23 / 24
23.誠意
しおりを挟む
本当は弁護士を通じての話し合いでも良かった。
でもねぇ。話し合いは愚か、冤罪を着せてその上、一方の話だけを鵜呑みにする人達が同じテーブルに着くとは思えない。
そもそも話し合いに応じるかどうかも分からない。話が通じる相手でもなかったし、再び私刑に走らないとも言い切れなかった。
言い訳になるけれど、無理やりにでも同じテーブルに着かせるためには『内容証明』を送り付ける必要があったのだ。
なにしろ、相手は王家も含まれているのだから。
現役の国王を相手に喧嘩を売る。
先に喧嘩を売って来たのは向こう側だとしても、この国のトップとやりあうのだ。どう考えても分が悪い。
我が家の顧問弁護士が如何に優秀でも流石に王宮に殴り込みをするわけにはいかなかった。
更に冤罪の証拠を「なかったこと」にされても困るし。あの連中のことだ。「嘘の証拠だ」「捏造だ」と言いかねない。
非常識な相手に「話をしたい」とこちらから呼び掛けるのは危険過ぎた。
うっかり弁護士が帰り路で不慮の事故に遭わないとも言い切れない。
その点、『内容証明』ならば、「いつ」「誰が」「誰に」「どういう内容を送ったか」をきっちり明記され、郵便局という独自の組織がきちんと証明してくれる。安全面を考慮すればこれに勝る方法はない。
もちろん、受け取り拒否もできる。遭えて無視するのもいい。そこは自由です。尊重しましょう。
ただし、その場合は「法廷で会いましょう」となります。
私としては別にどちらでも良かった。
勝のは私ですから。
向こうと違って証言だけで罪人にするようなお粗末な事はしません。
一人一人にきちんと証拠を提出してあげましょう。裁判になれば『内容証明』は有利に働くでしょうから。
言い逃れは出来ませんし、裁判官に泣き落としは通じません。
だって、「受け取った」「受け取りを拒否した」という事実は明記されますから。
知らなかった、という言い訳は通用しません。
これで「知らない」というのなら、「家族ぐるみで隠蔽しようとしている」と見做されても仕方ないでしょう。
常識のある親なら『内容証明』を受け取った時点で家族会議が始まる筈です。
その後、弁護士と話し合い事実確認をするでしょう。弁護士はその確認をもって漸く「『内容証明』に間違いはない」と判断して対策を立てます。
貴族が裁判で訴えられる事態を如何にして防ぐかについてを――――
裁判は、記録に残ります。
それがどんな意味を持つかは考えるまでもありませんよね。
本人だけの問題ではありません。家そのものの問題に発展します。彼、彼女達の兄弟、親族の将来のことを考えれば決して軽いものではありません。
家にまだ未婚の令嬢がいれば悲惨でしょうね。
『内容証明』を送られて裁判沙汰になった者が家族にいる、もしくは「一族にそういう非常識な者がいるということは彼女もそうなのでは?」と見られます。誰だって問題を起こすかもしれない人間を家族や一族に迎えたくはないもの。リスクを犯すに値するメリットがあれば話しは別でしょうが。
普通に考えて良縁は無理というものです。
婚約している方は解消される恐れすらありえる状況。
結婚している方は離婚でしょうか?
……未婚の令嬢でなくても悲惨かもしれません。
こちらも鬼ではありません。
『誠意』さえ見せてくれたら穏便に済ませて上げても良いと思ってます。
裁判だとアレな部分は追及しないであげたり……考慮してあげる私は随分とお人好しだと我ながら呆れているくらいです。
もっとも『誠意』の見せ方が悪かった場合には覚悟はして貰いましょう。
そこのところをよ~~く考えて行動して欲しいものです。
後日、王家を始め各家から謝罪と莫大な慰謝料が私個人に支払われました。
嫌がらせと言う名の犯罪行為を行った妃たちは後宮を去り、各家で軟禁または修道院入りとなったそうです。詳しいことは知りません。
ただ、全面降伏していたのは間違いないらしく、お父様は「これでやり易くなった」と喜んでいました。少し遠い目をしていのは気のせいでしょう。ええ、若干顔色が悪く震えていたことは気付かないフリをしておきました。
他にも言いたいことはありましたが、まあ、いいでしょう。
なにはともあれ、終わりよければ全てよし、です。
この件があったこともあり、我が家を恐れる貴族が一気に増えてしまったようでした。
「侮られるよりも恐れられた方がまだやりやすい」と兄は嬉しい悲鳴を上げていましたので問題はないのでしょう。
でもねぇ。話し合いは愚か、冤罪を着せてその上、一方の話だけを鵜呑みにする人達が同じテーブルに着くとは思えない。
そもそも話し合いに応じるかどうかも分からない。話が通じる相手でもなかったし、再び私刑に走らないとも言い切れなかった。
言い訳になるけれど、無理やりにでも同じテーブルに着かせるためには『内容証明』を送り付ける必要があったのだ。
なにしろ、相手は王家も含まれているのだから。
現役の国王を相手に喧嘩を売る。
先に喧嘩を売って来たのは向こう側だとしても、この国のトップとやりあうのだ。どう考えても分が悪い。
我が家の顧問弁護士が如何に優秀でも流石に王宮に殴り込みをするわけにはいかなかった。
更に冤罪の証拠を「なかったこと」にされても困るし。あの連中のことだ。「嘘の証拠だ」「捏造だ」と言いかねない。
非常識な相手に「話をしたい」とこちらから呼び掛けるのは危険過ぎた。
うっかり弁護士が帰り路で不慮の事故に遭わないとも言い切れない。
その点、『内容証明』ならば、「いつ」「誰が」「誰に」「どういう内容を送ったか」をきっちり明記され、郵便局という独自の組織がきちんと証明してくれる。安全面を考慮すればこれに勝る方法はない。
もちろん、受け取り拒否もできる。遭えて無視するのもいい。そこは自由です。尊重しましょう。
ただし、その場合は「法廷で会いましょう」となります。
私としては別にどちらでも良かった。
勝のは私ですから。
向こうと違って証言だけで罪人にするようなお粗末な事はしません。
一人一人にきちんと証拠を提出してあげましょう。裁判になれば『内容証明』は有利に働くでしょうから。
