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22.ケージン先王陛下side

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「父上……あんまりです」

「なにがだ?」

「ローズが罪を犯したのは事実です。ですがっ……!」

「アレに尊厳は必要ない。その理由はもう分かっているな」

「……」

「アレが今までやらかしたことは表沙汰にはせん。そのかわり一生をかけて償ってもらう。それがアレにできる唯一の贖罪だろう。死ぬよりも日々を苦しみ過ごすことが、最も重い罰となる。特にあの元上級妃にはな」

「……そうかもしれませんが……」

 息子が苦しげな表情を浮かべる。

「それに、もうアレは貴族ではない。王家の血を引くものだからこそ生かしておいているのだ。いわば我が王家のモノだ。王家に多大な損害を出したモノ。私はアレを人として扱わん。道具として扱う。お前も割り切れ。アレはお前が思っているような女ではない。もう分かっているだろう」

「……はい」

「後宮もだいぶん寂しくなった。殆どの妃がいなくなってしまったからな」

「そうですね」

「シャーロットの件がある。彼女の名誉は回復したとはいえ、国王が冤罪で妃を部下に下賜したことに違いはない。王家の求心力はかつてないほど低下している」

「申し訳ありません」

「他の貴族たちが娘を後宮に入れることを渋っている。まあ、気持ちは分かるがな。誰だって冤罪で処分を受けたくはない」

「はい……」

「数年はこのままの状態だと覚悟しておけ」

「はい……」

「あと、シリル中級妃の元に行って礼を言うように」

「はっ!?」

 息子の驚いた顔に苦笑する。
 どうやら本人は全く気付いていなかったようだ。

 とことんローズ元上級妃を甘やかしてきたらしい。
 だから自分の娘のことについてなにも知らないのだ。


 とことんローズ元上級妃を甘やかしてきたらしい。
 だから自分の二人の娘についてなにも知らないのだ。
 王女に生まれた。
 ただそれだけで実の母親に疎まれ、蔑まれる。

 体に幾つもの折檻の痕があった。食事も満足に与えられなかったようだ。
 虐待を受けていた。
 実の母親に。

 後宮でも有名なことだったらしい。

 父親の国王ですら王女にあまり関心を持たない。
 そんな環境の中、唯一優しくしてくれた相手、それがシリル中級妃だった。

 息子はそれすら知らない。

 シリル中級妃は元上級妃だ。
 カールストン侯爵令嬢が後宮入りしなければ今でも上級妃のままだったろう。
 同じ侯爵令嬢とはいえ、シリル中級妃の実家はもう政治的な力は無い。
 後宮を牛耳っていたローズ元上級妃と対立することなく秘かに王女たちを助けていた。他の者が保身のために見て見ぬふりをするなかで。

 そのことを息子に告げると、驚きすぎて固まっていた。

「そんな……知りませんでした……」

「だろうな。お前はそういう所は全く興味がないからな」

「……すみません」

「謝る必要はない。お前だけの問題ではないからな」


 孫娘に関心を持たなかったのは私も同じだ。
 むしろ無関心すぎた。

 その反省も含めて王女二人の養母をシリル中級妃に頼んだ。
 彼女は喜んで引き受けてくれた。
 本当に感謝しかない。

 息子にも礼を言っておけ、と言うと、彼は頷いたのだった。
 その後、孫娘たちはシリル中級妃の元で健やかに成長していった。

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