上 下
21 / 24

21.ケージン先王陛下side

しおりを挟む
 息子を叱責したところで、どうにもならない。
 やってしまったことは無しにはならない。悔やんでも悔やみきれない。


「報告を……」

「はっ!白の離宮から魔道具が大量に見つかりました。おそらく、カールストン侯爵令嬢が設置したものと思われます!」

 白の離宮に設置された魔道具は、録画録音機能付きの防犯カメラのような物だった。
 しかも小型。
 従来のものと違い、魔石を使って映像を記録できるという画期的なものだった。

「装飾品かと思いましたが、それにしては数が多いですし、魔力反応がありましたので、念のため調べさせたところ、全て同じ種類の魔道具でした」

「……そうか」

「また、記録されていた映像を確認した結果、悪質な嫌がらせを日常的に受けていたことが判明いたしました」

 侍従の報告を聞き、頭が痛くなった。
 記録されていたのはそれだけではない。
 カールストン侯爵令嬢は身に付けるモノすら魔石で造られたアクセサリーだと言うではないか。
 その報告に部屋にいた皆が息をのんだ。

「言い逃れはできんな」

「はい。カールストン侯爵令嬢はこうなることを予期していたとしか思えません。おそらくは、この魔道具を設置することで、身の潔白を証明しようとなさったのかと」

「そうだろうな。そして、実際に彼女の無実を証明することになった。……我が息子といい他の妃たちといい……なんという愚かなことを……」

 本当に、情けない。
 まさかこんな事態になるとは予想もしていなかった。
 いや、想定しておくべきだった。

「……恐れながら申し上げます」

「なんだ?」

「実は、ローズ上級妃様のことで――――……」

 彼女の仕出かしたことが発覚し、私は更に頭を抱えたのだった。

 後日、王族専用の面会室で行われた会談により、カぺル公爵家は取り潰されることになった。
 カぺル公爵領は王家の直轄地となった。

 そして、罪人のローズ元上級妃は毒杯を賜り処刑した。ただし、それは表向きの理由だ。仮にも王家の血を引く娘。そう簡単に死なすわけにはいかない。
 逃げ出さないように足枷をはめて塔に閉じ込めている。
 王族の数は少ない。
 彼女の存在は貴重だ。
 なにしろ、彼女と息子の間には王女がいる。つまり子供を産めるのだ。

 子供を産み落とすだけの存在。
 ローズ元上級妃が生きていることは一握りの者しかしらない。
 息子にも定期的に彼女を幽閉している塔に様子を見に行くよう命じた。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【完結】この運命を受け入れましょうか

なか
恋愛
「君のようは妃は必要ない。ここで廃妃を宣言する」  自らの夫であるルーク陛下の言葉。  それに対して、ヴィオラ・カトレアは余裕に満ちた微笑みで答える。   「承知しました。受け入れましょう」  ヴィオラにはもう、ルークへの愛など残ってすらいない。  彼女が王妃として支えてきた献身の中で、平民生まれのリアという女性に入れ込んだルーク。  みっともなく、情けない彼に対して恋情など抱く事すら不快だ。  だが聖女の素養を持つリアを、ルークは寵愛する。  そして貴族達も、莫大な益を生み出す聖女を妃に仕立てるため……ヴィオラへと無実の罪を被せた。  あっけなく信じるルークに呆れつつも、ヴィオラに不安はなかった。  これからの顛末も、打開策も全て知っているからだ。  前世の記憶を持ち、ここが物語の世界だと知るヴィオラは……悲運な運命を受け入れて彼らに意趣返す。  ふりかかる不幸を全て覆して、幸せな人生を歩むため。     ◇◇◇◇◇  設定は甘め。  不安のない、さっくり読める物語を目指してます。  良ければ読んでくだされば、嬉しいです。

【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華
恋愛
結婚式で誓われた愛は嘘だった。 初夜を迎える前に夫は別の女性の事が好きだと打ち明けた。

【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり
恋愛
「この子がクラーラの婚約者になるんだよ」 お父様に連れられたお茶会で私は一つ年上のナディオ様に恋をした。 綺麗なお顔のナディオ様。優しく笑うナディオ様。 今はもう、私に微笑みかける事はありません。 貴方の笑顔は別の方のもの。 私には忌々しげな顔で、視線を向けても貰えません。 私は厭われ者の婚約者。社交界では評判ですよね。 ねぇナディオ様、恋は花と同じだと思いませんか? ―――水をやらなければ枯れてしまうのですよ。 ※ゆるゆる設定です。 ※名前変更しました。元「踏みにじられた恋ならば、婚約破棄はお受けいたしましょう」 ※多分誰かの視点から見たらハッピーエンド

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

「股ゆる令嬢」の幸せな白い結婚

ウサギテイマーTK
恋愛
公爵令嬢のフェミニム・インテラは、保持する特異能力のために、第一王子のアージノスと婚約していた。だが王子はフェミニムの行動を誤解し、別の少女と付き合うようになり、最終的にフェミニムとの婚約を破棄する。そしてフェミニムを、子どもを作ることが出来ない男性の元へと嫁がせるのである。それが王子とその周囲の者たちの、破滅への序章となることも知らずに。 ※タイトルは下品ですが、R15範囲だと思います。完結保証。

おさななじみの次期公爵に「あなたを愛するつもりはない」と言われるままにしたら挙動不審です

あなはにす
恋愛
伯爵令嬢セリアは、侯爵に嫁いだ姉にマウントをとられる日々。会えなくなった幼馴染とのあたたかい日々を心に過ごしていた。ある日、婚活のための夜会に参加し、得意のピアノを披露すると、幼馴染と再会し、次の日には公爵の幼馴染に求婚されることに。しかし、幼馴染には「あなたを愛するつもりはない」と言われ、相手の提示するルーティーンをただただこなす日々が始まり……?

私達、政略結婚ですから。

恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。 それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。

処理中です...