言い逃れは出来ませんし、裁判官に泣き落としは通じません。
だって、「受け取った」「受け取りを拒否した」という事実は明記されますから。
知らなかった、という言い訳は通用しません。
これで「知らない」というのなら、「家族ぐるみで隠蔽しようとしている」と見做されても仕方ないでしょう。
常識のある親なら『内容証明』を受け取った時点で家族会議が始まる筈です。
その後、弁護士と話し合い事実確認をするでしょう。弁護士はその確認をもって漸く「『内容証明』に間違いはない」と判断して対策を立てます。
貴族が裁判で訴えられる事態を如何にして防ぐかについてを――――
裁判は、記録に残ります。
それがどんな意味を持つかは考えるまでもありませんよね。
本人だけの問題ではありません。家そのものの問題に発展します。彼、彼女達の兄弟、親族の将来のことを考えれば決して軽いものではありません。
家にまだ未婚の令嬢がいれば悲惨でしょうね。
『内容証明』を送られて裁判沙汰になった者が家族にいる、もしくは「一族にそういう非常識な者がいるということは彼女もそうなのでは?」と見られます。誰だって問題を起こすかもしれない人間を家族や一族に迎えたくはないもの。リスクを犯すに値するメリットがあれば話しは別でしょうが。
普通に考えて良縁は無理というものです。
婚約している方は解消される恐れすらありえる状況。
結婚している方は離婚でしょうか?
……未婚の令嬢でなくても悲惨かもしれません。
こちらも鬼ではありません。
『誠意』さえ見せてくれたら穏便に済ませて上げても良いと思ってます。
裁判だとアレな部分は追及しないであげたり……考慮してあげる私は随分とお人好しだと我ながら呆れているくらいです。
もっとも『誠意』の見せ方が悪かった場合には覚悟はして貰いましょう。
そこのところをよ~~く考えて行動して欲しいものです。
後日、王家を始め各家から謝罪と莫大な慰謝料が私個人に支払われました。
嫌がらせと言う名の犯罪行為を行った妃たちは後宮を去り、各家で軟禁または修道院入りとなったそうです。詳しいことは知りません。
ただ、全面降伏していたのは間違いないらしく、お父様は「これでやり易くなった」と喜んでいました。少し遠い目をしていのは気のせいでしょう。ええ、若干顔色が悪く震えていたことは気付かないフリをしておきました。
他にも言いたいことはありましたが、まあ、いいでしょう。
なにはともあれ、終わりよければ全てよし、です。
この件があったこともあり、我が家を恐れる貴族が一気に増えてしまったようでした。
「侮られるよりも恐れられた方がまだやりやすい」と兄は嬉しい悲鳴を上げていましたので問題はないのでしょう。
1,399
お気に入りに追加
2,161
あなたにおすすめの小説
【完結】この運命を受け入れましょうか
なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」
自らの夫であるルーク陛下の言葉。
それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。
「承知しました。受け入れましょう」
ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。
彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。
みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。
だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。
そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。
あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。
これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。
前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。
ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。
◇◇◇◇◇
設定は甘め。
不安のない、さっくり読める物語を目指してます。
良ければ読んでくだされば、嬉しいです。
婚約破棄されなかった者たち
ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。
令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。
第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。
公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。
一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。
その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。
ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
婚約破棄を、あなたのために
月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。
彼に「真実の愛」を問う
四折 柊
恋愛
ブランカは婚約者であるエーリクから一方的に婚約を解消された。理由は「真実の愛を見つけたから」と。その相手はよりによってブランカの異母妹だった。ショックを受けたブランカはエーリクに「真実の愛とはなに?」と問いかける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる