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五十年前の「とある事件」

78.辺境伯視点2

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「陛下はお前を含めた罪人全員の公開処刑を検討していた」

「……え?」

「安心しろ。カタリナ嬢を虐げていた者が多過ぎて現実的ではないと聖教国から待ったがかかった。そんなことされても迷惑なだけだとな。自分達の罪悪感を誤魔化す為に処刑したいのかとも言われたよ。カタリナ嬢も処罰を望んでいないと聞いて取りやめになった」

「……」

「聖教国はカタリナ嬢を我が国に戻すことはないと言ってきた。聖女を貶めて使い捨ての駒にされてはたまらないとな。分かるか?あの聖教国が宣言したんだ。周辺国だけじゃない。全ての国に我が国が何をしたのかを知らしめたんだ。この国は信用できないと。国際社会から居場所を失った。それがどういう意味を持つか分かるか?外交に支障がきたすだろう。貿易だって足元を見られる。我が国は一気に窮地に陥った。ああ、だが一つだけ良いことがあるぞ。この国を欲しがる輩がいなくなった点だ。戦争して分捕るには価値のない国だ。地政学的にも手に入れた方が良い国だってあるだろうが、その国からさえ『価値がないどころかマイナスにしかならない国』のレッテルを貼られた。身売り同然の属国にすらなれない。友好国からも疎まれ始めている。そんな国に誰が投資する?誰が味方する?」

「あ、ああ……あああ」

「グランテ辺境伯、喜べ。この国は未来永劫、『愚者の国』として各国の嘲笑の的になるだろう。その一端を担った我々を人々は忘れないだろう。だが、それでも私はお前を処刑しない。民を守るのが王族の使命だ。お前もこの国の貴族なら共に手を携えようではないか」

 王太子殿下は私の肩を叩くと去っていった。
 後に残された私は……。

「うわああああああああ!」

 頭を抱えて絶叫したのだった。
 閉ざされた未来の中を彷徨い続ける。
 死ぬことすら許されない。

 生きて償え――と。

 それがどれだけ過酷で辛いことか。
 私は想像し恐怖に怯え、やがて絶望した。

 誰か……私を……私達を助けてくれ…………。

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