……ヴィエンヌ王国からです」
「ヴィエンヌ王国が?珍しいな?音楽の祭典でも行うのか?」
音楽が盛んなヴィエンヌ王国は、何かにつけて祭典やらコンテストなどを行っている。国際的にも「音楽の都」として名高い。我が国とはあまり交流はないが、外交上、最低限の付き合いはしている。
「今回は‟茶会”の招待状です」
「そうか。では夫婦での出席にしなければならんな」
『茶会』という名目の音楽祭だろう。一々付き合うのも面倒だが、ヴィエンヌ王国での茶会は只の茶会ではない。一種の国際的な社交の場だ。他国の国王夫妻も挙って参加している。
「……残念ながら、招待されたのは私たちではありません」
「なに!?では誰が招待されたというんだ?キャサリンは我が国に居ないのだぞ!?」
「……エドワード殿下と新たな婚約者への招待状です」
「な、なに……?」
何故、エドワードとアリス嬢が招待されるんだ?
今までエドワードを直接名指しして招待した事などなかっただろう!招待する相手は決まって「キャサリン」だったはず……。エドワードも何度か参加しているが、それは飽く迄もキャサリンのパートナーとしてだ。エドワード自身が招待された事などない。なのに……。
「皆さま、興味深々何でしょう」
「興味?」
「エドワード殿下がキャサリン・ブロワ公爵令嬢を押しのけてまで選んだ相手にです。しかも、その令嬢が血は繋がらないとは申せ、キャサリン嬢の妹なのですから」
「だが……」
「エドワード殿下が起こした騒動は、我が国だけの問題ではありません。諸外国にとっても十分すぎる位の醜聞なのです」
「だからといって、何もあの二人を行かす事はないだろう。見世物にされるのは目に見えておる。此度は不参加としておいた方がいいだろう」
「それは無理ですね」
「何故だ?参加するしないは招待客の自由だろう。今までも参加出来なかった事はある」
「今回は、そうも言ってられません。国の未来を担う者達との交流の場として参加を求められているんです」
「どういうことだ?」
「王太子や次期大臣クラスの若く優秀な者達が国の境を無くして交流しましょう、と誘いを受けているのです。これに参加しないという事は、将来において国の中枢にいない、とみなされる恐れがあります」
「そんな…バカな……」
「中立国であるヴィエンヌ王国の誘いを断るという事はそう判断されても致し方ありません」
「王妃、それは流石に考え過ぎというものだ。それに、ヴィエンヌ王国は中立と言っても名ばかりのものでは無いか!」
「ヴィエンヌ王国は帝国と同盟を結んでいる友好国ですが、永世中立を国際的に認められている国でもあります。その国が、いずれ国を背負って立つ若者たちとの交流を深めよう、と言いだしてきている以上、無視する事はできません。特に最初というのは肝心です。他の国もよほどの理由がないかぎり欠席はしないでしょう。将来だけでなく、今の外交にも大いに影響が出るものですから」
王妃の見解に頭を抱えたくなった。
ただでさえ、外交官たちからの恨み言が多いのだ。諸外国から我が国が侮られている、と言ってな。エドワードの婚約者が急遽変更したことは諸外国でも把握している。表立って非難はされていないようだが、遠回しな嫌味は言われ続けているのだ。参加するも地獄、不参加するも地獄……という訳か。
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