悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

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200年後

56.勇者召喚4

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 長い長い祈りの後、召喚の間に魔法陣が浮かび上がる。
 初めてみるけど、これが勇者召喚の魔法陣なのね。
 初めて見たわ。
 当たり前だけど。
 それよりも召喚魔法できる人いたんだ。
 千年前に行ったきりなのに。

 魔法陣は徐々に輝きを増していく。
 その輝きが最高潮に達し、再び収束するとそこには数人の人影があった。

「成功だ!」

「勇者様だ!」

 枢機卿団から歓声が上がる。
 召喚の間にいる人達から割れんばかりの拍手と喝采が湧き起こる。

 勇者って一人じゃないんだ。

「勇者様、どうか我らが世界をお救いください」

「どうか魔王を倒してくださいませ」

 枢機卿団は口々にそう勇者たち?に訴えている。


「は?何言ってんの?」

 勇者の一人が口を開く。

「魔王を倒す?何で?というかここは何処?」

 黒髪黒目の少年が至極まっとうな事を言った。
 そりゃそうよね。
 よく見ればまだ少年少女といった年齢。
 子供だよね?
 どう見たって十代。
 地球でいうならアジア系やヨーロッパ系の顔立ちだった。
 ヨーロッパ系は老けて見えるし、アジア系は若く見えるから実年齢は違うのかもしれない。

 枢機卿団たちが召喚された勇者たちに一生懸命説明をしている。
 さきほど口を開いた少年以外はなんだか乗り気の様子。
 もしかしてゲームか何かと勘違いしてないかな?
 いや。彼らの様子からしてそうとしか思えない。

 なんか思ってたのと違う。

「ねぇ、ゴールド枢機卿」

「なに?」

「彼らって本当に勇者なんですか?」

「勇者だよ。一応ね」

「勇者って何人もいるんですね」

「いるよ。っていうか一人だけの召喚だなんて言ってないよ?」

 確かに。

「彼らは協力するんでしょうか?」

「するしかないよ。まぁ、一人だけまともそうな子がいるから枢機卿団の連中は苦労しそうだよ」

「……え?どういうことですか?」

「さぁ?どういうことなか」

 ゴールド枢機卿は意地悪い笑みを浮かべた。
 あ、これ教えてくれないやつだ。

「大丈夫。すぐにわかるよ」

 私が不満そうな顔をするたびにゴールド枢機卿が宥める。
 その顔がなんだかとても楽しそうだから、私は不満を引っ込めるしかない。




「とにかく!勇者様方には我らの世界の希望となっていただきたい!」

 枢機卿団の一人が力説している。

「それって誘拐じゃん」

 さっきの黒髪の少年が反論する。

「誘拐とは聞き捨てなりませんな」

「いや、どう考えても誘拐でしょ?それにいきなり召喚されて戦えとか言われてもね。どう見ても集団拉致だよ」

 正論だった。正論過ぎた。
 正論過ぎて枢機卿団が押し黙る。

 その後は「勇者様方もお疲れでしょうから」と枢機卿団が勇者たちを半ば強引に退出させた。
 他は兎も角、あの黒髪の少年を説得するのは骨が折れそうだと枢機卿団たちは頭を抱えていたのが印象的だった。
 ちょっと「ざまぁ」と思ったのは内緒だ。


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