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200年後
67.勇者の力
しおりを挟む普通の人間に戻ってきている、という勇樹さん。
「それは魔王を倒したから、ということですか?」
「私はそう考えています。魔法を使うにも威力がないというか……。まあ、私の場合は攻撃魔法なので使用できなくても問題はないでしょうが……」
勇樹さんの話からすると、他の勇者は治癒魔法や補助魔法が得意分野だったらしい。
ただ、体の変化と魔王討伐について関係があるかもしれないと、勇樹さんは考えている。
自分でも「あれ?」と思う程度の違い。それでも違和感は拭えない。
「役目を果たしたから力を失ってきている。そう考えるのが自然です」
勇樹さんの言うことは一理ある。
もちろん、すぐには失うことは無いでしょう。
ですが、徐々に力を失っていくパターンは……ありでしょう。物語的にも。
「今回の勇者も賢い者はいるな」
ボソッと呟いたゴールド枢機卿の一言は、あまりに小さい声で聞き取れませんでした。
「え?何か言いましたか?」
「いや、なんでもな~~い。あ!このケーキ美味しいね」
ゴールド枢機卿はニコニコと用意されたケーキを食べています。
なんだかいつもと様子がおかしいような……気のせいでしょうか?
ゴクリ。
紅茶を飲み干したゴールド枢機卿が語りだします。
「勇樹くんの言うことは粗方正しい」
「ならやはり力を失ってしまうんですか?」
「全員がそうとは言い切れない。勇樹くんは戦闘に特化していたから力を失い始めていると感じたんだろう。まぁ、多少失ってしまうのは仕方ない」
「では、他の勇者は……」
「そっちも多少は能力は落ちるかもね。ただ、それも推測の域を出ない。まあ、魔王もいなくなったことだし、ゆっくりと様子見をするしかないね」
「そうですね。ゴールド枢機卿、ありがとうございました」
「うん」
勇樹さんは理由が分かったのかスッキリとしています。
私はまだ混乱中ですが。
「さて、この話はここまで!僕、お腹が空いたよ。もっとケーキを持ってきて!」
ゴールド枢機卿がいつものように我儘を言いだしました。
彼は自分の欲求を満たすことに関してはとても貪欲な方なのです。
はぁ。仕方ない人。
その後、私達が危惧していた勇者たちの力が失われたという報告はありませんでした。
もっとも各国が秘密にしている場合もありますが、ゴールド枢機卿が「魔王を倒したことで起こる変化」という話を広く公表してくれたので彼らを非難する者はいません。いまのところは。
各国もある程度の理解を示してくれましたし、勇者たちも「それはそれで仕方ない」と受け入れているようです。
まぁ、力がなくなったといっても普通の人間に戻るだけですから。
特に問題はないと思いますけど。
この時はそう考えていました。
しかし、その三年後。
とある勇者の一人が死刑になるという事件が起こったのでした。
公開処刑ではなく、秘密裏での死刑として。
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