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5.後宮3
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白の離宮に入った翌日。
シャーロットは、リコリスが入れてくれた紅茶を飲んでいるところに来客が現れた。
「先触れもなくやってというの?」
「はい」
「誰かしら?」
「赤の離宮の主でございます」
来客の招待は、もう一人の上級妃。ローズ・カペル公爵令嬢。
「お久しぶりね、シャーロット」
「ええ、お久しぶりです。……ローズ様……」
笑顔で挨拶をしてくるローズに対して私もまた笑顔で対応する。内心では早く帰れと思っているけれど、そんなことは口にはできない。なにせここは後宮。まあ、後宮でなくてもいわないけれど。
ローズは先に後宮入りした先輩であり子供を産んだ妃。
同じ上級妃とはいえ、新参者のシャーロットとでは立場が違う。
特に、正妃不在の今はローズが後宮の女主といっても過言ではないだろう。失礼な態度をとってはならない存在だった。
ローズ上級妃。
王家の血を引く名門カペル公爵家の令嬢。
腰まである赤い髪にルビーのような瞳が印象的で、名前のとおり大輪のバラのように華やかな美しさを持つ方。スタイルもよく出るところが出て引っ込むところはしっかり引っ込んでいる見事な体型をしている。
そして華美を好む傾向にあった。彼女はとても派手好きだ。
今も、黄色のドレスに身を包み、胸元や裾にたくさんの宝石を身に着けている。その輝きは派手というよりもギラギラとした下品さがあるのに、彼女の持つ生来の華やかさがそれらを補って余りある魅力になっているのだから不思議だ。
「急にごめんなさいね。どうしても貴女とお話ししたかったのよ」
「……私とですか?」
ニコニコと笑ってはいるものの、どこか胡散臭さを感じる笑顔だ。
そもそも、今までほとんど接点などなかった相手である。それなのにどうして突然会いに来たのか。しかもこんな早朝から……。
なにか裏があるのではないかと勘繰ってしまうのも仕方ないだろう。
そんな心情をおくびにも出さず、表面上はにこやかに対応するしかない。
突然の来客をもてなす用意をしなければ。
もっとも、侍女長に伝えておけばお茶菓子などはすぐに準備されるので手間はあまりかからない。
控えていたリコリスに侍女長に伝えてくるように指示をだす。侍女長のことだからローズの突然の訪問を既に知っているはず。
それにしても、本当に何の用事かしら?
まさか世間話をしにきたわけでもあるまい。
ローズの目的は一体何なのか。
それが分からない限り、警戒を解くわけにはいかない。
シャーロットは、リコリスが入れてくれた紅茶を飲んでいるところに来客が現れた。
「先触れもなくやってというの?」
「はい」
「誰かしら?」
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「お久しぶりね、シャーロット」
「ええ、お久しぶりです。……ローズ様……」
笑顔で挨拶をしてくるローズに対して私もまた笑顔で対応する。内心では早く帰れと思っているけれど、そんなことは口にはできない。なにせここは後宮。まあ、後宮でなくてもいわないけれど。
ローズは先に後宮入りした先輩であり子供を産んだ妃。
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特に、正妃不在の今はローズが後宮の女主といっても過言ではないだろう。失礼な態度をとってはならない存在だった。
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腰まである赤い髪にルビーのような瞳が印象的で、名前のとおり大輪のバラのように華やかな美しさを持つ方。スタイルもよく出るところが出て引っ込むところはしっかり引っ込んでいる見事な体型をしている。
そして華美を好む傾向にあった。彼女はとても派手好きだ。
今も、黄色のドレスに身を包み、胸元や裾にたくさんの宝石を身に着けている。その輝きは派手というよりもギラギラとした下品さがあるのに、彼女の持つ生来の華やかさがそれらを補って余りある魅力になっているのだから不思議だ。
「急にごめんなさいね。どうしても貴女とお話ししたかったのよ」
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それにしても、本当に何の用事かしら?
まさか世間話をしにきたわけでもあるまい。
ローズの目的は一体何なのか。
それが分からない限り、警戒を解くわけにはいかない。
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