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100年後
43.ゴールド枢機卿視点2
しおりを挟む「イリスをこの国から脱出させておいて正解だったな……」
「はい。ロベール王国側に不穏な動きがありました。恐らくイリス様狙いでしょう」
「だろうね」
「しかし、何故あのタイミングだったのでしょうか?」
「さぁ?それは犯人とその関係者に聞かないと分からないよ」
「ではお聞きしますが、どうやってその情報を入手したのです?」
「んー。内緒!」
「……そうですか」
僕の返答に納得はしてないけど深くは聞かないといった態度だった。
ふぅ、よかった。
だって言えないんだよねぇ。
僕が手に入れた情報って、実はフランからだったりする。
フラン経由でイリスを攫おうとしている事を知って先手を打たせてもらった。
本当はもっと早く動くべきだったんだけど、ちょっと予定外の事が続いて後手後手に回ってホントにギリギリ間に合ったって感じだ。聖王国に入られると更に厄介な事態になっていたと思う。
「国王夫妻が指示したとは考えられません」
「……僕もそう思う」
「では、他の者達の仕業でしょうか?」
「国王一家は国民に慕われていたからね。文官や武官の評判も良い。側近の誰かが独断でやったとしても驚かないよ」
「そうですね。私もその可能性が高いと思います。しかし……」
「時期が悪いよね。それとさぁ、幾ら何でも傭兵崩れに依頼するかな?」
「その辺のゴロツキに依頼する訳にはいかないでしょう」
あはっ!
確かに。
ブロンズの言う通りだ。
「でもねぇ。どこで知り合ったのかな?」
「何がですか?」
「傭兵崩れの連中を見つけ出すなんてさぁ。ゴロツキなら下町にいる。殺し屋を雇うなら裏社会を通す必要がある。でも、傭兵は?どっから?」
「……傭兵ギルドではなさそうですね」
「そう!ギルドならヤバイ依頼は断る。戦争の助っ人やら革命の助っ人なら兎も角ね。それだって金次第。給料分の仕事しかないシビアな世界だ。それが戦争になりかねない案件だよ?絶対にギルドは承諾しない筈だ」
「はい。私もそれを考えております。何か事情があるのかもしれません」
「……う~ん。そうだとしたら面倒くさい事になるかもね」
「はい」
そうなのだ。これは単なる誘拐事件ではない可能性があるのだ。
もし、これが他国の陰謀だとしたら?
例えば、聖王国をよく思っていない国とか。
ロベール王国の失態を背景に、あわよくばイリスを手に入れようと画策していたとか。
ロベール王国に罪を着せて開戦の口実を作るつもりだったとか。
十分あり得る。
イリス自身が聖女になれる素質を持っている事を考慮しても第三者が絡んでいてもおかしくない。
まぁ、考え過ぎの気もしないではないけど。
でもねぇ、聖女の身柄を欲しがる連中なんて大勢いる。用心するに越したことはない。
そんな事をつらつらと考えていたら、あっという間に夜になってしまった。
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