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2.婚約者2

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 ローレンスに、ああ言ったものの、正直、クルトとの婚約解消は難しいと思っている。
 彼の場合、何処かの阿婆擦れ王女と違って、婚約者としての務めと義務をきちんと果たしているのだ。
 婚約者としての義務である贈物は当然のように花束を共に送られてくる。
 パーティーのためのドレス、宝石類を欠かしたことなど一度もない。
 
 ただ、あの子のように自分の色を象徴する贈物は一つもなかった。

 偶然か、それとも……。

 あの子が付けていた耳飾りの宝石。
 クルトと同じ目の色。
 小ぶりながら純度の高い石。
 下位貴族に購入できるとは思えない代物。

 彼は……クルトは気づいているのだろうか?
 
 今日のパーティーで周囲が目ざとく、二人の瞳の色を身につけていないか探し回っていたのを。
 彼の身につけたタイピン。
 あの子と同じ目の色の石が使われていた。

 秘密の恋人を気取っているのかもしれないが、社交界での秘密は『公然の秘密』に早変わりする。

 主催者側が貴族派だということを彼は知らないのだろうか?
 王家の信頼は地に落ちている。
 貴族派に付け入るスキを与えてはいけない。
 彼はどこまでわかっているのだろうか。




 私と彼の婚約が決まったのは十歳の頃。


「はじめまして」

 挨拶を交わした日、彼は緊張のせいか、顔が強張っていた。
 人見知りの質だと後でこっそりと母が教えてくれた。
 一生懸命に話す彼に好感を持った。
 二歳年上だったけれど、私にとって幼い頃の彼は可愛い弟分でしかなかった。
 年の離れた兄が三人いる弊害だろうか?
 それとも小さい頃のクルトは年齢よりも幼く背も低かったせいだろうか?
 とにかく、年上には見えなかった。

 幼少期に婚約を決めるのは高位貴族では当たり前のこと。
 私達は何も不思議に思わなかった。
 激しい恋情は……ない。けれど、家族愛は育っていたと思う。

 お互いの気持に恋愛感情はなかった。
 それでも、「愛しているか?」と問われれば「もちろん」と答えられる。
 当然、クルトも同じだろう。

 結婚してもこの関係は壊れない。

 そう信じていた。
 信じていたものが崩れたのは、いつだろう。
 きっと、あの子をクルトから紹介されてから。


「クルト、そちらの方は?」

 
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