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番外編

4.恩恵

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 姉が公式愛妾になったお陰で我が家は多大なる恩恵を受けた。
 はっきり言って、レーゲンブルク公爵夫人の名前なんて必要ない。
 陛下は姉に“ボルドー公爵夫人”の称号と、領地、屋敷。姉との間に生まれた子供達にも“殿下”の敬称を贈った程だ。

 元々、ワイン産業で財を成した家だ。
 シャトール侯爵領はワインの産地として有名で、昔から上質なワインを生産していた。
 ワインのお得意様は、王族や貴族だ。高値で取引されている。
 特に王族への贈り物として喜ばれていた。

 そこに姉が陛下から贈られた領地。
 内陸部だが運河が幾つも流れている。ワインを加工する上でも適した土地だ。港もある。交易港として栄えている街だ。その街の郊外にワインの蒸留所を造れば、一大産業になるだろう。
 更には領地の外れにある森を開拓して牧場にすれば、乳牛も飼育出来る。ワインにあう加工品も作れる。

 私が考えついたのだ。
 当然、姉はとっくに思いついていた。
 更に、シャトール侯爵家との事業提携を陛下に願い出た。
 陛下は二つ返事で了承した。姉が陛下の寵姫だから、ということもあるだろうが。
 事業提携には、当然だが利益も絡んでくる。
 シャトール侯爵領とワイン産業の提携だ。
 この事業により、我が家は莫大な利益を得ることになるだろう。

 そう、レーゲンブルク公爵家との事業提携など比べるまでもない程に。
 姉が陛下の寵姫でなければ、レーゲンブルク公爵家と縁を断ち切ることはできなかっただろう。
 事業で結びついた関係。それは永遠ではない。
 五年、十年と契約更新を繰り返さなければならない。
 利益にならないものは切り捨てる。事業とは、そういうもの、だ。
 つまるところ、我が家はレーゲンブルク公爵家と手を切る良い機会を得られたということだ。


「これでようやく……か」

 父は感慨深げに呟いた。

「はい。ようやく」

 私は父に同意する。
 これでやっと、あの男と縁を切れるのだ。

 甥の廃嫡と、その死によって。



 

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