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100年後

41.イリス王女視点

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「大変だったね、イリス。まさかここまで話が通じない王子だなんて思わなかったよ」

「常識が備わっていないところは血筋でしょうね。イリス、貴女が気にする必要は全くないわ」

 素晴らしく良い笑顔で話されるお二人はとても怒っています。
 怒りが最高潮に達すると人は笑いながら話すのですね。初めて知りました。

「まあ、結婚する前に本性が解って良かったですわ」

「それもそうだ。結婚後なら目も当てられない状況になっていただろうしね」

「で?枢機卿団は何て言ってるのかしら?」

「怒り狂ってるよ。まだ冷静に話せる状態じゃないのは確か」

「あらあら、それは好都合だわ」

「うん。今のうちに婚約解消をしてしまおうか」

「その方が私達に面倒が無くていいわ」

「火の粉が掛かるのを防ぐためにもそれがいい」

「当事者であるイリスは早急に出国させるべきね」

「うん、さっさとこの国を去るのがお勧めだ」

「なら、荷物をまとめ次第に出国するよりも、イリスだけ先に帰国した方がいいかしら?」

「それが無難だ。身柄を押さえられたら大変だ。この国の首脳部たちが枢機卿団に逆らえる訳ないからね」

「決まりですわね。それでは何時ものように依頼しても宜しいかしら」

「勿論。今回は特別サービスで無料にしてたげるよ」

「ほほほっ。それは結構です。後が怖いですもの」

「別に何もないよ……」

「後からの請求されてはかないませんわ」

「じゃあ、割安で……どう?」

「えぇ、それでお願いするわ」

 
 こうして、本人達の意志を無視して婚約解消に持っていかれそうになってます。
 王太子殿下の短慮な行動のせいでこの国の行く末は暗く閉ざされたものになりそうですわ。

 それに何やら物騒なお話しになっているのですけど……大丈夫でしょうか?

 私の知らない所でどんどん話が進んで行ってるような気がします。

 気になるところですが、聞かなかったことにしておきましょう。
 お二人は私を巻き込みたくはないのでしょう。
 私はただ巻き込まれないように知らないフリをするしかありません。
 この国の方々には申し訳ないのですが。私が巻き込まれたら、きっと二人だけでなく、聖王国も容赦しないでしょう。それだけは絶対に避けたいところです。国同士の全面戦争など両国を不幸にするだけです。これに枢機卿団まで加わればどうなるか想像もつきません。ですから私は知らないフリを致します。

 ごめんなさい。
 心の中で謝りつつ、二人の会話を聞いていました。



 次の日。
 私は叔母様と共にこの国を去りました。


 そして、枢機卿団よりロベール王国へ異例とも言える処置が施されたのです。
 



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