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番外編

30.公妃殿下1

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「初めまして、マリア。私はフリッツだ。君の伯父だよ。
すっかり、大きくなったね。といっても、会うのは初めてだけど、マリアは弟のエルンストに似ているから直ぐに分かったよ。
マリアは弟と同じだからね。君がだと聴いたけど成長過程で色が変化したのかな?褐色と聴いた時はてっきりキャサリン嬢最後の王妃に似るものだとばかり思っていたよ」

一瞬、何を言われたのか理解できなかった。
とある修道会の視察。
その場所に私と因縁のある男がいることは分かっていた。
会いたくない相手だった。
それでも公務と割り切って来たのだ。

「ああ、でも目元はキャサリン嬢に似ている」

母娘ですから、似ていてもおかしくありません。

「懐かしいな……」

私の顔を見ながら、昔を懐かしむかのように呟くと、再び話しかけてくる男。

「私とエルンスト最後の国王は母親違いの上に歳も離れていたから、あまり交流をもっていなかったんだよ。それでも、行事の折々には親しくしていたんだ。エルンストは随分と大人しい性質でね、外遊びよりも中で静かに本を読んでいることが多かったな。マリアもそうなのかい?エルンストはとりわけ歴史書を好んで読んでいた記憶があるよ」

「……父上は、ずっと読書が趣味でした」

「ああ、変わっていなかったんだな。キャサリン嬢もエルンストと同じ位の読書家でね、二人で仲良く図書室で本を読んでいたことがあったよ。幼いながら婚約者を勝手に決められていたけど、エルンストとキャサリン嬢は気が合っていたからね。結婚した後も仲睦まじかったと聴いているよ。ただ、男の子に恵まれなかったのが本当に残念だ。まさか妃になった者達が揃いも揃って、んだから。エルンストも気の毒なことだ。キャサリン嬢も王子さえ生めていれば安泰であったものを。エルンストも「色狂い」などという不名誉なことは言われなかっただろうに、可哀そうなことだ」

この修道院の院長である男の言葉が耳を通り抜ける。

ぐちゃぐちゃな心情である私の気持ちを一切理解することなく、男は色々と話す。

この男は一体何を言っているのだろう……。
昔語りを始めた男を呆然と見つめるしかなかった。

「マリア・、君が新しい公妃で良かった。王国の血は守られる」

決定的な一言だった。
頭が真っ白になるというのはこの事なのかと、我ながら他人事のように感じたものだ。
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