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54.ミレー商会
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フィデの説明はこうだ。
ミレー商会の会長夫妻は元々恋人同士だったらしい。紆余曲折の末に別れ、その後、夫人は男爵の愛人になったとか。
「別れた正確な理由はなにかしら?」
「正確には分かりませんが、夫人が貴族出身であったことが関係しているようです」
「身分違いを憂いて?」
それを考えるとかなり妙だわ。
ソル男爵の妻ではなく愛人に納まった理由が分からない。
しかも――
「夫人の出身はエクス公国……」
「はい。その国の男爵令嬢だったようです」
「そう……」
「ミレー商会はエクス公国にも出店していますので、そこで出会ったとしてもおかしくはありません」
「確かにそうね」
ただ、彼の国は油断ならない国でもある。
小国と侮ってはいけない。
過去に格下の国と見下し痛い目を見た国が幾つもあるのだから。
「商人の国としても名高く、経済に特化している所以でしょうか。エクス公国は、その経済力で国を豊かにし、他国と渡り合っています」
「ええ、その通りね。……でも、ソル男爵がミレー商会と繋がりがあるのは何故かしら?」
「詳しいことは分かりませんんが、ソル男爵は若い頃にエクス公国へ渡ったことがあるようです」
「留学で?」
「いえ、遊学のようです。ソル男爵は、エクス公国で様々なことを学ばれたようで、その伝手を使ってミレー商会と繋がりを持ったとか」
「遊学……」
エクス公国で学ぶ、ね。
物は言いよう。どんな理由での遊学など。
まぁ、貴族の家では様々な問題があるのだし、ソル男爵の噂に悪いものはなかったことを考えると、本当にただの遊学なのかもしれない。
商人の国と名高いエクス公国で領地の再建を学んできた。……そう考えるのが妥当かしら?
「ミレー商会は、エクス公国の商会なのよね?」
「はい。ですが、各国に支店を出店していますので、ミレー会長がエクス公国に常に滞在している訳ではありません」
「そう」
「大きな商会にはよくあることですが、本店よりも支店の方が大きくなるのが常です。エクス公国ではミレー商会の名前はそれなりに知られていますが、他国では更に……。それと、会長の父君は引退なさったとはいえ、相談役として何かとご活躍のようですので」
「エクス公国の支店が大きな商会に育つのは当然ね」
「はい」
引退したの名ばかりで実権を持っているのは父親の方か、もしくは……と、そこまで考えて止めた。なにかしら?話しが逸れた気がする。
ソル男爵のこと。ミレー商会のこと。……そして、夫人について。最初は彼らの子供について聞いていたのに、いつの間にか話を逸らされていることに気が付いた。私がつい聞いたのがいけなかったのかもしれないけれど、そういう場合はフィデが話を元に戻すのが常。……となると、なにかを逸らさなくてはならない事情があるとみるべきか。私がまだ知ることではない。……もしくは、まだ話せない事情があるとみるべきか。
「色々と分かったわ。ありがとう、フィデ」
「いえ、とんでもありません。……では、私はこれで失礼します。また何かあればお呼びください」
そう言ってフィデは退室した。
やはりというべきか。これ以上は話すつもりは最初からないようだった。
蚊帳の外に置かれている気がしないでもないけど……まぁ、仕方がないでしょう。
知ることで不利益を被る。公爵家が判断し、フィデはそれに従っているのだ。ならば、今は無理に聞き出そうとはしない方が良い。
さてと、そうなれば暫く王宮に行くのは止めた方がよさそうだわ。もっとも、フィデの様子からして、何らかの手立てを既に講じているのでしょうけど。
ミレー商会の会長夫妻は元々恋人同士だったらしい。紆余曲折の末に別れ、その後、夫人は男爵の愛人になったとか。
「別れた正確な理由はなにかしら?」
「正確には分かりませんが、夫人が貴族出身であったことが関係しているようです」
「身分違いを憂いて?」
それを考えるとかなり妙だわ。
ソル男爵の妻ではなく愛人に納まった理由が分からない。
しかも――
「夫人の出身はエクス公国……」
「はい。その国の男爵令嬢だったようです」
「そう……」
「ミレー商会はエクス公国にも出店していますので、そこで出会ったとしてもおかしくはありません」
「確かにそうね」
ただ、彼の国は油断ならない国でもある。
小国と侮ってはいけない。
過去に格下の国と見下し痛い目を見た国が幾つもあるのだから。
「商人の国としても名高く、経済に特化している所以でしょうか。エクス公国は、その経済力で国を豊かにし、他国と渡り合っています」
「ええ、その通りね。……でも、ソル男爵がミレー商会と繋がりがあるのは何故かしら?」
「詳しいことは分かりませんんが、ソル男爵は若い頃にエクス公国へ渡ったことがあるようです」
「留学で?」
「いえ、遊学のようです。ソル男爵は、エクス公国で様々なことを学ばれたようで、その伝手を使ってミレー商会と繋がりを持ったとか」
「遊学……」
エクス公国で学ぶ、ね。
物は言いよう。どんな理由での遊学など。
まぁ、貴族の家では様々な問題があるのだし、ソル男爵の噂に悪いものはなかったことを考えると、本当にただの遊学なのかもしれない。
商人の国と名高いエクス公国で領地の再建を学んできた。……そう考えるのが妥当かしら?
「ミレー商会は、エクス公国の商会なのよね?」
「はい。ですが、各国に支店を出店していますので、ミレー会長がエクス公国に常に滞在している訳ではありません」
「そう」
「大きな商会にはよくあることですが、本店よりも支店の方が大きくなるのが常です。エクス公国ではミレー商会の名前はそれなりに知られていますが、他国では更に……。それと、会長の父君は引退なさったとはいえ、相談役として何かとご活躍のようですので」
「エクス公国の支店が大きな商会に育つのは当然ね」
「はい」
引退したの名ばかりで実権を持っているのは父親の方か、もしくは……と、そこまで考えて止めた。なにかしら?話しが逸れた気がする。
ソル男爵のこと。ミレー商会のこと。……そして、夫人について。最初は彼らの子供について聞いていたのに、いつの間にか話を逸らされていることに気が付いた。私がつい聞いたのがいけなかったのかもしれないけれど、そういう場合はフィデが話を元に戻すのが常。……となると、なにかを逸らさなくてはならない事情があるとみるべきか。私がまだ知ることではない。……もしくは、まだ話せない事情があるとみるべきか。
「色々と分かったわ。ありがとう、フィデ」
「いえ、とんでもありません。……では、私はこれで失礼します。また何かあればお呼びください」
そう言ってフィデは退室した。
やはりというべきか。これ以上は話すつもりは最初からないようだった。
蚊帳の外に置かれている気がしないでもないけど……まぁ、仕方がないでしょう。
知ることで不利益を被る。公爵家が判断し、フィデはそれに従っているのだ。ならば、今は無理に聞き出そうとはしない方が良い。
さてと、そうなれば暫く王宮に行くのは止めた方がよさそうだわ。もっとも、フィデの様子からして、何らかの手立てを既に講じているのでしょうけど。
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